「大手企業」と「中小企業」で退職金はどのくらい違う?業種別の相場は?

配信日: 2025.06.10

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「大手企業」と「中小企業」で退職金はどのくらい違う?業種別の相場は?
退職金は、定年後の生活資金を支える大切な柱の一つです。実際にいくらもらえるのかは、企業の規模や業種・職種、学歴によって大きく異なります。特に「大手企業」と「中小企業」では金額の差が数百万円以上になるケースも。
 
さらに、業種によっても退職金の相場にはばらつきがあります。本記事では、退職金の平均額や業種ごとの傾向、制度の仕組みについてわかりやすく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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大手企業と中小企業で退職金はどれだけ違う?

企業の規模によって、退職金の金額には大きな差があるのが実情です。
 
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職一時金・年金の両制度を併用している企業で、大学・大学院卒の勤続35年以上で定年退職した人(管理・事務・技術職)の平均退職金額は、大手企業(従業員1000人以上)では2446万円というデータが出ています。
 
一方で、中小企業(従業員100~299人)になると、1559万円という結果になっています。企業規模によっては、最終的な退職金に1000万円以上の差が生じることもあり、働き続けた結果としては無視できない開きです。
 
この違いは、企業の財務体力だけでなく、退職金制度の内容にも左右されます。大手企業は福利厚生の一環として制度が整っていることが多いのに対し、中小企業ではそもそも退職金制度がない、あるいは金額が一律で少ないというケースも珍しくありません。
 

業種別の退職金相場とは?

退職金は企業規模だけでなく、業種や職種、学歴によっても大きな差が出ます。
 
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、最も退職金が高かった業種は金融業・保険業で、大学卒は約1940万円、高校卒は約1497万円です。これは、給与水準が全体的に高く、かつ制度も手厚く整っているためです。
 
製造業も比較的高く、大学卒は約1108万円、高校卒は1027万円です。安定した収益基盤がある企業が多いため、長期勤続に報いる形で退職金を厚くしている傾向があります。
 
反対に、運輸業・郵便業では退職金が低い結果となり、大学卒が約938万円、高校卒は約866万円でした。これは、賃金水準だけでなく、退職金制度の設計や運用方針、支給基準の違いなど、複数の要因が影響していると考えられます。
 
また、学歴別に見ると、大学卒の方が高卒よりも退職金の平均額が高い傾向にあります。これは、大学卒の方が専門的な業務に従事し、昇進や昇給の機会が多いためと考えられます。
 
このように、同じ年数働いたとしても、学歴やどの業界に属しているかによって将来的な受取額が変わってくるのです。
 

退職金制度の有無や仕組みも差を生むポイント

退職金の金額は、実は「あるかどうか」によっても大きく違ってきます。大企業の多くは、確定給付企業年金(DB)や退職一時金制度など、長期的な視点で制度を設けています。
 
特に終身雇用を前提としていた企業では、定年まで働いたことへのご褒美として厚めの退職金が支払われます。
 
一方、中小企業では、そもそも退職金制度がないことも多く、あるとしても中小企業退職金共済制度(中退共)を利用する形式が一般的です。これは国の支援制度の一つで、一定の条件を満たせば利用できますが、支給水準は企業によってばらつきがあります。
 
また、確定拠出年金(DC)など、社員が自ら運用する制度を採用している企業も増えてきました。企業が一定額を積み立て、運用の成果によって最終的な受取額が変わる仕組みのため、自身の資産運用リテラシーも将来の退職金に影響してきます。
 

まとめ:将来に備えて、自分の退職金を知っておこう

退職金は老後資金に直結する大きな収入源です。しかし、その金額は企業の規模、業種、職種、さらには退職金制度の有無などによって大きく変わります。
 
「大手だから安心」「中小企業だから少ない」と一概には言えないものの、平均的なデータを知ることで、自分の立ち位置を確認する手がかりになります。
 
もし今の会社に制度がない場合は、自分で将来の資金を備える必要があります。退職金は「退職してから知るもの」ではなく、「働いている今だからこそ確認しておくべきもの」です。将来のために、制度の有無や相場を把握し、早めの備えを進めていきましょう。
 

出典

厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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