更新日: 2019.06.14 その他老後
友人が「老後は生活費が下がるから大丈夫」これって本当?嘘?
しかし、多様化する現代社会で、すべての人が一概に「老後の生活費は下がる」と認識していると、大きな落とし穴があるのではないでしょうか。どんな人が要注意なのかを考えてみましょう。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
たとえ4人家族でも「老後の生活費が下がらない」ケースも
もはや誰もが20代~30代前半で結婚する時代ではありません。晩婚化が進み、40代で初婚あるいは再婚のカップルも増えているでしょう。
晩婚カップルの場合、60歳あるいは65歳で定年を迎えてもなお、子供がこれから大学進学を迎えるケースや住宅ローンの残債がまだ多く残っているケースもあるかと思います。
大学進学に関する費用は、子供に奨学金を利用してもらう方法もありますが、就職して経済的に独立するのと違い、子供の生活費は減りませんし、下宿をする場合はさらなる子供の生活費がかかることもあり得るので、一概に老後の生活費が減るとは言いがたいでしょう。
つまり、一般的と考えられている4人家族であっても、多様化している現代社会では、様々なケースが考えられるために、一概に言えないということです。
それまで利用しなかったサービスを利用するケース
独身や離婚をされてシングルの方は、老後になったからと言って現在の生活が大幅に縮小するかというと、そうでない場合もあるでしょう。
スポーツや旅行など、活動的な趣味をされる方は、年齢とともにこうした趣味に関連する費用は縮小されるものと考えられ、確かに老後の費用は下がることも想定されます。
しかし、すべての人がこうした活動的な趣味を持っているかというとそうではないでしょう。むしろインドアの趣味を持っている方は、年齢が上がるとともに、逆に認知症予防などを兼ねて趣味の時間を増やすこともあり得ます。
また、体の動きが不自由になれば、それまで自炊で利用しなかった出来あいの惣菜を買う、配達を依頼する、日常生活で不自由なことはヘルパーや介護サービスを利用する等、追加で費用がかかるようになることも十分考えられ、逆に支出が増える可能性すらあります。
標準家庭でも「自分の老後」を個別に精査する必要あり
百人百通りの老後があり、現役時代と老年時代の生活ではどんな違いがあり得るのかを、一人一人が自分のケースに置き換えて考えていく必要があります。人はすでに身に着いた習慣を変えることは、意外と難しいことでしょう。
たとえ老後に子供の教育費がかからなくても、住宅ローンの返済がなくても、例えば外食が多い、趣味や旅行などに多額の支出をするなど、現役時代と同様の使い方をしていれば、生活費自体は縮小しません。
年金で不足する部分を貯蓄で十分に賄える人は別として、ギリギリの貯蓄を取り崩しながら老後の生活を送る場合は注意が必要です。
老後何年生きるかは誰にもわかりませんが、人生100年時代とも言われ、平均寿命は今後も伸び続けることを考えると、20年程度は見ておく必要があるかもしれません。
20年を耐えうるだけの貯蓄は目標ですが、それ以上長生きすることもあり得ますので、老後の生活費は減って当然という考えを捨てて、いかにうまく意図的にスケールダウンした生活に移行できるかがカギになります。
そのためには、あまり欲張らずに、自分の主義趣向を貫きながら費用をかけずに楽しむ工夫も必要かもしれません。
老後の生活、実験のススメ
老後の生活はどうなるのか、もし余裕があれば、老後生活に移行する前にひと月でも実際にやってみるとよいかもしれません。
自分が本当にやりたいこと、したいことだけを残して生活していく場合に、経済的にはどう変化があるのか、支出は実際にどれだけ減る、あるいは増える可能性があるのか、を試行してみることで、将来の見通しを立てるヒントになるでしょう。
住宅ローンがある方は、繰上げ返済や借り換え、ひょっとしたら住み替えなども必要になるかもしれません。教育費が想定以上にかかると見込まれる方は、親からの援助や相続の可能性も探ってもよいかもしれません。
実際にその時(老後)が来るまで何もしないでいると、予想外の事態に出くわして慌ててしまうことや、解決策の選択肢が少なくなる可能性があるため、早めに準備をしていくことが重要です。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士