更新日: 2019.06.28 介護

有料老人ホームの入居一時金とはどんなお金なのか

有料老人ホームの入居一時金とはどんなお金なのか
高齢期の住まいとして、「有料老人ホーム」があります。
 
特別養護老人ホーム(特養)やグループホームなどの介護施設と比較して、入居のしやすさや、設備が整っているなどの点から、選択されるケースが多くなっているようです。
 
一般的に、有料老人ホームは入居一時金が必要なケースがほとんどで、高額な場合もあります。入居に際しては、一時金の内容をよく理解しておくことが大切です。
 
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

有料老人ホーム入居に際してかかる費用

有料老人ホームに入居するには、「入居一時金」と「月額費用」の2つの費用が必要になります。
 
多くの施設で、入居一時金が多ければ月額費用は少なく、入居一時金が少ないと月額費用が多くなるように設定されています。
 
ある新築有料老人ホームのケースでは、同じ部屋でも一時金の額により、次のようになっています。 
 
入居時一時金 980万円 月額利用料 24万円
 〃  〃  1388万円  〃 〃  17.3万円
 

入居一時金の額

入居一時金はゼロから数千万円まであり、設備の豪華さや、配置されている介護スタッフの人数で違いがあります。
 
平成27年時点のデータがありますので、目安として以下に記載します。
 

(75歳自立入居者 136名のデータ)※を元に筆者が作成
 
入居一時金は数年分(想定される入居期間)の家賃を最初にまとめて支払うため、「前払い家賃」という位置づけになります。上記を入居一時金の、目安としてください。月額費用との関係がありますが、概ね500万円~800万円が中心帯と見て良いと思われます。 
 

入居時の年齢と老人ホームのタイプ

一時金の算出は、入居時の年齢や、要介護度も勘案して算定されます。
 
例えば、85歳・要介護3の場合は、上表とは異なり100万円~300万円のゾーンが21.1%と多くなります。
 
また、有料老人ホームは「住宅型」と「介護付き」に分類され、「住宅型」は10年から15年の居住を想定しているので一時金は高く設定されます。「介護付き」の一時金は、「住宅型」と比べて低くなっています。
 
入居年齢によって一時金が変わってくることは、知っておきましょう。
 

入居一時金の償却

過去に入居一時金のトラブルがあったことから、現在は厚労省の指導指針に基づいて運営されています。入居一時金は、基本的に償却される方式になっています。
 
償却は、保証金や敷金のように将来返還されることがなく、またケア付き分譲型マンションのように不動産として買い取るのとは違い、使用期間が終了すると原則価値はなくなります。
 
償却の期間は、5年・7年・10年・15年程度まであり、施設と入居時年齢によって異なります。初期償却は0~30%程度までが多く、残額は償却期間の均等償却が一般的です。また、月単位での計算が行われます。
 
800万円の10年償却、初期償却20%の場合は、800万円から20%の160万円を引いた640万円が年64万円ずつ償却されます。仮に5年6ヶ月で退去した場合は、640-(64×5+64×6/12)=288万円の返還を受けることができます。
 
先述のとおり、入居一時金は家賃相当分が大半を占め、月額費用を少なく設定する場合は、入居一時金が高くなります。その場合は、初期償却の率が高くなるケース(40%以上)もあります。また、入居一時金に敷金が含まれる場合もあり、この場合は退去時に返却されることになります。
 

クーリングオフの90日ルール

入居後にいろいろな理由で退去をする時に、過去には一時金の返還をめぐってトラブルが発生しました。そのため、現在は「90日ルール」というクーリングオフ制度が法制化されています。
 
契約後、90日以内に退去した場合は、利用期間の費用を除いて全額が返還されます。ただ、契約・入所に際しては体験入所などをして、よく確かめた上で結論を出すことが大切です。
 

まとめ

有料老人ホームは民間の株式会社が運営するケースも多く、独自の特徴を出すため、さまざまな運営方法が取られています。
 
有料老人ホーム間の比較と共に、「サ高住」や「ケア付き分譲マンション」などとも比較して、自分に最も合った施設を慎重に選ぶことが大切ではないでしょうか。
 
出典※公益社団法人全国有料老人ホーム協会 平成26年度 有料老人ホームにおける前払金の実態に関する調査研究事業報告書
執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)
ファイナンシャルプランナー CFP
 

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