更新日: 2019.07.19 その他老後

1000万の人も2000万の人も 老後の為に自分がいくら必要か知る手順

執筆者 : 横山琢哉

1000万の人も2000万の人も 老後の為に自分がいくら必要か知る手順
金融庁の金融審議会が提出した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の受け取りを麻生太郎金融担当相が拒否したことが、世間で大きく話題になりました。
 
この報告書では、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の生活費が年金だけでは足りず、老後に30年生きるなら2000万円ほど不足するという試算がなされています。
 
年金だけで生活することが難しいことは多くの方が承知していたでしょうが、老後のために備えておくべき金額には個人差があり、一概にいくらとは言えないはずです。そこで、今回は老後のために必要な貯蓄額をどうやって把握すればよいか解説します。
 
横山琢哉

執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター

保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。

「2000万円」はどうやって計算された?

金融庁の金融審議会が提出した報告書を見ると、高齢夫婦無職世帯の生活費の不足額(月間)は以下のように計算されています。
 
・収入:20万9198円
・支出:26万3718円(うち消費支出 23万5477円)
・差額:5万4520円(不足額)
 
毎月の不足額が約5万5000円なので、20年なら5万5000円×12ヶ月×20年=1320万円、30年なら1980万円となり、その結果として「2000万円」という表現がなされたようです。ところが、収支の明細は以下のとおりであり、不可解な項目がいくつか並んでいます。
 

(※1のデータを基に筆者作成)
 
これを見て、「食費や光熱費、通信費が高すぎないか」「交際費や仕送り金は毎月こんなにかからない」「教育の15円とは何?」など、さまざまな疑問を感じたのではないでしょうか。
 
この数値の妥当性はともかく、いずれにしても収支は個々の家庭によって違うはずです。住宅ローンが完済しているか、介護が必要になるかどうかなど他の要因によっても大きく変わってくるので、データにとらわれず、自身の場合はどうなのかということを把握することが必要です。
 

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「キャッシュフロー表」を作れば、老後にいくら必要かが分かる

老後にいくら必要なのかを知るために役立つのが、生涯の資金繰り表である「キャッシュフロー表」です。キャッシュフロー表は家計簿に似ていますが、家計簿が「過去」の収支を集計するものであるのに対し、キャッシュフロー表は「将来」の収支を予測するために作成します。
 
キャッシュフロー表というと難しく聞こえるかもしれませんが、小学校レベルの算数の知識があれば誰でも作れます。ただ、手書きで作ると手間がかかるので、できればExcelなどの表計算ソフトを活用してください。
 
一例として10年間のキャッシュフロー表を作成すると、図に示したようになります。
 

 
このキャッシュフロー表は、現在の年齢が30歳で、年間の手取り収入が400万円、支出が300万円という想定です。35歳のときに支出が800万円に増えているのは、500万円を頭金にして住宅を購入したいという希望があると仮定したためです。
 
このキャッシュフロー表を作成することによって、39歳をむかえる年の終わりに1000万円の貯蓄が可能(10年間で500万円の増加)であると分かります。このようにして、生涯のキャッシュフロー表を作って収支を予測すると、老後をむかえるまでにいくらの貯蓄が必要なのかが分かるというわけです。
 
実際のキャッシュフロー表はもっと詳細に項目を設定して作成します。ここで示したものは、あくまでキャッシュフロー表の概念を理解していただくために簡略化したものとお考えください。
 
なお、日本FP協会では公式ウェブサイトにおいてキャッシュフロー表のテンプレートを配布しています。こちらを利用すると、キャッシュフロー表の作成がよりスムーズになるでしょう。
 

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キャッシュフロー表は自身で作って定期的に見直そう

キャッシュフロー表の作成を有料で請け負うファイナンシャルプランナーもいますが、筆者は他人に依頼せず、自身で作成することをおすすめします。
 
キャッシュフロー表の作成を他人に依頼すると、依頼する相手に家計の収支のすべてを話さなくてはならなくなります。この点に抵抗を感じる人は多いのではないでしょうか。
 
また、何よりキャッシュフロー表は定期的に見直すことが必要です。時間が経てば予定が変わるのが普通なので、適宜、見直して精度を高めていくことが大事です。生涯のキャッシュフロー表を作成すれば、老後のためにいくらの貯蓄が必要なのかがおおよそ見えてきます。
 
その結果、もし貯蓄が不足しそうだと分かったのであれば、ムダな支出を減らす、資産運用をする、転職で収入増を目指すなどの対策を検討し、収支がプラスになるように舵取りをしましょう。
 
出典:※1 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
 
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
 

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