夫婦で今の貯金は「500万円」、退職金で「1000万円」支給されます。これだけお金があれば、老後は働かなくていいですか?

配信日: 2025.06.07

この記事は約 4 分で読めます。
夫婦で今の貯金は「500万円」、退職金で「1000万円」支給されます。これだけお金があれば、老後は働かなくていいですか?
老後の生活資金がどれくらい必要となるかは、何歳まで生きるかやどのような生活スタイルで過ごすかなどによって大きく変わります。
 
今回のケースでは、夫婦の貯金と退職金を合わせて1500万円の資金を見込んでいます。ここに年金をプラスすれば、老後は働かずに済むかもしれないと期待しているようです。
 
しかし年金受給額によっては、貯金と退職金を切り崩して生活しなければならないかもしれず、そのペースによっては資金がいずれ枯渇してしまう可能性もあるでしょう。
 
本記事では、標準的な年金受給額や月々の支出を基に、老後の資金がどれくらい必要なのかを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

老後に必要な資金はどれくらい?

総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における1ヶ月の支出状況は以下の通りです。


・非消費支出:3万356円
・消費支出:25万6521円

合算すると約28万7000円の支出があります。1年の支出に換算すると約344万4000円、10年なら約3444万円です。続いて、標準的な年金受給額と、貯金・退職金を加えた場合の収支をシミュレーションしてみましょう。
 

標準的な厚生年金受給額は約23万円

日本年金機構によると、令和6年4月分からの年金月額の例は以下の通りです。


・国民年金(老齢基礎年金の満額):6万8000円
・厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):23万483円

厚生年金については、平均的な収入で40年間就業した場合の年金の給付水準が示されています。
 
仮に、今回のケースの夫婦が上記の給付水準と同じく約23万円の受給を受けられるとしましょう。先ほどの平均的な支出額(約28万7000円)から差し引いた場合、月に約5万7000円のマイナスとなります。
 

退職金と貯金でマイナスをカバーできる?

約5万7000円のマイナスが毎月発生した場合、1年で約68万4000円のマイナスが発生します。10年なら約684万円、20年なら約1368万円のマイナスです。
 
単純計算をすると、退職金1000万円と貯金500万円あれば、20年間はマイナスをカバーし続けられます。しかし22年を経過するころには1500万円を使い果たしてしまう計算です。
 
さらに注意点として、1000万円の退職金が手取り額を指しているのか、それとも税引き前の額面なのかによって状況が異なります。
 
退職金には所得税や住民税がかかる場合があります。仮に1000万円が税引き前の額であるなら、実際に受け取れる額はもっと少なくなります。その場合、マイナス収支をカバーできる期間が多少なりとも短くなってしまうでしょう。
 

退職金にかかる税金の概要

退職金にかかる税金を計算するには、まず退職金が「退職所得控除額」より多いか少ないかを知る必要があります。退職所得控除額の求め方は表1の通りです。
 
表1

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(最低80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」を基に筆者作成
 
退職金が退職所得控除額より少なければ非課税、多ければ課税されます。
 
仮に、今回のケースに出てくる世帯の勤続年数が40年だとしましょう。この場合の退職所得控除額は「2200万円」であり、退職金が2200万円以下であれば非課税です。今回のケースでは1000万円なので、非課税扱いです。
 
しかし勤続年数が20年と仮定した場合、状況は異なります。退職所得控除額は800万円となり、退職金の額が上回ってしまい、課税対象となります。
 

平均的な収支バランスだと老後資金が足りなくなる可能性がある

貯金と退職金および年金のみで老後の生活を送れるかどうかは、何歳まで生きるのかや受け取る金額、毎月の支出によって左右されます。年金受給額より大きな支出があればマイナス収支が続くことになり、その分を貯金と退職金でカバーしなければなりません。
 
しかしマイナスの程度によっては蓄えが枯渇してしまうおそれがあります。現在の収支バランスを洗い出し、プラスなのかマイナスなのか、マイナスの場合は貯金と退職金でどれほどの期間カバーし続けられるかをシミュレーションするとよいでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集