勤務先から「早期退職」を提案されました。「退職金が1.5倍に増える」けれど、応じるべき?

配信日: 2025.06.12

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勤務先から「早期退職」を提案されました。「退職金が1.5倍に増える」けれど、応じるべき?
勤務先から早期退職を打診され、「退職金を増額する」と提案されたら、前向きに考える人もいるかもしれません。
 
通常より多くの退職金が受け取れるなら魅力的に感じますが、本当に応じるべきかどうかは慎重に判断する必要があります。
 
今回は、早期退職を検討するときに知っておきたいメリットと注意点、そして判断のポイントについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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「退職金増額」「再就職支援」……会社都合の退職にはメリットもある

いわゆる「早期退職」は、定年を迎える前に会社側の意向で退職を促されるものを指します。多くの場合は「希望退職者の募集」「退職勧奨」といった形で行われ、あくまで本人の同意に基づく自主的な退職という扱いになります。
 
このとき、会社側が提示する条件には以下のようなメリットがある場合があります。
 

● 退職金の上乗せ(通常の1.5倍〜2倍など)
● 再就職のあっせんや支援サービス
● 離職後の失業給付が優遇されるケースなど

 
ただし、これらの条件やサポートの内容は企業によって大きく異なるため、自社の制度や提示された条件をよく確認することが大切です。たしかに制度面では一見お得に見えることもありますが、表面的な条件だけで判断せず、全体像を把握したうえで冷静に検討する必要があるでしょう。
 

「年金が減る」「再就職できない」……見落としがちなデメリットとは

しかし、退職後の生活を中長期的に見た場合、以下のようなデメリットにも注意が必要です。
 

● 収入が一時的に途絶える
● 早期退職により、厚生年金の加入期間が短くなり、将来の年金額が減る可能性がある
● 希望通りの再就職先が見つからず、収入が大幅に下がるケースも

 
特に50代後半〜60代の人の場合、再就職先での待遇は「以前よりかなり悪くなる」ことも少なくありません。早期退職を選んだものの、想定より生活が苦しくなり、貯金を取り崩していく……という人もいるようです。
 
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、50歳~64歳の転職後の賃金変動は表1の通りです。
 
表1

年齢層 変わらない(%) 1割未満の減少(%) 1割以上の減少(%)
50~54歳 31.1 7.3 26.6
55~59歳 37.5 8.8 25.5
60~64歳 20.6 6.6 56.6

※厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」転職入職者の賃金変動状況を基に筆者作成
 
50代以降で転職した人のうち、賃金が「減少した」と答えた人の割合は50~54歳で33.9%、55~59歳では34.3%、60~64歳では63.2%と高くなっています。
 
収入が減ることで家計が苦しくなるだけでなく、厚生年金の加入期間や保険料が減ることで、将来受け取る年金額に影響を及ぼす可能性もあります。早期退職を決断する前に、「その後の働き方」「再就職の難易度」「収入の見通し」など、冷静に現実を見つめることが大切でしょう。
 

判断のカギは「金額」よりも「生活設計」。退職後プランを冷静に見直して

退職金が増えることに目を奪われてしまいがちですが、退職という決断は「その後の人生すべて」に影響します。以下のような点を踏まえ、総合的に判断しましょう。
 

● 退職後の生活費や収入の見通しは立っているか
● 家族の理解や協力を得られるか
● 体力的・精神的に、再就職や起業に対応できるか

 
また、「退職勧奨」はあくまで会社側の提案であり、強制力はありません。安易に応じるのではなく、退職後のライフプランを丁寧に描いたうえで、「今、辞めることが本当に自分の人生にとって得か?」を見極めることが大切です。
 

退職金の増額だけで決めず、再就職・年金・家計も含めて“総合判断”を

たしかに退職金が増えるというのは魅力的です。しかし、退職後の再就職が思うようにいかなければ、収入が減るだけでなく、将来受け取る年金額にも影響するおそれがあります。
 
仮に退職金が通常の1.5倍になったとしても、それだけで老後までの生活資金が十分に確保できるとは限りません。再就職で収入が下がれば、貯蓄の取り崩しが早まる可能性もあり、長い老後を見据えた家計設計がますます重要になります。
 
退職後の暮らしをどう描くか、その準備が整っているかを冷静に見極めたうえで、自分にとって本当に納得できる選択をしましょう。
 

出典

厚生労働省-令和5年雇用動向調査結果の概況-
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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