更新日: 2020.02.04 定年・退職

退職金を受け取ったら、知っておきたい! 老後のための有効な使いみちって?

執筆者 : 中村将士

退職金を受け取ったら、知っておきたい! 老後のための有効な使いみちって?
東京商工リサーチによりますと、2019年1~12月に早期・希望退職者を募集した上場企業は延べ36社、対象人数は1万1351人に達しました。社数、人数はともに2014年以降の年間実績を上回り、過去5年間では最多を更新しました。
 
また、過去20年間で社数、人数ともに最少を記録した2018年と比較して、3倍に跳ね上がりました。この背景には、減収減益、最終赤字計上などの企業の業績不振や債務超過といった企業の財務体質の悪化といった問題があります。
 
そこでもし、早期退職をして退職金を受け取った場合、 老後のためにどのような使いみちがあるのかを考えていきたいと思います。
 
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

退職金は受け取り方で所得の種類も税金も違う

退職金を受け取る場合、一括で受け取るイメージが強いかもしれませんが、会社によっては「一括で受け取る」のか「分割で受け取る」のかを選択できる場合があります。
 
「一括で受け取る」場合、所得は「退職所得」となり、課税計算は「分離課税」となります。一方、「分割で受け取る」場合、「雑所得」となり、課税計算は「総合課税」となります。なお、所得計算のときには、公的年金と同じように収入金額から「公的年金など控除額」を差し引いて計算します。
 
どちらの形で受け取るかによって、受け取れる金額が変わってきます。しかし、受け取れる金額の違いのみをもって「損か得か」を判断するのは、あまりオススメできません。損得ではなく、受け取り方が自分の状況に「合っているか合っていないか」を判断した方がよいでしょう。
 
例えば、「あったらあっただけ使ってしまう」という方は、一括で受け取るのは危険です。分割で受け取るようにするか、一括で受け取るにしても、きちんと計画を立てたうえで受け取るのが賢明です。分割で受け取る場合には、定期的にお金を受け取れるため、お金を使いすぎてしまうというリスクは低くできます。
 
では、退職金を一括で受け取った場合、どのように管理していったらよいのかを見ていきましょう。
 

負債があれば返済する

大金を手にしたとき、あなたは「資産運用をしよう」とか「投資を始めよう」と考えますか? それとも「貯金をしておこう」と考えますか?
 
どちらも良い案だと思いますが、まずは借金(住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)がないか確認してください。それらのローンがまだ残っていれば、まずはその返済に充てるのが妥当です。
 
理由を説明していきます。例えば、あなたが老後まであと5年くらいあるとして、資産運用をしようと考えたとします。資産運用は、「リスクを取ってリターンを得る」という考え方が基本です。そして、リスクとリターンの関係は「ロー(低)リスク・ローリターン」「ハイ(高)リスク・ハイリターン」と言われるように、比例の関係が成り立ちます。
 
前者を「安全性重視」、後者を「収益性重視」と言い換えることもできます。資産運用をする場合、その資産がリスクを取っても良いものなのかどうかということが、「安全性重視」の運用にするか「収益性重視」の運用にするかの判断基準になります。
 
退職金の場合、当然「安全性重視」の運用をするべきといえます。ただし、いくら「安全性重視」といっても、「確実に利益が得られる」とか「元本が保証される」というものではない、という点には注意が必要です。
 
では、リスク回避のために銀行などの金融機関に預けておけばよいでしょうか? せっかく資産ができたのに、これではもったいない気もします。やはり安全性重視の資産運用をした方がよいのでしょうか?
 
視点を変えて、「負債(ここでは借金を指します)」について考えてみます。「負債」とは、あなたが金融機関から借りたお金であり、金融機関から見れば「資産運用」の運用先として、あなたがいます。あなたは、毎月一定額を返済していきますが、この返済額の中身は元本(あなたが借りたお金)と所定の利息です。
 
これを仮に「マイナスの資産運用」と考えてみたら、どうでしょう? あなたが(プラスの)資産運用をしようと考えた場合、その利益は確実なものではありません。しかし、「マイナスの資産運用」については、その利益(あなたにとっての損失)は、確実なものです。
 
なぜなら、あなたが金融機関からお金を借りるとき、そういう契約をし、あなたがそれを守っているからです。であれば、そのマイナスの資産運用に資金を充てるということは、あなたにとって確実な利益を得る資産運用をするのと同じことなのです。
 

資産運用をするのもアリ

負債を返済することの効果は、先述のとおりですが、例えば、以下の場合はどうでしょう。
 
ケース1.負債はない
ケース2.負債返済後に、退職金が残る場合
ケース3.負債の金利が低く、資産運用でそれ以上の利益が見込める
 
ケース3はまれかもしれませんが、いずれにしてもこのような場合においては、資産運用を考えるのがよいと思います。
 
しかし、先述したように、リスクを取りすぎるのは禁物です。リスクが低く、換金性の高いもので運用していきましょう。該当するものとして、例えば、「定期預金」「個人向け国債」「高格付け社債」「投資信託(債権型、バランス型)」が挙げられます。
 
全てを運用に回すのではなく、一部を「普通預金」に入れ、残りをこれらの運用に回すのもよいでしょう。また、「NISA(ニーサ)」や「つみたてNISA」など、譲渡益や配当、分配金が非課税になる口座をまだ利用していないのであれば、利用することも検討してみましょう。
 

自分のお金は自分で守る!

退職金は、一度に大きなお金を受け取ります。今まで取り扱ったことのないような大金を渡された側は、その取り扱いには十分に注意しなければなりません。大金が手に入ったと浮かれてしまっては、しっかりと管理することは難しいでしょう。
 
「銀行に相談しに行ったら、リスクの高い投資商品を勧められ、必要なときには元本割れをしてしまった」では、悔やんでも悔やみきれません。自分のお金は自分で守らなければいけません。そのために、今のうちから投資商品についての理解を深め、自分のお金を守れるよう準備をしていく必要があります。
 
出典
東京商工リサーチ「2019年(1-12月) 上場企業『早期・希望退職』実施状況」
国税庁「退職金と税」
国税庁「高齢者と税(年金と税)」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー