生活保護の受給には「働く意思」が必須? 80歳で年金「月5万円」でも受給できるのでしょうか?“誤解の多いポイント”もあわせて解説
配信日: 2025.06.03

今回は、生活保護の受給条件や、「働く意思」に関するよくある誤解について解説します。
生活保護の受給条件とは
生活保護は、国が生活に困窮するすべての国民に対し、最低限度の生活を保障する制度です。
「生活保護法」第1条には、この法律が「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、(中略)その自立を助長することを目的とする」とされています 。
厚生労働省のホームページには、生活保護を受けるための要件が記載されています。
1. 収入が最低生活費に満たないこと
最低生活費は、住んでいる地域や世帯の人数などによって異なります。収入には、年金や手当、仕送りなども含まれます。
2. 資産を活用しても生活できないこと
預貯金や不動産、自動車など、売却してお金に換えられるものは、原則として生活費にあてる必要があります。ただし、生活に必要な家財道具や、障がい者の自立等に必要な自動車などは、保有が認められる場合があります。
3. 働く能力がある場合は、能力に応じて働くこと
病気や障がいなどで働けない場合は、この要件は適用されません。求職活動を行っているにもかかわらず、なかなか内定が得られない場合なども、生活保護を受給できる可能性があります。
4. 扶養義務者からの援助が受けられないこと
配偶者や親子、兄弟姉妹など、法律で定められた扶養義務者からの援助が受けられないことが条件となります。
上記の内容を満たしている状態でなければ、基本的に生活保護を受けることができません。
「働く意思」は必須?
受給条件のうち「3. 働く能力がある場合は、能力に応じて働くこと」が設定されているように、生活保護を受けるためには「働く意思」があることが原則とされています。誤解されることも多いですが、これはあくまで「働く能力がある場合」に限られます。病気などの事情があり、働きたくても働けないなどの場合は、この条件は適用されません。
高齢であるとか、病気や障がいなどの事情で働くことができない場合は、「働く意思」がなくても生活保護を受給できます。例えば、80歳という高齢のために勤労が困難であり、なおかつ年金受給額が非常に少ない、という状況であれば、その年金受給額が「最低生活費」に満たなければ、生活保護を受給できる可能性があります。
「最低生活費」は、住んでいる場所・世帯人数などによって異なりますが、単身世帯の場合はおおよそ10万円~13万円程度に設定されています。つまり、一人暮らしの高齢者である場合、年金収入があったとしても月収10~13万円以下なら生活保護を受けられるということです。
ただし、このとき受け取ることのできる生活保護支給額は、各地域で定められた「最低生活費」から年金受給額を差し引いた金額となることに注意しましょう。
まとめ
生活保護は、生活に困窮する国民の生存権を保障する大切な制度です。生活保護受給の要件の1つである「働く意思」は、働く能力がある場合に限って求められるため、高齢や病気などの事情によって働くことができない状況であれば、生活保護を受給できる可能性は十分にあります。
事情によって労働をすることが難しく、生活に困窮している状況であれば、ためらわずに地域の福祉事務所に相談することが大切です。
出典
e-Gov法令検索 生活保護法
厚生労働省 生活保護制度
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント