更新日: 2019.08.08 その他老後
老後生活の平均を知って、資金不足が見込まれる人がするべき2つの対処法
執筆者:柴田千青(しばた ちはる)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
2級DCプランナー/精神保健福祉士/キッズ・マネー・ステーション認定講師/終活アドバイザー
小美玉市教育委員
出産を機にメーカーの技術職から転身。自身の資産管理や相続対策からお金の知識の重要性を知り、保険などの商品を売らないFPとして独立。次世代に伝えるための金銭教育活動とともに、セミナー講師・WEB記事を中心とした執筆・個別相談などを行う。
目次
まずは自分の現状と将来の見通しを確認する
「自助努力を」と言っても、いつまでにどの程度必要になるか分からずに、やみくもに突き進むと、ある程度まとまったお金ができたときに、つい使ってしまったり、努力が継続できなかったりと、思ったペースで資金作りをするのが難しくなります。それを防ぐために、まずは現状と自分自身の将来の見通しについて確認しましょう。
自助努力で2000万円と言われた根拠は総務省の家計調査(※1)によるものですが、現高齢者世帯のあくまでも平均に基づく数値です。
2018年の家計調査報告によると、支出全体から社会保障給付等の収入を引いた不足分は、高齢夫婦無職世帯で4万1872円/月、高齢単身無職世帯で3万8670円/月。
その他の年もおおむね同程度の額のため、例として月に約4万円不足する状態が60~100歳まで続くと 4万円×12ヶ月×41年=1968万円⇒約2000万円が自分で準備していく額となります。
世間で○○万円必要といくら言われようとも、実際の必要額はそれぞれの事情によって当然変わります。住んでいる地域や暮らし方で支出がもっと少ない人もいるでしょうし、反対に、医療や介護サービス等の必要性からもっと多くの支出が見込まれる人もいるでしょう。
収入の面にも目を向けてみると、公的年金の加入状況によっては社会保障給付が平均よりも充実している人もいれば、保険料の納入実績等により思ったほど年金収入が見込めない人もいます。収入が足りなくても換金できるような資産が十分あれば、これから作っていく老後資金は少なくて済むかもしれません。
将来的に家族構成が変わって、支出も変化するところが出てくるとは思いますが、まずは現在の生活水準で考えてどの程度の支出があり、今までの年金の加入状況からどの程度の年金収入が見込まれるのか確かめましょう。
その上で、退職までに現状でいくらぐらい資金を作れそうか、そして老後資金がどの程度不足し、今後どのように対策をとっていかなければならない状態なのかをはっきりさせましょう。
そういったシミュレーションをご自身でしていくのが難しい場合には、ライフプランやキャッシュフロー表などの作成も行っているファイナンシャル・プランナー等に相談してみるとよいでしょう。
資金不足が見込まれる人のするべきこと(1)・・・稼ぐ力を増やす
現状維持では老後資金が足りなくなることが分かった人は対策が必要です。現状の支出を見直し、貯めていく額を増やすことも大切ですが、長い期間をかけて作り出す老後資金については、収入面の改善を図ることを考えたほうが高い効果を出せるかもしれません。
単純な仕事はAI等に代替されていき、今やっている仕事自体がなくなっていく可能性もある現代、新たなスキルや資格を身につけて個々の能力を上げ、収入アップを目指すことも必要になるでしょう。そうすれば働く期間も長くなり、老後の収支も大きく改善が見込まれます。
65歳までの約40年間で残りの35年分で取り崩す資金まで用意するよりも、70歳くらいまで働いて多くの資金を用意し取り崩す期間を短くするほうが、資金作りのペースが緩やかで取り組みやすくなります。ご家族含めて、収入全体のアップや、長く働き続ける体制にすることを心がけてください。
資金不足が見込まれる人のするべきこと(2)・・・増やす方法を考える
「運用を」と言うと、リスクがあって損をしそうだからと、なかなか取り組みたがらない人もいます。
ですが、預貯金として貯めておいてもほんのわずかな利息しかつかない超低金利の現状では、ある程度の余裕資金があるなら、それを効率よく増やしていく運用に目を向けることも大切です。
運用による資産作りを税制面から後押しするために、NISAやつみたてNISA、iDeCo等の制度もあります。運用についても知識をつけ、効率よい資産作りを目指しましょう。
十分な資産があると思う人でも注意しておきたいこと
現金は足りなくても換金できるような資産が十分あるから大丈夫と思っている人でも、その資産の内容についてよく確かめ、いざ使うというときに本当に役立つかどうか考えておきましょう。
持っている資産が、家や土地などの不動産が多くを占めているということは、よくある話です。利便性の良いところで、将来にわたり需要が見込まれるようなものであればよいのですが、そうでない場合、売ったり担保にしたりするのが難しいことも十分考えられます。
利用していない空き家などの場合、かえって管理や固定資産税などの負担の方が大きくなることも考えられます。資産によってはあらかじめ処分や整理をしておいたほうが良い場合もありますので、その内容についてよく考えておくことが大切です。
自助努力をしていくには、自分の場合にはどのような方向でいくのがよいか決めることが必要です。そのためにも、まずは現状をしっかり見つめ、判断するための知識を身につけましょう。
出典
(※1) 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)II 総世帯及び単身世帯の家計収支」
執筆者:柴田千青
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者