更新日: 2019.06.28 定年・退職
60歳以降の収入について知っているとお得なこと
前回60歳以降も働く場合、一定額以上の所得があると老齢厚生年金が減額される在職老齢年金についてご紹介致しました。今回は、その他の知っているとお得な情報について紹介します。
執筆者:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、
社会保険労務士、米国税理士、宅建士
早稲田大学卒業後IT業界に従事していたが、格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。
ライフプラン、年金、高齢者向け施策、海外在住日本人向け支援(国内行政手続、日本の老親のケア、帰国時サポートなど)を中心に代行・相談サービスを提供中。
企業向けコンサルティング(起業、働き方改革、コロナ緊急事態の助成金等支援)の実施。
国内外に多数実績をもつ。
・コロナ対策助成金支援サイト
・海外在住日本人向け支援サイト
・障害年金支援サイト
60歳で定年退職してから就職活動すると失業保険がもらえます
多くの企業が定年退職の年齢を60歳としていて、その後も希望すれば雇用継続制度によって延長して就労することができます。ただし、雇用継続といってもいったん定年退職してから再雇用契約を結ぶことになるので、これまでのような待遇(役職、給与、職務内容など)は望めません。
そこで、別の会社で新たな仕事を始めたいということであれば転職活動をして別の就労の機会を見つけることもできます。
その場合、転職活動をしている間、失業保険(雇用保険制度における求職者給付のこと)を受けることができるのですが、65歳の前と後で給付内容が変わります。
<60歳以上65歳まで>
退職前の被保険者であった期間(雇用されていた期間のことで「算定基礎期間)とも言います)によって90日~150日の間、求職者給付の一つである基本手当が支給されます。(会社都合などやむを得ない理由で退職する場合は90日~240日となります)この間、4週間に一度ハローワークへ出向いて求職活動の認定を受ける必要があり、認定を受けた日数分の基本手当が支給されます。(手続きは60歳未満の場合と同じです)
< 65歳以降>
退職前の被保険者であった期間が1年未満であれば基本手当の日額の30日分、1年以上であれば50日分の高年齢求職者給付金が一時金という形で支給されます。
※雇用保険の支給要件、支給期間、支給額などについては別途ハローワークへお問い合わせください
年金の繰り上げ請求、繰り下げ請求を考えてみよう
原則65歳支給開始の年金を繰り上げ請求するか、繰り下げ請求してもらうかどうかについては、一概にどちらがよいかということは言えません。受給者一人ひとりの生活状況(寿命、資産、所得、支出など)によってその有効性が変わるためです。
繰り上げ請求して減額された年金を早い時期から受給するか、または繰り下げ請求して増額された年金を遅らせて受給するかはとても悩むところです。
厚労省「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(※1)によれば、繰り上げ請求をしている人は32.3%と意外と多く、一方の繰り下げ請求している人は1.5%とわずかとなっています。しかし、平均寿命が高くなり人生100年時代と言われる今日では、長生きリスクに備えるためにも繰り下げ請求を考えていくべき時期なのかもしれません。
なお、繰り下げ請求といってもいくつかのパターンがあることを知っておいてください。繰り下げ請求手続きでは年金受給額のすべてを繰り下げることもできますが、各年金(厚生年金、国民(基礎)年金、そして夫婦であればそれぞれの年金)を個別に繰り下げることもできます。
例えば、厚生年金の被保険者だった人は老齢厚生年金と老齢基礎年金を請求できますが、もし両方とも繰り下げ請求すると、配偶者(または18歳未満の子)がいる場合に上乗せ支給される加給年金が停止されてしまいます(この加給年金部分は停止されるだけで繰り下げの対象にはならないので注意)。そこで、老齢厚生年金は従来通り65歳からもらい、基礎年金部分だけ70歳へ繰り下げるという方法も考えられます。
また、夫婦の年金の合計額を世帯の年金収入と考えれば、夫の年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)は従来通り65歳から、妻の年金だけ70歳へ繰り下げる方法も考えられます。70歳に繰り下げた場合、年金受給額は42%増額され、受給累計額で見れば81歳を超えるあたりで繰り下げ請求時の額が本来請求時の額を上回ります。
男女の平均寿命は女性の方が長生きなので、女性の方が繰り下げ請求の恩恵を受ける可能性が高いのです。また、夫の死亡後は妻自身の年金のみになることも考慮すると、妻の年金を繰り下げるという方法は有効です(老齢厚生年金受給者が死亡した場合は遺族年金を受給できる場合があります)。
いかがでしょうか? 皆さん基本的な部分は既にご存じだと思いますが、詳しい内容まではなかなか知る機会がありません。こうしたノウハウは年金事務所やハローワークに行って質問したり、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談したりすることで身につけることができると思います。
出典
(※1) 「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 」平成30年12月 厚生労働省年金局
執筆者:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表