更新日: 2019.07.05 その他老後
大切な老後資金となる退職金。いくらもらえるか知っていますか?
国の年金の支給年齢が遅れていき、年金額も減額されていく中、老後資金として企業年金の重要性が高まっています。退職が近づくまで知る機会の少ない企業年金ですが、大切な老後資金として、その内容を確認しておくことが必要です。
執筆者:川上壮太(かわかみ そうた)
CFP認定者、DCプランナー
京都大学工学部修士卒。精密機械メーカー勤務の後、FP事務所サニーサイド・ファイナンシャルプラニングを開設。日本FP協会電話相談員等を経験するとともに、多数のFP相談に対応してきた。生命保険募集人・証券外務員の資格を取得し、金融関係業務の実情にも詳しい。現在は神奈川県を中心に、主に子育て世代のライフプラン作りの相談に応じている。
http://www.sunnysidefp.jp/
老後資金として自社の退職年金をあてにできるか(企業年金制度の種類とその特徴)
現在、法律で定められている企業年金制度は、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金の3制度です(厚生年金基金は平成25年法改正で新設が認められなくなり、将来は廃止の方向)。
確定給付企業年金制度は、企業が規約に基づいて退職年金を支払うことを約束し、従業員は規約の内容に基づいて年金支払いを受ける制度です。平成28年度現在、826万人の加入者がいますが、企業の負担が比較的重いこともあり、加入者数は頭打ちの傾向にあります。
この制度では、企業が社員のために年金の掛け金を拠出し、金融機関等に運用を委託して、年率何パーセントといった目標の利回りで増やし、退職年金の規定で定めた額を退職時に給付します。社員にとっては、ルールに基づいて約束された退職年金を受け取れるため、安心感があります。
しかし、近年は低金利のため、拠出金を目標通り増やすことができず、不足分を補うための追加拠出が必要になるなど、会社にとっては負担が重い制度となっています。
一方で、勤続年数の長い人ほど退職金の増え方が増す規定が多いため、転職を繰り返し、一つの会社で長期間は働かない人には不利な場合もあります。
確定拠出年金制度では、企業は掛け金を拠出するだけで、運用を行い将来のために退職金を増やす努力は、社員に任されています。企業にとっては、運用の責任を負わなくて良い分、負担が軽い制度です。
社員にとっては、自分で年金を増やす努力をしないといけないという負担があります。
その代わり、転職した場合でも、次の会社に確定拠出年金制度があれば、これまでにたまった資金を移すことが可能です。次の会社に確定拠出年金制度がない場合でも、自分で口座を作り、掛け金を拠出したり、運用を続けたりすることができます。
前述の中央労働委員会の調査では、確定給付企業年金を採用している会社は調査対象213社のうち77%、確定拠出年金(企業型)を採用している会社が62%です。かなり数の会社が両方の制度を併用しています。
自分の退職金額がいくらくらいになるか、調べておこう
自社の退職年金が確定拠出年金であれば、現在の口座残高を確認し、毎月の掛け金の額と今後の掛け金の増加見通しを推測することで、大まかな退職年金額を見積もることができます。
自社の退職年金が確定給付企業年金の場合、自社制度のルールを確認し、退職年金額を見積もる必要があります。
例えば、
・ポイント制が採用されている場合は、退職時の累積ポイントを推測し、退職金額に換算する。
=前述の中央労働委員会の調査では、確定給付企業年金を採用している会社の43%がポイント制を導入しています。
・退職金規定に退職金の算定方法が記載されている場合、そのルールに沿って計算する。
=前述の調査対象の34%の会社は、この制度を採用しています。ポイント制に比べ、規定を理解し、自分で退職金額を推定するのはかなりハードルが高いかもしれません。
気軽に話ができる退職が迫った先輩社員などがいれば、雑談の中で退職金の見込み額を聞いてみるのも良いでしょう。公的年金の給付額は年々下がっていくことが決まっています。
寿命が延びる中、自分の退職年金の受給額の見積もりを立て、不足する場合は、早めに対策をたてる必要があります。
まとめ
・日本の会社の多くは確定給付企業年金、確定拠出年金などの退職年金制度を導入している。
・自社の退職年金制度の規約に基づき計算すれば、退職年金額の見通しをたてることができる。
執筆者:川上壮太(かわかみ そうた)
CFP認定者、DCプランナー