親がヘルパーを拒否するので仕事を辞めて介護しているのですが、経済的にもう限界です。介護サービスを受けるとどのくらい負担を減らせますか?
配信日: 2025.06.02

しかし、親に「ヘルパーは嫌だ。あなたにやってもらいたい」と言われると、子どもとしてはやってあげたい・やらなくてはならない、という気持ちになるでしょう。親が介護サービスを拒否する場合、どのような対策があるのか、一緒に見ていきましょう。

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)
外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
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親の気持ちを理解する
親がなぜヘルパーを嫌がるのか、その理由を丁寧に聞いてみましょう。
一度も介護サービスを受けたことがない場合は、「ヘルパー(知らない人)に家に入られたくない」「人に迷惑をかけたくない」などの不安があるかもしれません。
また、過去にヘルパーを頼んだことがある場合は、「ヘルパーの作った料理が口に合わない」「ヘルパーと相性が合わない」ということもあるかもしれません。ヘルパーと相性が合わない場合はヘルパーを変えてもらうことも必要です。
親の気持ちをじっくりと聞き、「あなたを大切に思っているからこそ、プロの手を借りて最善のケアをしたい」と親の立場を考慮しながら対話を重ねることが求められます。
相談者さまの場合、現状では、介護のために仕事を辞められたことで収入が途絶え、貯蓄を切り崩しながら生活されているのではないでしょうか。介護サービスを利用すれば、再び働きに出る、あるいはパートタイムなどで収入を得る時間を確保できる可能性も出てきます。
ヘルパーの利用で得られるメリットを、親が理解しやすいように具体的に説明しましょう。「あなたが楽になる」「私も安心して仕事ができる」など、親とあなたにとってのメリットを伝えることが大切です。
親が徐々に介護サービスになじむために、まずは短時間の利用から始めるのもひとつの方法です。
ショートステイやデイサービスを利用することで、介護者自身が休息する時間を確保できると同時に、親もサービスを体験して慣れていくことができます。最初から多くのサービスを利用するのではなく、週1回の訪問介護から始めるなど、徐々に慣れてもらうようにしましょう。
利用を始めたけれども、「デイサービスに行きたくない」「行ってもすぐに帰ろうとする」「介護施設から家族に迎えに来るよう要請がくる」などの問題が発生することがあります。
多くの場合、親の気持ちと提供されるサービスの内容やスタッフとの人間関係が合わないことが考えられます。そのような場合は、様子を見ながら別のサービスや施設を探すことも必要です。
認知症の場合
親が認知症の場合、介護サービスのメリットを説明しても理解できない場合があります。また「その時は納得してもすぐに忘れてしまう」という問題もあります。
認知症の症状は人によってさまざまなので、その人に合った介護支援サービスを利用することが求められます。親ができることは積極的にやってもらう。料理など被介護者ひとりでは難しいことは、「一緒にやることで残った能力を生かす」等の対応が求められます。
介護サービスは自宅での介護から施設での介護まで、いろいろなサービスが提供されています。まずは地域包括支援センターで、どのような介護が親に合っているのか相談しましょう。介護サービスを利用してみてうまく行かない場合は、ケアマネージャーと相談し適時見直すことも重要です。
地域包括支援センターは、介護に必要な情報を集め、具体的な介護サービスを紹介してくれる心強い味方です。専門職が相談に乗ってくれるため、どのサービスがあなたの家庭に合っているか詳しく知ることができます。親が直接センターの担当者やケアマネージャーと話をすることで、不安を和らげることができるかもしれません。
自宅での介護サービス
ひと口に介護サービスといっても、さまざまなサービスが提供されています。本章では、自宅で暮らしながら受けられる介護サービスの詳細を見てみましょう。
ホームヘルパー(訪問介護員)や介護福祉士が利用者の自宅を訪問して生活支援を行う。
・身体介護:食事、入浴、排せつ介助、体の清拭(せいしき)、着替え、洗面、寝返りの介助 など
・生活援助:調理、後片付け、掃除、洗濯、日用品の買い物 など
*利用者に直接関係ない家事は不可
・移動介助:通院などに利用する介護タクシーへの乗降介助
医師が必要と認めた場合、看護師等が自宅訪問し医療的なケアを行う。
・症状の観察:健康状態のチェック、悪化予防
・衛生面のケア:入浴介助、排せつなどの援助
・医療的なケア:床ずれの処置や点滴注射、人工呼吸器管理、留置カテーテルの管理等医療的ケアを行う
・機能訓練:歩行訓練や嚥下(えんげ)の訓練を行う
・食事管理:低栄養、栄養障害、脱水症状などを防ぐ
介護施設に週2〜3回送迎し、介護施設で昼食、風呂、簡単な体操や娯楽を行う。
・利用者が施設に通ってレクリエーションや日常生活の支援を受ける
・利用者が外出により気分転換、いろいろな人と会い活性化
・家族にとって息抜きの機会になる
通所介護の形態のひとつで、その名のとおり介護施設で受け入れる人数が小規模(定員29名)で、さまざまな介護サービスを複合的に提供する。被介護者に寄り添った柔軟な対応が可能。
・お散歩、入浴、定期巡回、買い物、掃除、洗濯、トイレ掃除、風呂洗い など
あくまでも被介護者の世話の範囲、家族の分は対象外
・利用料金は要介護ごとに応じた1ヶ月ごとの定額制
・食事、宿泊代は別費用で計算しやすく、安い
・訪問看護複合型は、胃ろう、たん吸引、血糖値測定などにも対応
・ショートステイが可能
・外部の訪問介護、デイサービス、ショートステイ等が利用できない場合が多い
・利用するにはその小規模多機能施設を担当するケアマネージャーに変更が必要
医師、理学療法士などの配置された施設に通い、機能向上などのリハビリテーションを行う。
・必要な機材がそろった施設でリハビリテーションを行う
・食事、入浴など日常生活支援も受けられる
介護費用
介護サービスの経済的な負担は、種類や利用する時間帯、親の介護度によって異なります。この介護保険制度を活用することで、経済的な負担は大きく軽減される可能性があります。市区町村によっては、さらに助成制度があることもあるので、一度確認してみるとよいでしょう。
介護保険サービスを利用する場合は、最初に介護認定を受ける必要があります。介護認定されると、その介護度によって図表1の介護保険を利用できます。利用者は病気やけがと同じように、利用者負担分を支払います。
図表1のように介護度によって利用上限があり、原則としてその範囲内でどのサービスをどの頻度で利用するかを、ケアマネージャーと相談して決めます。
高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算制度
高額介護サービス費は、月々の利用者負担額(福祉用具購入、食費・居住費等一部を除く)の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、超えた分について介護保険から支給されます。
さらに、高額医療・高額介護合算制度は、同じ医療保険の世帯内において、医療保険と介護保険両方に自己負担が生じた場合は、合算後の負担額が軽減されることになります。決められた限度額(年額)を500円以上超えた場合については、医療保険者に申請をすることによって超えた分が支給されます。
詳細は、厚生労働省のホームページを参照してください(※)。
まとめ
自分自身のキャリアと経済状況も見直しましょう。介護によって離職することや収入が減少することは、長期的に見て大きな影響を及ぼします。必要であれば、キャリアの専門家に相談し、在宅勤務やパートタイムなどの働き方の見直しを検討することも考えられます。
介護は長期戦です。自分自身を大切にし、効率的にサービスを活用することが、親にとってもあなたにとっても最良の選択となるでしょう。ひとりで抱え込まず、周りのサポートを上手に取り入れ、親との豊かな時間を過ごしてください。
困ったことや疑問点がある場合は、地域包括支援センターに相談し最適な解決策を見つけることをお勧めします。
出典
(※)厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
厚生労働省 居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)