老後2000万円必要って言うけれど…将来のためにまずやるべきことって?
配信日: 2019.09.08
バブル崩壊後の1990年代からの失われた20年を経て、どの世代も平均的に収入・支出ともに減少する中、少子高齢化・人口減少が重なり、税・社会保険料の負担が増してきています。
これからは「長寿化」「単身世帯の増加」「認知症の人の増加」という課題も抱えています。
そこで今回は、主にこの報告書を振り返りながら、注意したい点について見ていくことにしましょう。
執筆者:うらのまさこ(うらの まさこ)
不動産業界出身のFP
人生100年時代のライフプランとお金の専門家。家計見直しから資産形成・資産運用まで、お客様のライフプラン実現をサポートいたします。国民年金基金PRで定期的にFM愛知等にも出演中。日本FP協会認定CFP(R)、1級FP技能士、宅地建物取引士。
金融庁の報告書が伝えたかったこと
退職金給付制度がある企業は、2018年約80%と減少傾向で、額は平均1700~2000万円とピーク時の約3~4割減少しました。また、65 歳時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯2252 万円、単身男性1552 万円、単身女性1506 万円となっています。
夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみ(無職)というモデル世帯で見ると、月約5万円赤字となっており、累計すると、20 年間で約 1300 万円、30 年間で約 2000 万円の取り崩しです。
今回の「老後資金2000万円」は、リタイアした夫婦世帯の人生100年資金プランといえそうです。ただ留意したいのは、特別な支出は含まれていないこと。そして、これはあくまでも現在時点での数字を表しており、未来の数字ではないということです。
冒頭に書いたように、税・社会保険料の負担増に加え、社会保障の縮小の可能性を考えると、働き盛り時期の資産形成、リタイア時期にも資産運用するなど資産の延命、さらには就労継続して完全リタイアの後ろ倒し、といったことをイメージしておく必要があります。
また、これからの老後は、健康寿命を延ばすなど健康面での自助努力も重要といえます。
資金面を考える上でやっておきたいこと
8月27日に厚生労働省から発表されたばかりの「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」も見てみましょう。
上記のモデル世帯での現在の年金受給額は、現役世代の男性における平均手取り月収(35.7万円)の6割程度(22万円)となっています。しかし、2029年後以降数十年にわたり日本経済が0ないしマイナス成長であった場合、4割台~4割を切る可能性があるという試算が出ています。月約5万円の赤字では、すまないですね。
しかし、こういった数字はあくまでも参考にとどめ、一人ひとりが老後のライフプラン、ファイナンシャルプランの具体的なシミュレーションを行っていくことが大切です。
そのために、ライフイベント表やキャッシュフロー表の活用をおすすめします。計画(ライフイベント)をいつ実現させたいか、そのためにいくら必要か、それまでにいくらお金が貯まるか、家計全体のお金の流れ(キャッシュフロー)はどうなのか、といったことを「見える化」できます。
作ってみて資金が不足するとわかった場合は、さらに働いて収入を増やすのか、支出を減らすのか、資産運用を始めるのか、ライフプランを見直すのか、検討しましょう。
支出を減らす=生命保険の削減、という発想になりがちですが、保障不足にならないように注意したいものです。
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
厚生労働省「2019年 将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」
執筆者:うらのまさこ
不動産業界出身のFP