更新日: 2019.01.11 介護
肉親の介護離職が悲惨な現状、離職をしなくて済む防衛制度を知ってますか?
しかし、2018年7月13日に総務省が公表した就業構造基本調査によれば、2017年の「介護離職者」は9万9100人でした。この調査は5年おきに行われ、前回の2012年は10万1100人で、日本政府が掲げた目標に対し、あまり改善されていないと言わざるを得ない状況です。
介護離職は精神面や肉体面だけでなく、経済面からも避けたいことです。今回は、介護離職の現状を知って、離職しないための防衛策として、どのような制度を活用できるかを考えてみましよう。
Text:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
介護離職をした場合のお金の話
■介護離職、その後はどうなるのか?
介護のために離職をしてしまうと、当然ですが、無職になってしまいます。介護中は、親御さんの年金や財産などで、収入源は確保できますが、介護が終わって、親の看取りが終わると、無職の自分だけが残ります。
つまり、介護が終わると、収入源が絶たれることが想定されます。親の介護を行う介護者は、中高年の方が多いので、介護が終わって再就職しようとしても、離職前の給料を確保できる就職先を見つけることは難しそうです。次に、その再就職の現状について見てみましょう。
■再就職の現状
2017年に行った総務省の調査結果によれば、介護離職をした人のうち、再就職できたのは30.2%にとどまるそうです。
たとえ、仕事は見つかったとしても正社員に転職できたのは、男性は3人に1人、女性は5人に1人で、転職後の平均年収は、男性で4割、女性で5割ダウンしています。つまり、介護離職をすると経済的に苦しくなり、行き詰まってしまうケースが多いのです。
したがって、今の会社を辞めることなく、介護を支える制度を活用しながら、介護を乗り切ることが、とても大事なのです。
参考:総務省 介護施策に関する行政評価・監視 結果報告書 仕事と介護の両立に関する家族介護者等の認識(介護離職に関する意識等調査の結果)
参考:明治安田生活福祉研究所 2014年「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査
介護離職をしないために活用できる制度とは
■介護休業制度
原則として「要介護状態」の家族を介護する会社員などは、育児・介護休業法に基づき、「介護休業」を取得することができます。
対象となる家族は、「配偶者(内縁含む)」「父母」「子」「配偶者の父母」や、「祖父母」「兄弟姉妹」「孫」です。対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに3回を上限として、通算93日まで休業することができます。
介護休業は通算で93日ですが、その期間を「自分が介護を行う期間」ととらえるのではなく、「今後、仕事と介護を両立するために体制を整えるための期間」と考え、介護離職をしないですむようにしたいものです。
■介護給付制度の活用
上記介護休業を取得した、雇用保険の被保険者(65歳未満の一般被保険者、65歳以上の高年齢被保険者)は原則、「介護休業給付金」を受給できます。
給付額は原則として、休業開始前の給与水準の67%です。ただし、休業中に給与(介護休業の期間を対象とする分)が支払われた場合、給付金は減額・または不支給となる場合もありますので、介護休業制度を活用する際には、詳細条件も合わせて確認しましょう。
■介護休暇・深夜業の制限など
介護休業制度や、介護給付制度とは別に、介護休暇制度や勤務時間の短縮、法定労働時間外労働の制限、深夜労働の制限など、介護を支える法制度もあります。会社の上司や人事・労務などの部署とよく相談して、活用できる制度は活用するようにしましょう。
なお、上記の制度だけでなく、介護保険のサービスもあります。地域包括支援センター(高齢者の生活を支えるための総合機関として各市町村が設置)や、ケアマネジャー(介護支援専門員)などへ相談することもできます。
介護離職して、経済的にも、精神的にも、肉体的にも追い込まれることがないようにしたいものです。
出典:総務省 平成 29 年就業構造基本調査結果要約
総務省 介護施策に関する行政評価・監視-高齢者を介護する家族介護者の負担軽減対策を中心として-<結果に基づく勧告>結果報告書
明治安田生活福祉研究所 2014年「仕事と介護離職」に関する調査
Text:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー