うちの会社は「退職金制度」がありません。退職給付制度のある企業の割合って高いですか?「老後資金」はどのように確保すべきでしょうか?
配信日: 2025.06.04

本記事では、退職金制度がある企業の割合をご紹介するとともに、老後資金の蓄え方について解説します。

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「退職金制度」のある企業は減少傾向にある
「退職金(退職給付)」は、受け取り方によって「退職一時金」「退職年金」の2種類に分けられます。
厚生労働省が毎年実施している「就労条件総合調査」では、5年おきに退職給付に関する調査を行っており、その結果から退職給付制度のある企業の割合と、35年以上勤続の大卒者における定年退職者1人あたり退職一時金制度のみの平均退職給付額を10年単位でまとめたものが表1です。
表1
退職給付(一時金・年金)制度が ある企業の割合 |
大学・大学院卒(35年以上勤続の管理・事務・技術職) 退職一時金制度のみの平均退職給付額 |
|
---|---|---|
平成15年度 | 86.7% | 1886万円 |
平成25年度 | 75.5% | 1567万円 |
令和5年度 | 74.9% | 1822万円 |
※筆者作成
退職給付制度のある企業は減少傾向であることが見て取れます。
「確定拠出年金」を導入する企業が増えている
従来の退職給付制度に代わり、近年増えているのが「企業型確定拠出年金(企業型DC)」の導入です。
企業型DCでは、企業が毎月掛け金を積み立て、加入者である従業員自らが運用することで将来的に年金資産を受け取ります。元本を拠出するのは原則として企業ですが、「マッチング拠出」制度を利用することで従業員側からも拠出額を上乗せすることが可能です。
厚生労働省の実施する「就労条件総合調査」によれば、平成15年度時点の退職給付(年金)制度における企業型DCの導入割合は「1.8%」にとどまっていましたが、令和5年度においては「50.3%」まで拡大しています。
「退職金制度」がない場合の「老後資金」の蓄え方
退職金制度が一切存在しない、または企業型DCだけでは金額が不安という場合、老後資金を確保する方法としては表2のような手段が考えられます。それぞれメリット・デメリットは一長一短ですが、分かりやすくまとめているので参考にしてみてください。
表2
概要 | 主なメリット | 主なデメリット | |
---|---|---|---|
銀行預金 | 銀行で口座開設し貯蓄 | ・いつでも払い戻せる ・積立定期預金は定期的に自動積み立て可能 |
・自己管理が必要 ・近年は低金利が継続 |
積立型保険 | 満期返戻金のある 生命保険や医療保険などに加入 |
・保険料が原則として生命保険料控除の対象 ・病気、事故など不測の事態に備えられる |
・保険料が掛け捨て型と比べて割高 ・中途解約すると返戻金が保険料を下回る可能性 |
iDeCo | 個人型確定拠出年金に加入 | ・税制優遇あり ・運用先を自分で選べる ・企業型DCと原則併用可能(条件あり) |
・商品により元本割れリスクあり ・加入資格に応じて拠出限度額が定められている |
NISA | NISA口座を開設し、 投資信託などで資産運用 |
・税制優遇あり ・運用先の自由度が高い ・投資では比較的低リスク |
・元本割れのリスクあり ・1人1口座しか開設できない |
※筆者作成
まとめ
「退職金」に頼らない老後資金の確保を考える場合、「保全する」「増やす」のどちらを重視するかによって選ぶべき手段が変わります。「増やす」ことのできる手段には往々にして元本割れなどのリスクが付きまといますので、老後までの想定年数や余裕資金を考慮し、ご自身に合ったものを選択することが肝要です。
出典
厚生労働省 平成15年就労条件総合調査の概況 2 退職給付(一時金・年金)制度
厚生労働省 平成15年就労条件総合調査の概況 3 退職給付(一時金・年金)の支給実態
厚生労働省 平成25年就労条件総合調査結果の概況 4 退職給付(一時金・年金)制度
厚生労働省 平成25年就労条件総合調査結果の概況 5 退職給付(一時金・年金)の支給実態
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概況 3 退職給付(一時金・年金)制度(12ページ、13ページ)
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概況 4 退職給付(一時金・年金)の支給実態(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー