再雇用制度を利用して「65歳で退職」した後は、年金だけで暮らそうと思っています。生活費として毎月いくらあれば足りますか?
配信日: 2025.06.05

そこで本記事では、老後生活における生活費や収入源について解説します。

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老後生活に必要な生活費
総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」から、65歳以上の無職世帯における支出の月平均額を図表1にまとめました。図表1における非消費月額とは、直接税と社会保険料を合わせたものです。
図表1
65歳以上の夫婦のみの無職世帯 | 65歳以上の単身無職世帯 | |
---|---|---|
消費支出額 | 25万959円 | 14万5430円 |
非消費支出額 | 3万1538円 | 1万2243円 |
合計額 | 28万2497円 | 15万7673円 |
出典:総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」より筆者作成
老後生活に必要な生活費は、夫婦2人世帯で毎月28万2497円、単身世帯では毎月15万7673円です。ただし、これらはあくまで支出の平均額です。実際の支出を抑えられるのであれば、平均より少ない生活費でも暮らせるでしょう。
老後生活での収入源
定年退職の老後生活において、収入源の一つとなるのが年金です。年金にはいくつか種類があり、加入状況によって受給できる年金や金額は異なります。
年金は大別すると、「公的年金」と「私的年金」の2種類に分けられます。そのうち、多くの方が受給できるのは公的年金の「国民年金」と「厚生年金」でしょう。国民年金に加入していた方が老後に受け取る年金は老齢基礎年金、厚生年金に加入していた方が老後に受け取る年金は老齢厚生年金と呼ばれ、いずれも公的年金として国から支給されるものです。
ここからは、国民年金と厚生年金について解説します。
国民年金
国民年金は、日本に居住している20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象となる年金です。受給するためには、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた「受給資格期間」が10年以上でなければいけません。
国民年金には「満額」の支給額が設定されており、その額は年度ごとに異なります。令和7年度における国民年金の満額は、月額で6万9308円です。令和6年度が月額6万8000円だったことから、1308円の増加となっています。
実際の国民年金の受給額は、保険料を納めた期間と、その年の支給額の満額を基に算出されます。そのため、すべての受給対象者が同じ金額を受け取れるわけではありません。保険料の納付可能月数は480ヶ月、つまり40年間です。基本的には40年間一度も免除などを受けずに保険料を支払った場合に、満額の国民年金を受け取れます。
なお、厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均受給額は月額で5万7700円でした。令和5年度における国民年金の満額は月額で6万6250円ですから、8550円の差があります。
厚生年金
厚生年金は企業に属している会社員のほか、公務員などが加入できる年金制度です。自営業者や専業主婦(夫)などは加入できないため、国民年金と比較すると加入の間口は狭いといえます。受給条件は厚生年金に加入していた期間があり、国民年金の受給資格を有していることです。
厚生年金の受給額は加入期間と、当人の給与を基に算出された標準報酬月額を基に決定されます。厚生年金の受給額には加入期間の収入額が関係するため、人によって受給額が大きく異なることも少なくありません。
「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額は月額で14万7360円です。なお、この金額には国民年金も含まれています。
老後世帯の支出額と年金受給額は?
図表1から、単身の老後世帯における支出額の平均が月額で15万7673円であることが分かっています。国民年金と厚生年金の平均受給額が月額で14万7360円ですから、収支計算としては約1万円の赤字です。
貯蓄を切り崩すなど、赤字を補てんする方法がなければ、国民年金と厚生年金による収入だけでは生活ができません。ただし、あくまでも平均額を基にした収支計算であるため、実際の支出額や年金受給額によっては、年金収入だけで生活することも可能でしょう。
なお、上述の「家計調査」によると、夫婦2人の老後世帯における支出額の平均は月額で25万959円です。一方、実収入が月額24万4580円(うち年金収入である社会保障給付が21万8441円)であり、毎月3万7916円不足するという結果となっています。
より豊かな老後生活を送るためには早めの準備が必要
65歳で退職し、夫婦2人で年金収入のみの生活を考える場合、平均的な年金受給額では生活費をまかなうのが難しい可能性が高いことが分かりました。そのため、支出の見直しや貯蓄の活用、必要に応じて働くこと、公的支援の利用など、さまざまな工夫と準備が必要です。
将来の生活を安心して送るためにも、早めにライフプランを立て、必要な対策を講じていきましょう。
出典
総務省 家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要
厚生労働省 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
厚生労働省 令和7年度の年金額改定についてお知らせします
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー