63歳で20年勤めた会社を退職→「失業保険15万円+老齢年金15万円」で生活の予定が、厚生年金9万円が“支給停止”に!? どうして「30万円」受け取れなかったの? 理由と対策を解説

配信日: 2025.06.01

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63歳で20年勤めた会社を退職→「失業保険15万円+老齢年金15万円」で生活の予定が、厚生年金9万円が“支給停止”に!? どうして「30万円」受け取れなかったの? 理由と対策を解説
Aさんは20年間勤めた会社を自己都合で退職し、失業保険(基本手当)15万円と、繰上げ受給を開始した老齢年金15万円を合わせた計30万円で生活していこうと考えていました。しかし、突然、老齢年金のうち老齢厚生年金分の9万円が支給停止となりました。
 
結果的に、収入は予想していた月額30万円から21万円に減少してしまい、老後の生活プランが大きく崩れてしまったということです。本記事では、Aさんの年金支給停止の理由とその対策について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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失業保険(基本手当)を受給するには?

雇用保険の失業保険(基本手当)の自己都合退職の場合の受給要件は、次の通りです。

1. 失業の状態にあること
2. 離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること

Aさんのように、雇用保険の被保険者期間が20年以上で自己都合退職した場合、基本手当の受給期間は150日になります。また、基本手当の支給額は離職した日の直前の6ヶ月に支払われた賃金の合計を180で割った金額の45~80%で、60歳以上65歳未満の人の上限額は7420円となっています。
 

65歳より前に老齢年金を受給するには?

年金を65歳より前から受給する場合は、特別支給の老齢厚生年金の要件に該当するか、繰上げ受給を開始するしかありません。繰上げ受給を開始する場合は、65歳までの期間に応じた減額率が適用され、減額された年金額を生涯受け取ることになります。また、一度繰上げ受給を開始すると、取り消すことはできません。
 

基本手当を受給すると厚生年金が支給停止となる

Aさんの老齢厚生年金は、なぜ支給停止となったのでしょうか?
 
実は、65歳未満で受給する老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金も含む)と、雇用保険から支給される基本手当は同時には受け取れず、会社を退職後にハローワークで求職の申し込みをすると、その翌月から65歳未満で受給する老齢厚生年金は支給停止となります(基本手当を1日も受給しない月は約3ヶ月後に支給されます)。
 
なお、支給停止となるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金(国民年金)は支給されます。このような制度のため、Aさんのケースでは基本手当15万円、老齢基礎年金6万円の合計21万円しか受給できず、老齢厚生年金9万円は全額支給停止となってしまったのです。
 

65歳未満の人が年金と失業給付を受け取る場合の注意点

65歳未満で老齢厚生年金を受け取っている人が求職の申し込みをすると、その翌月から年金が支給停止となるので、会社を退職後に失業保険(基本手当)を受給しようと考えている人は、退職後に繰上げ受給を開始するのではなく、基本手当受給終了後に、繰上げ受給を開始したほうが良いでしょう。
 
なぜなら、繰上げ受給の開始と求職の申し込みを同時にすると、厚生年金が支給停止になるにもかかわらず、繰上げ受給を開始した年齢に応じた減額率が適用されてしまうからです。
 
老齢年金を繰上げ受給していなくても、特別支給の老齢厚生年金を受給している場合は、基本手当と特別支給の老齢厚生年金を同時に受け取ることはできません。ただし、65歳直前で退職し、65歳以降に基本手当を受給しながら厚生年金を受給する場合は支給停止に該当せず、基本手当と老齢厚生年金を同時に受給できます。
 
基本手当の受給により、65歳前の老齢厚生年金が支給停止となることを避けたい人は、退職時期をずらすか、65歳直前で退職するなどの対策が必要となります。
 

まとめ

会社を退職し、65歳前に基本手当と老齢厚生年金を受給する場合、求職の申し込みをした翌月から老齢厚生年金が全額支給停止となります(基本手当を1日も受給していない月を除く)。老齢基礎年金は支給停止となりませんが、この雇用保険と年金の調整を知らないと、Aさんのように老後の生活プランが一気に崩れてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
 

出典

厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
日本年金機構 老齢年金ガイド令和7年度版
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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