更新日: 2019.07.04 セカンドライフ

【相談実例】「65歳からの年金生活が不安。ライフプランを考えたい」(2)

【相談実例】「65歳からの年金生活が不安。ライフプランを考えたい」(2)
将来を考えると、年金は65歳からもらえなくなる可能性があります。昭和の時代では55歳だった定年が60歳になり、今では定年の制度を廃止する傾向もあります。とは言っても60歳や65歳で一区切り、これからのプランを考えるには良い機会です。
 
前回、ライフプラン表とキャッシュフロー表を作成することをお勧めしました。将来のライフイベントに係る費用を可視化すると、予算が立てやすいという話でした。今回は手持ちの資産のお話です。
 
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

もう少し働こうかなぁ、という人が増えつつある

人手不足が顕著になったこともあって、60歳で定年を迎えても“定年延長”という形で同じ職場で働き続けている方々が多いようです。年金の受給年齢は段階的に引き上げられていますので、65歳まで働くことが出来れば、空白期間は埋められます。
 
「空白期間」というのは何かというと、定年の60歳で無職になると収入は無くなります。年金を受給できるのは65歳からなので、この5年間は無収入です。生活費の全額を貯蓄からの取り崩すことになり、取崩し金額が多くなってしまいます。
 
老後資金はどのくらい必要か? という試算をするための計算は以下のようになります。
 
<例> 老後の生活費:35万円 年金額:22万円 人生100年
(1)60歳で退職の場合 35×12×5+(35-22)×12×(100-65)=7,560万円
(2)65歳で退職の場合 (35-22)×(100-65)=5,460万円
 
実際は年齢により、65歳以前に特別支給の老齢厚生年金が支給される場合がありますし、あくまで試算例です。ですが、「空白の5年間」が空白期間のままなら、2100万円もの取崩しが必要になります。
 
数式を見ることで“少しでも収入を得ること”や“5年間でなく3年間にすること”により、2100万円を減らすことの重要性は分かると思います。この期間に手持ち資産を減らさないことが出来れば、後々の資産計画が楽になります。
 

資産一覧表を作成したら、記憶違いも見つかるかも?

65歳からのライフプランを考える時、ライフイベント表・キャッシュフロー表とともに「資産一覧表」を作成することが大切です。
 
というのも現役時代の資産形成期と違い、65歳からは資産を取り崩して生活します。自分の資産はいくらあるのか? だけではなく、どの金融機関に何があるのかを整理することが大切です。
 
“定期預金に預けても金利は付かない”という期間が長くなり、投資信託や貯蓄性の保険などの商品に資産が分散され、その割合も多くなっています。大手の金融機関が破たんしたことで、“1000万円以上は保護されないので分散しておかないと”とメインバンク以外のサブバンクを持つことも通常になっています。
 
分散化することは悪いことではありませんが、一覧表にしておく必要はあります。ご相談者にこの作業をしてもらうと、“忘れていた通帳が見つかった”“生命保険を解約したことを忘れていた”など、記憶違いが見つかることも多いです。
 
通帳が見つかり残高が多かった場合はラッキーですが、その逆で当てにしていた資産が無かった場合は、補填を考えないといけなくなります。
 
Sさん(58歳)は、夫(65歳)と息子(26歳、会社員)の三人暮らしです。夫は60歳で退職した後、暫くは嘱託や短期のアルバイトをしていましたが、2年前に仕事を辞めました。Sさんも同じ時期に会社を退職しました。「老後資金は準備できている」と判断されたためです。
 
資産一覧表を見てみると、外貨建て定期預金や投資信託、個別株式など多岐に亘ります。預け先を分散している場合、資産をグループ分けして確認することが必要です。〇〇銀行・△△証券会社と金融機関は別でも、国内株式に投資している個別株式や投資信託は同じグループです。
 
国内債券・国内株式・外国債券・外国株式の4資産にバランスよく、というのが分散投資の基本です。シニアになると、この資産配分を、株式からリスクの少ない債券などにシフトするのも王道とされています。
 
Sさんの場合、日本株式の配分が多い傾向にありました。基本や王道はあくまで一般論ですが、“息子さんの結婚が決まり、援助したいので費用は株式を売却して”と“日本株暴落”が重なるということも可能性がゼロではありません。
 
流動性の高い預貯金から取り崩し、値上がりを期待して投資信託を残していると、結局は値下がりした時に売却することになってしまう……こちらの可能性もあるのです。
どの資産から取り崩すかは、残りの資産のバランスを考えて実行することが大事です。
 
【ワンポイントアドバイス】
投資信託など値動きのある資産は、時間を分散して購入することで、高値掴みのリスクを回避します。取り崩す時も同様で、何度かに分けて売却することをお勧めします。これは「必要以上に手元に現金があって使い過ぎた」という危険も遠ざけます。
 
Text:宮﨑 真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士
 

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