更新日: 2019.11.13 国民年金

20代における年金基礎知識を分かりやすく解説

執筆者 : 辻章嗣

20代における年金基礎知識を分かりやすく解説
年金と言えば、老後の保障を目的とした老齢年金のみを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、病気やケガで働けなくなった時の障害年金や、一家の働き手が亡くなった時に家族がもらえる遺族年金は、国民年金の被保険者であれば20代の若者でも受給できます。
 
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

20歳以上60歳未満の人は全て国民年金の被保険者になる

わが国の年金制度は、下図のとおり国民年金と厚生年金の2階建て構造になっています。
 
そして、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、全て国民年金の被保険者となり、下表のとおり学生や無職の人などの第1号被保険者、会社員や公務員などの第2号被保険者、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者に区分されています。
 
また、国民年金の保険料は、下表のとおり第1号被保険者は直接、第2号被保険者は被用者年金制度を介して国民年金保険料を納めています。なお、第3号被保険者は個別に納める必要はありません。
 

 
したがって、日本国内に住んでいる限り、20歳になったら学生であろうと無職であろうと、全ての人が国民年金に加入しなければなりません。
 

老齢・障害・遺族の3種類の年金があり、これらの年金を受給するためには保険料を納付することが必要

国民年金制度では、以下の要件を満たす時にそれぞれの年金を受給することができます。
 

1.老齢基礎年金

老後の保障として65歳以降終身にわたり受給できる年金です。下図のとおり、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あることが必要で、20歳から60歳になるまでの40年間保険料を全て納めた場合に満額の年金を受給することができます。
 

 

2.障害基礎年金

病気やケガにより生活や仕事が制限される一定の障害状態になった時に受給できる年金です。下図のとおり、初診日(病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日)がある月の2ヶ月前までに保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が被保険者期間の3分の2以上あること、または直近1年間に保険料の未納期間が無いことが必要です。
 

3.遺族基礎年金

一家の働き手が無くなった時に、一定の条件を満たす家族が受給できる年金です。下図のとおり、死亡日が含まれる月の2ヶ月前までに保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が被保険者期間の3分の2以上あること、または直近1年間に保険料の未納期間が無いことが必要です。
 

 

国民年金保険料の未納と猶予・免除では大きな違いがある

1.国民年金保険料の納付

第1号被保険者は、自分自身で月額1万6340円の国民年金保険料を納付しなければなりません。納付方法は、金融機関の窓口で納める方法のほか、口座振替、クレジット納付、ペイジーなどの電子納付が利用できます。
 

2.保険料の納付免除・猶予

経済的に国民年金保険料の納付が難しい場合は、保険料の納付が免除または猶予される以下の制度を利用することができます。
 
学生納付特例制度:大学や専修学校等の学生であって、第1号被保険者である本人の前年所得が一定以下の人に対し、申請して承認を受ければ、在学期間中、保険料の納付を猶予する制度
 
納付猶予制度:50歳未満で学生以外の第1号被保険者であって、本人及び配偶者の前年所得が一定以下の人に対し、申請して承認を受ければ、保険料の納付を猶予する制度
 
申請免除制度:学生以外の国民年金の第1号被保険者本人、保険料を連帯して納付する義務がある世帯主・配偶者のいずれの前年所得が一定以下等の人に対し、申請して承認を受ければ、保険料の全額または一部の納付を免除する制度
 

3.保険料の未納と猶予・免除の違い

これらの猶予・免除制度を利用している期間は、年金の受給資格期間に算入されますが、保険料の猶予や免除が認められないままに保険料の未納を続けると、障害や死亡といった不慮の事態に際して、障害基礎年金や遺族基礎年金が受けられない場合があります。
 

20歳になったら国民年金の加入手続きを、転職したら種別変更届の提出を

20歳になったら、市町村役場または近くの年金事務所で国民年金の加入手続きをする必要があります。
 
その際に、保険料の納付が経済的に困難な場合は、合わせて学生納付特例制度などの申請をすることができます。ただし、20歳の時点で既に働いていて第2号被保険者となっている人や、その人に扶養されている第3号被保険者は改めて国民年金に加入する必要はありません。
 
また、会社員からフリーターに転職するなど、厚生年金保険等から脱退した場合は、第2号被保険者から第1号被保険者への種別の変更を届け出る必要があります。
 
転職した人に扶養されていた第3号被保険者であった配偶者も、第1号被保険者への種別変更が必要です。これらの変更届を怠ると、本来第1号被保険者として保険料を納める必要があるにもかかわらず、未納の状態が続くことになりますので注意が必要です。
 

まとめ

年金制度は、老後の備えのみならず、障害や死亡といった万が一の事態に備えることができる制度です。20歳になったら加入手続きを、経済的に保険料の支払いが困難になった場合は猶予・免除制度の申請を行うことが重要であると再認識してください。
 
スマートフォンでも利用できる「ねんきんネット」は、自分自身の加入状況や年金に関するさまざまな情報を確認することができますので、この機会に利用することをお勧めします。
 
出典
(※)日本年金機構ホームページ
 
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
 

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