インフレで老後の必要資金は「2000万→4000万円」と倍増!? 本当にそれだけ必要なの?「必要額」が人によって異なる理由とは
配信日: 2025.06.05

実は最近は2000万円どころか、4000万円が必要と言われ始めていることをご存じでしょうか。「4000万円も用意するのは無理……」と頭を抱えてしまいそうですが、これはあくまでも数字上の話で、実際に用意しないと生活できないということではありません。
ここでは「老後4000万円問題」の内容と、実際に老後に必要になる金額が人によって異なる理由について解説します。

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目次
老後2000万円問題が「4000万円問題」と呼ばれることがある
そもそも「老後2000万円問題」とは、2019年に金融庁の審議会が公表した報告書をきっかけに、年金収入だけでは老後の生活に約2000万円が不足すると問題になった議論のことです。
その根拠として使用された平成29年の家計調査のデータでは、調査対象である「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)」の収支が5万5000円の赤字となっており、それが30年続くと、5万5000円×12ヶ月×30年=1980万円となり、おおよそ2000万円が不足すると試算されたという訳です。
この老後2000万円問題は、今では4000万円問題とも呼ばれます。「4000万円」は、昨今のインフレを加味した数値です。2019年当時から毎年3.5%の物価上昇が継続して発生したと仮定した場合、20年後には不足額が4000万円になるという計算になっています。
実際、2023年(令和5年)平均消費者物価指数の動向によると、令和5年の消費者物価指数の平均は前年同月比3.2%で、4%超を記録した月もあります。
このときの物価上昇がずっと続くという仮定であれば、本当に老後の必要額が4000万円になることもあるでしょう。
老後に必ずしも2000万円~4000万円が不足するとは限らない理由
前述の「老後2000万円問題」からインフレ率を加味した4000万円問題ですが、あくまでも「平成29年の家計調査」と「令和5年の消費者物価指数」の組み合わせによる数字です。
最新の状況が反映されたものではなく、どの年の資料を利用するかで計算結果は全く異なるはずです。
例えば、2020年の家計調査では、同じ高齢夫婦無職世帯でも老後資金は赤字どころかわずかながら黒字でした。これは新型コロナウイルスが蔓延していた時期で外出が難しかった経緯があり、消費が落ち込んだことが要因と考えられます。
最新の2024年の家計調査を見ても不足額は約3万5000円であり、こちらをもとにすると老後に4000万円が不足することはなく、2000万円の不足も発生しません。
また、最新の2024年(令和6年)の消費者物価の前年比は2.7%と令和5年の前年比よりも伸びが若干鈍化しています。
そして、これらのデータはあくまで無職の高齢世帯を対象にした試算です。昨今は70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になっており、65歳以降も働くのであれば赤字額はさらに減少することが予想されます。
「〇〇万円の不足」はある年の平均データから算出されたものであり、数年後には全く異なる結果も出てきます。また、各家庭の支出状況によって赤字額がずっと少ない、あるいは黒字といったことも考えられます。老後の資金を考えるうえでは、自身の家庭の老後収支はどうなるのか、具体的に計算することが大切です。
将来も賃貸に住む人や老後まで住宅ローンを返済する人は要注意
今回の2000万円~4000万円不足のデータの根拠になった家計調査ですが、住居費の数字が低いという特徴があります。
例えば、2024年の家計調査では高齢夫婦無職世帯の住居費は「1万6432円」でした。これは、住宅ローンや賃貸の家賃を考慮していないための数値と考えられます。賃貸や住宅ローン返済中の場合は5~10万円以上の住居費がかかることもあるため、老後資金の計算時には注意が必要です。
まとめ
老後資金が2000万円~4000万円不足するというのは、いずれも公的なデータから計算されていますが、あくまでもその時点での平均データや仮定の数字を利用しているにすぎず、全世帯が同様の結果になるわけではありません。
実際にどのくらいの老後資金の準備が必要か知りたい場合は、家庭ごとの状況をふまえて、具体的にシミュレーションしてみましょう。
出典
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計の概要
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)家計の概要
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)家計の概要
総務省統計局 2023年(令和5年)平均消費者物価指数の動向
総務省統計局 2024年(令和6年)平均消費者物価指数の動向
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー