「年収600万円」の会社員に、年金暮らしの親から「扶養に入りたい」と連絡が! 年金10万円では“老人ホームの費用”が足りないそうですが、経済的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
配信日: 2025.06.12

本記事では、親を扶養家族に入れる要件と、扶養家族に入れることで家計にどんなメリット・デメリットがありそうかを解説します。将来、親が民間の老人ホーム入居を希望したときの参考にしてください。

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親の老人ホーム費用は、年金で足りそう?
日本では高齢化が進み、介護施設の利用者も増えています。厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」によると、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は2019年には8234ヶ所でしたが、2023年には8548ヶ所となるなど、増加傾向にあります。
公的施設である介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の場合、月額利用料は10万~15万円程度です。
一方、民間の介護付き有料老人ホームの月額利用料は15万~30万円程度かかります。老齢厚生年金の平均受給月額が約14万円である現在、自分の年金だけでは老人ホーム費用をまかなうのが難しいかもしれません。
高齢の親を扶養家族にする要件は?
一般的な「扶養家族」には、税制上の扶養と社会保険での扶養の2つがあります。それぞれについて、親を扶養家族へ入れるための要件を見てみましょう(2025年度の税制改正に準拠しています)。
(1)税制上の扶養家族の要件
・自分または配偶者の親
・親と「生計を一にしている」(同居では家計を一にしている場合。別居では生活費などを定期的に送金して親の生活を支えている場合)
・扶養に入れたい親の所得金額が58万円以内(70歳以上なら収入123万円以内)
(2)社会保険での扶養家族の要件
・自分または配偶者の親で、75歳未満
・社会保険に加入している人(子ども)に、生計を維持されている
・扶養に入れたい対象者が同一世帯の場合、扶養対象者が60歳以上では年収180万円未満で、社会保険に加入している人の年収の2分の1未満である
・扶養に入れたい対象者が同一世帯ではない場合、扶養対象者の年収が60歳以上では180万円未満で、社会保険に加入している人からの援助による収入額より少ない
このように、同じような「扶養家族」でも、要件が異なります。
扶養に入れて、どんなメリット・デメリットがありそう?
親を扶養家族に入れると、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。メリットの1つとしては「税負担が軽くなる」があります。どのように税負担が軽くなるのか試算してみましょう。
<試算>
47歳、年収600万円の会社員で、配偶者(パート年収80万円)と17歳の子ども1人の、Aさんのケース(配偶者控除38万円、子どもの扶養控除38万円)
・所得税10万1500円、住民税23万9000円
Aさんの親(71歳、年金月額10万円)が老人ホームに入居し、Aさんの扶養に入ったケース(配偶者控除38万円、子どもの扶養控除38万円+老人扶養親族で、70歳以上で同居以外での扶養控除額48万円)
・所得税7万5500円、住民税20万1000円
このように、民間の老人ホームに入居する親を扶養家族に入れた場合、税負担が年間約6万円軽くなります。そして、社会保険での扶養に入れることで、親の健康保険料負担がなくなるので、その分を老人ホーム費用に充てられるメリットもあります。
一方で、扶養家族に入れるデメリットには何があるのでしょうか。主に考えられることは「親の生活費用を援助することで、自身の家計負担が増えてしまう可能性がある」「親が75歳になると社会保険の扶養から外れるため、親の健康保険料負担が増える」ことです。
介護には決まった期間がなく、老人ホームの入居期間が長くなったり、親の介護度が上がると介護費用負担が増えてしまったりという可能性があることもデメリットといえるでしょう。
介護費用については、介護度と年収によって負担限度額が設定されています。地域包括支援センターなどで、なるべく介護費用負担を抑える相談を行うことも1つの対策です。
まとめ
親への経済的援助として扶養に入れることは、経済的なメリット・デメリットの両方があり、家計と家族全体の将来計画にも影響がありそうです。まずは親の希望や資産状況(貯蓄など)を把握してから、自身の家計状況を比較して今後について決めることが重要といえるでしょう。
出典
厚生労働省 令和5年介護サービス施設・事業所調査
厚生労働省 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
国税庁 No.1180 扶養控除
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー