更新日: 2019.06.18 その他年金
憧れの海外移住 海外で暮らす場合年金ってどうなるの?
今回は、外国で暮らす場合の、年金の取り扱いについて紹介します。
グローバル化の進んだ最近では、日本でも訪日旅行客や、日本で就労している外国人を多く見かけます。一方、人口減少による将来的な市場の縮小がささやかれる日本を出て、世界を目指し海外ビジネスや留学を目的として海外で生活する人も増えていますね。
では、これまで日本で年金(厚生年金、国民年金など)に加入していた人が外国で暮らす場合、年金の取り扱いはどうなるのでしょうか?
執筆者:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、
社会保険労務士、米国税理士、宅建士
早稲田大学卒業後IT業界に従事していたが、格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。
ライフプラン、年金、高齢者向け施策、海外在住日本人向け支援(国内行政手続、日本の老親のケア、帰国時サポートなど)を中心に代行・相談サービスを提供中。
企業向けコンサルティング(起業、働き方改革、コロナ緊急事態の助成金等支援)の実施。
国内外に多数実績をもつ。
・コロナ対策助成金支援サイト
・海外在住日本人向け支援サイト
・障害年金支援サイト
目次
年金は居住している(住所登録している)国で加入するのが原則
日本の国民年金制度では、日本国内の居住者はすべて国民年金の加入義務があります。
外国籍の人でも、日本に住所があれば毎月の国民年金保険料を支払わなければなりません。サラリーマンや公務員などの厚生年金加入者は、所属先の企業や団体経由で保険料を払います(毎月の給与から控除されます)。
これは、外国で居住する場合も同じです。日本から住所を外国へ移す(つまり日本での住所がなくなる)ので、日本で年金に加入する義務はなくなりますが、移住先の外国の年金に加入することになります。
短期的(数日~3ヶ月)な商用や観光のための海外旅行では住所は変わりませんから、日本の国民年金に加入したままです。
外国に居住して国民年金の加入義務がなくなり、年金保険料を払わなくなった場合でも、既に支払った保険料は記録として残ります。長期間外国に居住していたからといって、それまで支払っていた保険料がなくなる(掛け捨てになる)ようなことはありません。
なお、やや紛らわしいので参考に書き加えておくと、国民健康保険(国民年金ではありません)も同様に、日本の居住者であれば加入者として毎月の保険料を払わなければなりません。
では個別のケースについてみてみましょう。
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海外駐在者は所属企業・団体経由で厚生年金に継続で加入
サラリーマンなどの厚生年金加入者(第2号被保険者といいます)が所属先の企業・団体の業務で海外に駐在する場合、住所は海外に移りますが、赴任中もその従業員として厚生年金に加入し続けることになります。
この際、前述の通り、居住する現地国の年金へも加入する必要がありますが、日本が社会保障協定を締結している一部の国においては、保険料の両国での二重払いを避けるため、現地国での保険料の支払いが免除されます※1。
しかし、それ以外の国に居住する場合は、その国の年金にも加入しなければなりません(つまり両国で加入することになります)。
その辺の情報や手続きについては、所属企業・団体の福利厚生担当者が手続きをサポートしてくれますので確認してみましょう。
現地国の保険料を納付すると、老後、日本の年金とは別に、その国の年金を受給できる場合があります(ただし受給要件を満たす必要あり)。
現地国で保険料を納付した際の領収書や給与明細書などは、将来の年金請求手続きで役立つことがあるので、老後になるまで保管していることをお勧めします。
<社会保障協定国(2019年2月時点)>
ドイツ(’00)、イギリス(’01)、韓国(’05)、アメリカ(’05)、ベルギー(’07)、フランス(’07)、カナダ(’08)、オーストラリア(’09)、オランダ(’09)、チェコ(’09)、スペイン(’10)、アイルランド(’10)、ブラジル(’12)、スイス(’12)、ハンガリー(’14)、インド(’16)、ルクセンブルク(’17)、フィリピン(’18)
※カッコ内数字は社会保障協定締結時期です。この時期より前に駐在していた時期があれば、日本の厚生年金と現地国の年金の両方を支払っていた可能性がありますので、現地国の年金記録を調査してみましょう。受給要件を満たしていれば両国から年金をもらえます。
主婦(夫)も引き続き第3号被保険者として年金に継続加入
第2号被保険者の配偶者である主婦(夫)は、第3号被保険者として外国で暮らす場合も、日本で暮らしていたのと同様に国民年金に加入したままとなります(自身の国民年金保険料の納付は不要)。
第2号被保険者同様、前述の社会保障協定締結国での居住であれば、現地国の年金加入は免除されます。
現地企業就労者、自営業者、学生 ~外国居住期間も日本で年金の納付が行えます
サラリーマンのような海外駐在でなく、現地企業で就労、起業または留学する場合は、居住地が変わりますので、現地国の年金に加入することになります。
その際、日本では国民年金に加入できなくなり、毎月の保険料の支払い義務もなくなります。ただし、国民年金には任意加入制度というものがあり、海外居住中も毎月の年金保険料を支払い、老後に年金として受給することができます。
老後の生活に不安のある人は、両国の年金保険料を支払うことで、将来の年金受給額を増やすことができます。
この制度で注意すべき点は、(1)海外へ居住する際に、最寄りの年金事務所で住所変更と任意加入の申し立て手続きが必要であること、(2)日本国籍であること※2、となります。
なお、現地国の年金については、一定期間年金保険料を支払えば、その後、日本へ帰国(移住)した場合でも老後に年金として受給できます(ただし支給要件あり)※3。
人生100年時代、年金は老後の生活に必要不可欠なものです。海外居住期間も含めてしっかりとライフプランを立てたいものですね。
※1:免除される期間は最大5年までとなります
※2:外国籍を取得すると任意加入はできません(日本国籍が残っていても)
※3:移住先の国の年金については別途ご確認ください(日本の年金制度とは異なります)
執筆者:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表