50代独身です。「2000万円問題」を心配していたら独身仲間の同僚から「独身なら2000万円もいらないよ」と言われました。本当でしょうか?

配信日: 2025.06.17

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50代独身です。「2000万円問題」を心配していたら独身仲間の同僚から「独身なら2000万円もいらないよ」と言われました。本当でしょうか?
「老後資金に2000万円必要」と耳にしたことはありませんか? 2019年に話題となった「老後2000万円問題」は、老後の生活における資金不足を示した試算でした。しかし、これは夫婦世帯を前提にした数字であり、独身者には必ずしも当てはまりません。50代で独身という立場から見たとき、本当に2000万円も必要なのでしょうか。
 
この記事では、生活費や年金、医療費など現実的な支出に基づいて、独身者の老後資金について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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「2000万円」が老後資金の基準になった背景

「老後2000万円問題」は、2019年に金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループが公表した報告書によって広く知られるようになりました。
 
この報告書では、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯をモデルに、年金などの収入と支出の差額を算出したところ、毎月約5万円の赤字が生じるという結果が示されています。この赤字が30年間続くと、約2000万円の不足になるという計算です。
 
ここで注意したいのが、この試算が夫婦世帯を対象としている点です。単身世帯にそのまま当てはまるものではなく、実際に必要な老後資金は大きく変わってきます。2000万円という金額はあくまで一例であることを理解することが大切です。
 

独身者の老後の必要額はどのくらい?

では、独身者が必要となる老後資金はいくらくらいになるのでしょうか。
 
総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出は月額14万9286円でした。一方、同世帯の平均実収入は13万4116円で、税金や社会保険料などの非消費支出を差し引いた可処分所得は12万1469円です。つまり、毎月の赤字は2万7817円ということになります。
 
この月々の赤字が仮に30年(65~95歳)まで続くと、以下の金額が不足します。
 
・2万7817円×12ヶ月×30年=1001万4120円
 
この試算から、独身者の老後資金として必ずしも2000万円が必要というわけではなく、1000万円程度の準備でも間に合う可能性があります。ただし、この試算は平均的な生活費にのみ基づいているため、突発的な支出や医療・介護などのリスクは含まれていません。
 

意外な老後リスクと備えたい支出

老後の生活では、日々の生活費だけでなく、想定外の出費が発生する可能性も考慮に入れておくべきです。独身者が特に注意すべきリスクには、以下のようなものがあります。
 

介護費用

高齢になると心身の衰えにより、介護が必要となる可能性があります。
 
公益財団法人生命保険文化センターの「2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護期間の平均は55.0ヶ月、介護に要した費用のうち、一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など)は平均47万円、月額平均費用は9万円です。この数値から試算すると、介護費用の総額は以下の通りです。
 
・9万円×55ヶ月+47万円=542万円
 
介護は突然始まることも多く、予備費や介護保険の活用が重要です。独身者は介護の担い手がいない可能性が高いため、在宅介護が困難なケースも視野に入れて資金を用意しておく必要があるでしょう。
 

医療費

高齢になるほど、病気やけがによる医療費は増加傾向にあります。健康保険の高額療養費制度によって自己負担額はいくらか軽減されますが、入院時の差額ベッド代や通院費、自由診療などは自己負担となるため、医療保険や現金での備えが欠かせません。
 

住まいの修繕費

持ち家の場合、老朽化による修繕費のリスクがあります。一戸建てでは屋根や外壁、マンションであれば管理費・修繕積立金の増額が想定されます。
 
さらに、高齢になるとバリアフリー化へのリフォーム(手すり設置、段差解消、トイレの改修など)をしなくてはならない場合があります。大規模なリフォームでは、数百万円規模の費用が必要になることもあるでしょう。早めに必要な改修を洗い出し、計画的に備えることをおすすめします。
 

葬儀費

独身者は、自分の死後に備えることも大切です。2024年に実施された株式会社鎌倉新書の「第6回 お葬式に関する全国調査」によると、葬儀費用の総額は平均118万5000円でした。生前に家族葬や直葬など費用を抑えた形式を希望しておくこともできますが、余裕を持って資金を確保しておきましょう。
 

独身者が老後必要となる資金は1000万円以上に達することも|余裕を持った資金確保が大切

「老後2000万円問題」はあくまでもひとつの目安に過ぎず、平均的な家計収支であれば、独身者が老後に必要となる資金は1000万円程度で済む可能性もあります。ただし、生活費だけでなく、医療・介護・葬儀といったリスクも考慮に入れると、最終的に必要となる資金は1000万円を超えることもあるでしょう。
 
50代からでも現状を整理し、自分に合った老後の資金計画を立てることが、老後の安心につながるでしょう。
 

出典

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(10ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図2 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支-2024年-(18ページ)
公益財団法人生命保険文化センター 2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査 第II部 生活保障に対する意識 2.生活保障に対する考え方 (5)世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の公的介護保険の範囲外費用に対する経済的備え (エ)介護経験 (b)介護期間(176ページ)、(e)介護費用(179~180ページ)
株式会社鎌倉新書 【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年) アフターコロナで葬儀の規模は拡大、関東地方の冬季に火葬待ちの傾向あり
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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