60代夫婦です。退職金と貯金を合わせて「2000万円」ほどありますが、「この先30年生きる」と考えると本当に足りるのでしょうか?

配信日: 2025.06.11

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60代夫婦です。退職金と貯金を合わせて「2000万円」ほどありますが、「この先30年生きる」と考えると本当に足りるのでしょうか?
「老後資金は2000万円必要」と聞いたことがある方は多いでしょう。でも実際に60代を迎えたご夫婦にとって、それが本当に十分なのか、あるいは足りないのか、不安に思うこともあるはずです。
 
年金額や生活スタイル、医療費、住宅事情などによって必要な金額は大きく変わるため、「2000万円」という数字だけをうのみにするのは危険です。
 
本記事では、「2000万円問題」の本質をわかりやすく解説しながら、60代夫婦にとって現実的な老後の生活費と、不足を補うための実践的な対策まで網羅的にご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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「老後資金2000万円問題」とは? 背景と本当の意味

2019年、金融庁の「市場ワーキング・グループ」報告書が発端となり「老後資金2000万円問題」が大きな話題になりました。この報告書では、夫65歳・妻60歳以上の無職夫婦世帯が毎月約5万円~5.5万円の赤字になるという試算を提示。
 
これを30年間継続すると、約2000万円の資金が不足するという内容でした。ただし、これはあくまで以下のような「前提条件」があっての話です。


・月の支出

約26万円(平均値)
・月の年金収入
約20万円
・支出には家賃が含まれていないケースが多い
・30年間生きる前提(夫65歳から95歳)

つまり、「2000万円」は一部のモデルケースであり、万人に共通する数字ではありません。特に実際の生活では、持病、賃貸住宅、趣味、介護など、さまざまな要因によって必要額は変動します。
 

60代夫婦の生活費はいくら? 実データで見る現実

際に60代夫婦が老後を迎えたとき、どのくらいの生活費が必要なのか、総務省の「家計調査(高齢夫婦無職世帯)」をもとに見てみましょう。
 
・月の平均支出
約23.6万円(2022年、総務省「家計調査」による。年度によっては約25.7万円~26.9万円となる場合もある)
 
・月の年金収入(実収入)
約24.5万円(2023年、総務省「家計調査」による)。可処分所得(手取り)は約22.2万円。年金のみで20万円台前半となるケースもある。
 
・月の不足額
約3.4万円~3.5万円(可処分所得約22.2万円、消費支出約25.7万円の場合。支出約23.6万円・収入約20.1万円の場合、不足額は約3.5万円を超える場合もある)
 
年間で約42万円、30年で約1260万円の不足という計算です。これは持ち家で大きな病気や介護がない場合の想定で、生活費の内訳は図表1の通りです。※住居費(家賃)は持ち家の場合含まれていません。
 
図表1

項目 平均支出(月額)
食費 約6.8万円
水道光熱費 約2.0万円
医療費 約1.6万円
交際費・趣味 約2.5万円
保険料など 約1.3万円
その他 約3.0万円

※筆者作成
 
ここに家賃(賃貸の場合約7〜10万円)が加われば、赤字はさらに拡大します。
 

2000万円で足りる人・足りない人の違いとは?

2000万円で足りるかどうか」は、その人の“生活設計次第”です。足りる人と足りない人には、以下のような特徴があります。
 

【足りる人の特徴】

・厚生年金など受給額が多い(夫婦で月25万円以上)
・持ち家があり、住宅ローンも完済済み
・健康で医療費や介護費用が少ない
・子どもの援助がある or 子どもへの仕送りが不要
・節約志向が身についている

 

【足りない人の特徴】

・賃貸住宅に住んでおり家賃負担が大きい
・年金受給額が少ない(国民年金中心)
・医療費・介護費が高額
・生活水準が高いまま変えられない
・予期せぬ支出(リフォーム、子どもへの援助など)がある

 
たとえば、夫婦で持ち家に住み、年金で毎月25万円以上あれば、特別な出費がなければ2000万円でも十分暮らせるケースもあります。しかし、賃貸住宅や長寿・病気のリスクが高い場合には、それ以上の資金が必要です。
 

「足りないかも」と感じたときにできる4つの対策

1. 支出の見直し

・通信費、保険料、車の維持費など、見直しポイントは多い
・医療費控除や高額療養費制度も活用を
 

2. 小さな収入源の確保

・年金の繰り下げ(最大で約42%)
・パート・短時間労働、趣味を生かした副業(ハンドメイド販売、ライティング等)
・不用品の売却(フリマアプリやリサイクル)
 

3. 安全性の高い資産運用

・つみたてNISAやiDeCoを活用して、リスクを抑えつつ運用
・銀行預金だけではインフレに弱いため、多様な資産分散がカギ
 

4. 公的制度の活用

・高額療養費制度
・要介護認定を受ければ、介護サービスを1~3割の負担で利用可能
・住民税非課税世帯であれば、医療・介護の軽減措置あり
 
何よりも大切なのは、「今から」準備を始めること。現役時代の延長線上に老後があるという意識を持つことが、不安の解消につながります。
 

必要なのは“額”より“準備と意識”

「老後資金2000万円」は、決して絶対額ではありません。生活費、年金、持ち家の有無、医療費、寿命…すべての条件が異なる以上、必要額も人それぞれです。重要なのは以下の3つの視点です。


・今の生活から将来を見通す
・制度や支援を活用しながら足りない部分を補う
・完璧でなくても“早く行動すること”が最善策

不安を抱えたままでは、日々の生活にも影を落とします。「備える=守る力」です。今ある情報と資源を生かしながら、安心できる老後を手に入れていきましょう。
 

出典

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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