更新日: 2019.01.10 セカンドライフ

人生100年時代だから考える理想とされてきたスタイルとこれからのスタイルの違い

人生100年時代だから考える理想とされてきたスタイルとこれからのスタイルの違い
住まいに求める価値観は多様性に富んでいます。昨今の時代変遷のスピードを考慮すると、よりいっそう真剣に考えるべき課題だと言えます。
 
住まいに関する問題は、主に30代からリタイアメント世代まで、人生の最後まで付きまといます。持ち家がある場合は、相続という難しい問題も考えておかなければなりません。
 
相続にからむ事例として、「空き家」の問題も今後の大きな課題です。日本社会の高齢化により、「空き家」は増加傾向にあります。後述するように、持ち家の賃貸化が進むと、住宅市場全体では借りる側により有利な状況になっていきます。
 
持ち家と賃貸のどちらがいいかを比べる際には、かかるコストを判断基準として取り上げることが多いようです。
 
しかし、実際にシミュレーションしてみると、持ち家も賃貸も総支出金額に大差がないという結果が多く、最終的には持ち家に対する価値観が判断基準となります。
 
内宮慶之

Text:内宮慶之(うちみや よしゆき)

内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング

CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング技能士1級
会計事務所では、税務会計コンサルティングの他、資産税や相続事業承継の経験も豊富。

現在、相続及びライフプラン全般における相談業務、講演、執筆、非常勤講師などの業務を中心に活動している。高等学校での講演も多く金融経済教育にも尽力している。

平成30年度日本FP協会『くらしとお金の相談室』相談員、大阪市立住まい情報センター専門家相談員、修学支援アドバイザー(大阪府教育委員会)にも就任している。

持ち家VS賃貸

図表は一般的な持ち家と賃貸のメリットを比較したものです。
 
住宅の価値というのは不確定要素が満載で、時代の変遷にともなう価値観の変化や、2020年問題、東京オリンピック後の住宅価格の変動、最近では2025年大阪万博の誘致成功などによる経済効果の影響など、社会情勢に左右されがちです。
 

 

多様化する居住スタイル

《理想とされてきた購入スタイル》
30代で新築物件を購入し、定年までに住宅ローンの完済を目指すプランが、住宅購入に関する相談のなかで最も事例の多いライフプランです。
 
教育資金との兼ね合いが難しいところで、定年まで安定した収入が約束されていればさほど問題はありませんが、終身雇用制度は幻想と化しているのが現状です。効率的な資産運用を考えていかなければ、実現が難しくなっているプランでもあります。
 
《フレキシブルスタイル1》
40代で中古物件をリノベーションして購入するスタイルです。教育資金などとの兼ね合いを考えて住宅を購入するスタイルですが、比較的リタイアメントが近い年代なので、出口戦略も考えている方が多いように感じます。
 
いわゆる老後の住まい方などで、住宅にかける資金をある程度節約することによってライフプランを柔軟に考えられるのが利点です。
 
《フレキシブルスタイル2》
最近では、60代の方々の住宅購入に関する相談件数も増えてきています。ある程度の年齢までは、生活スタイルに合わせて自由に住み替えができる賃貸住宅のメリットを最大限に活かし、その後、老後を過ごす「終の棲家」を購入するスタイルです。
 
現金で購入する方が多いと感じますが、ほとんどの金融機関で80歳の誕生日までに完済する住宅ローンを設定することが可能です。
 
《生涯賃貸を選択》
生涯を通じて賃貸住宅を選択するスタイルです。生活スタイルに応じて自由に住み替えが可能で、住宅ローンという大きな負債を背負う必要がないのも大きなメリットです。また、生活に応じた住宅規模のアップダウンも可能です。
 
人口の減少や高齢化などにより「空き家」が増加すると、需給バランスにより賃貸住宅は借り手が優位な状況、つまり貸し手は「借りていただく立場」になります。借り手側が希望する物件を、より借りやすい状況へと推移するという予測もあります。
 
自然災害などのリスクを持ち家ほど気にする必要のない賃貸住宅には、利点が多いと感じます。
 

 
《キャッシュフロー表作成の薦め》
住宅購入に際しキャッシュフロー表を作成することで、80歳くらいまでをシミュレーションし、不安要素を可視化することが可能です。巨額ローンを目前にして、「教育資金」「住宅資金」「老後の漠然とした不安」などを整理することができます。
 
住宅購入のご相談を受けていて感じることですが、日本人男性の一般的な住宅観は“いつかは新築一戸建て”のようです。これは戦後の経済成長期に形成されたそうで、その当時の家族構成や社会的な背景が大きく影響していたと考えられています。
 
時代が大きく変遷し、変化のスピードも比較できないほど早くなっています。住宅の購入については、最終的にそのご家族の持ち家に対する価値観が判断基準となっているようですが、新築住宅を購入した喜びは5年程度で薄らいでしまうという研究結果もあるようです。
 
人生100年時代、より幸せを感じられるよう、フレキシブルな独自のライフプランを考えてみてはいかがでしょうか。
 
Text:内宮 慶之(うちみや よしゆき)
内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング
 

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