更新日: 2019.06.28 セカンドライフ

「住宅・教育・老後」・・・どれを優先すればいいの?

執筆者 : 杉山夏子

「住宅・教育・老後」・・・どれを優先すればいいの?
人生の3大出費と言われる住宅・教育・老後費用。どれも数千万円単位になる費用です。これだけの大金を急には出せないため、早めに準備したりローンを組んだりすることになります。
 
こんな大金をどうやって準備していけばよいのでしょうか? 優先順位も含めて考えてみます。
 
杉山夏子

執筆者:杉山夏子(すぎやま なつこ)

2018年日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員
一般社団法人 家族信託普及協会®会員

大学卒業後外資系IT企業にて金融機関のシステム営業に従事。その後シンガポールへ移住しファンド会社に就職。

帰国後ファイナンシャルプランナーの資格を取得し、資産形成から保全にいたる多くの知識と経験を駆使し、ファイナンシャルスタイリスト(R) として、ライフプラン、資産形成、保険見直し、相続等の相談業務、セミナー、執筆業務を実施。

住宅・教育・老後費用はどれくらいかかるの?

住宅は、建売住宅で約3340万円、マンションで約4350万円が平均購入価格です(住宅金融支援機構・2017年度フラット35利用者)。年収に対しての倍率はそれぞれ6.6倍、6.9倍となっています。この数字は全国平均ですので、首都圏の人はより高い数値が出ています。
 
教育費は、幼稚園から高校まで公立、大学のみ私立文系で、一人1000万円ほどかかるとされています。小学校や中学校から私立に進ませれば、さらにかかりますし、子どもの人数分増えていきます。ただ、子どもの進学タイミングはあらかじめわかっており、計画しやすいお金ではあります。
 
老後の生活費は、 夫 65 歳以上・妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯で、約24万円かかります。収入は年金などで約19万円、毎月5万円ほど不足します。無職の場合、その分は貯蓄を取り崩すことになります。年間60万円です。その他に、家のリフォーム代や冠婚葬祭などの臨時出費も必要になるでしょう。
 
何年続くかわからないのが、老後の生活費の難しいところです。
 

老後資金は最優先

「今1万円あげます。もしくは1年後に1万5000円あげます」あなたはどちらを選びますか?
 
この質問をすると、今1万円をもらう方に多く手が挙がります。これは、行動経済学で「現在バイアス」と呼ばれるものです。1年後には50%増ですから、冷静に考えれば後でもらう方がずっとよいにもかかわらず、人は目先の1万円を選んでしまいます。「今」に集中しがちなのが、人間の心のクセです。
 
住宅も教育も、まだ着手していなければ、予算を増減させることができます。しかし、老後だけは予算をコントロールできません。
 
「私は80歳までしか生きないから、そこまで準備すればいい」冗談ではよく言いますが、現在の平均寿命からすれば、それ以上に長生きする可能性の方が大きいのです。予測不可能で、遠い将来の老後。想像がつかないために楽観視しがちですが、あえて悲観的になって、優先的に準備を始めてしまいましょう。
 

iDeCoで老後資金準備を

60歳までは下ろせないからこそ、iDeCoは老後資金を蓄えるのに最適な制度です。月5000円から始められます。月5000円の拠出で、10年で60万円。年3%で運用できたら約70万円になります。月2万3000円にすれば、10年で276万円。年3%の運用で約320万円です。
 
1年に一度、拠出額の変更も可能です。転職や結婚、子どもの誕生などに合わせて、拠出額を増減させるのもいいでしょう。積立投資は時間をかければかけるほど、複利効果で有利になりますから、早めに始めておくのが大切です。
 

「終の棲家」はない。住宅はフレキシブルな資産。

住宅は、家族のサイズによって住み替えも考えられます。購入する時は「一生の買い物」と必死になりがちですが、将来住み替えもあるという気持ちで購入物件を探してみましょう。
 
実際、60 歳以上のマンション購入者の割合が増加傾向にあります。子どもたちが独立した後、ご夫婦2人世帯に適した広さの、より利便性の高い場所にあるマンションに引っ越しているのでしょう。
 
また、現在は低金利時代ですので、住宅ローン金利も低くなっています。住宅ローン金利が高い方は、住宅ローンの借り換えで負担を軽減できるケースもあります。
 

教育費は最初の計画が肝心

以前の記事でも書きましたが、教育費は下げることの極めて難しいお金です。
 
しかし、2019年10月1日以降、幼児教育の無償化が開始される予定ですし、2020年4月からは学生への大学などに対する減免や給付型奨学金(もらえる奨学金)の支給が拡充される予定もあります(所得制限あり)。
 
奨学金も利用できますが、準備できているに越したことはありません。ジュニアNISAで5年間、年間80万円を貯めながら3%で運用すると、約430万円になります。私立大学4年間にかかる費用が約450万円ですから、ほぼこれで準備することができます。
 
どれから始めればよいかわからない人は、まず「貯めグセ」を付けることが大事です。天引きの仕組みを利用して、iDeCoや財形貯蓄、つみたてNISAやジュニアNISAなどを始めてみましょう。
 
出典:
住宅金融支援機構「2017年度フラット35利用者調査」
総務省「家計調査年報(家計収支編)」平成29年家計の概要
文部科学省「子供の学習費調査(平成28年度版)」
文部科学省「私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
 
執筆者:杉山夏子(すぎやま なつこ)
2018年日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員
一般社団法人 家族信託普及協会®会員