更新日: 2019.09.02 その他老後
家族が認知症になる前に。親子で始める終活のススメ
2025年には、さらにこの数は増え、約5人に1人が認知症になるとの推計があります。認知症は、決してひとごとではなく、身近な問題として、捉えなければならない問題です。
ご本人だけでなく、親や配偶者などが、認知症に罹患する前にどのような対策をしておけばいいのでしょうか?
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。
現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。」
遠方の母が、認知症(要介護1)と診断されたケース
「遠方で暮らす一人暮らしの母(80代)が、認知症と診断されました。遠方のため、年に2回ほどしか会うことができません。最近、会った際に、家の散らかり方や会話などから、様子が変だと感じたことが認知症の外来を受診したきっかけです。母は、認知症と診断され、要介護1と診断されました。
今回、特別養護老人ホームの入所は、要介護3以上のため、利用できません。有料老人ホームは、金銭的に余裕がなく、要介護1からでも利用できる定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用することにしました。」
認知症と診断された場合、ご親族の方は、どのような対策が取れるのでしょうか?
認知症と診断された場合、まず最初に成年後見を検討
認知症と診断された場合、成年後見が有効な手段です。成年後見は、認知症などの理由で判断能力が不十分な人に代わって、後見人が不動産や預貯金などの管理、介護サービスの契約、遺産分割の協議などをすることができます。
一方で、成年後見のデメリットもあります。後見人は、現在1年に1回家庭裁判所へ定期報告が義務づけられています。後見人は、親族である子供が候補者として申し立てることはできますが、必ずしも選任されるとは限りません。
また、後見人が親族になった場合、遺産分割協議など利益相反行為は、別途、特別代理人を立てる必要があります。以上のように、成年後見は、制約や負担を強いられる場合があります。
認知症になる前に、民事信託を検討しよう
認知症は、ひとごとではなく、身近に起こるものだと捉えておくことが大切です。認知症の事前対策として、有効なのが民事信託です。民事信託は、不動産や金銭などを信頼できる家族等に託し、管理や処分を任せることができます。
民事信託のメリットは、家族・親族に託すため、高額な報酬が発生しないことです。遺言や後見では、実現できない柔軟な財産管理・処分の実現が挙げられます。民事信託は、「信じて託す」という文字通り、有価証券や不動産の売買など、取り決めの範囲内で自由に取引することができます。
親子で終活を考えてみよう
認知症になる前の段階で、親族間のコミュニケーションを十分とっておくとことは大切です。ただ、高齢者は、積極的に資産や相続のことを話さない傾向にあるようです。このような場合、親族間のコミュニケーションをどうとればいいのでしょうか?
・冒頭の統計データより、認知症は、ひとごとでないこと。
・認知症と診断された後では、負担や制約が多いこと
・民事信託を活用することで、資産の管理や処分に自分の意思を反映できること
終活は、高齢者が行うというイメージがあります。しかし、認知症など罹患したケースは、親族に大きな影響を及ぼします。よって、親子間で終活のスケジュールを立て、万一に備えることが必要だと言えるでしょう。
出典
内閣府「平成29年版高齢社会白書」
※2019/09/02 タイトルを一部修正させていただきました
執筆者:廣重啓二郎
ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー、相続支援士