更新日: 2019.01.07 セカンドライフ
超高齢化社会の課題!「幸せ」と「景気回復」を叶える切り札とは?
このランキングは世界156カ国で、約1000人の国民を対象に「所得」「健康と寿命」「社会支援」「自由」「信頼」「寛容さ」などの要素を基準に調査を行い、その結果に基づき作成されたものです。
その中でも、今回は「健康と寿命」に着目してみたいと思います。人生100年時代による「長生きリスク」が取りざたされるなか、国が私たちの「健康寿命延伸」に向けて動きはじめています。健康の維持だけでなく、景気も明るくすると言われるこの取り組みについて、確認してみましょう。
Text:村田良一(むらた りょういち)
CFP(ファイナンシャル・プランナー)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産鑑定士、中小企業診断士
(同)村田鑑定評価・経営研究所 代表社員
慶應義塾大学経済学部卒業後、大手総合商社へ入社し、管理部門(経営企画)の他、3つの営業部門(不動産、金融、ICT)で関係会社へ出向し、事業責任者として住宅事業、FP事業などの立上げを経験。2011年に英国赴任から帰国し、海外エンジニアリング企業や国内最大手ITベンダーと合弁を設立し、国内外でのスマートシティ事業企画なども担当。個人の「ライフ・シフト」を通じて「健幸長寿社会実現に貢献」すべく、2017年に独立し、合同会社を設立。また、国立大学発ベンチャーや士業ネットワーク会社の役員も兼務する。
https://www.mica.solutions/
日銀を悩ませる正体は「健康不安」!?
2013年4月以来、黒田日銀総裁はCPI(消費者物価指数)を2%程度上昇させることを目標に、マイナス金利政策などの異次元緩和を続けています。しかし、5年強経った今でもゴールは見えません。
いくらおカネを市場へ供給しても物価が上がらないという金融政策の限界については、「デフレの正体-経済は『人口の波』で動く」(藻谷浩介著)の中で指摘されています。1996年を境に生産年齢人口(15~64歳)の減少が始まり、不動産や耐久消費財などの内需が縮小し続けるため、従来型政策では効果が出ないとのことです。
また、2016年末で3350兆円を超える国富(正味資産)のうち、8割近くとなる2574兆円は家計部門が保有しています。その大半が、60歳以上の世代に偏在することも課題です。※1
なぜなら、この世代の6割は「病気・介護の備え」を貯蓄目的としており、ほとんどが退蔵されてしまうためです。※2
「健康寿命延伸」に向けた取り組み
さらに最近では人生100年時代が言い立てられ、病気・介護に伴うQOL(生活の質)の低下や、生活費負担増といった「長生きリスク」も意識されるようになりました。結果として、財布の紐は締まるばかり。
そこで、本人も景気も明るくする積極策「健康寿命延伸」についてご紹介してみたいと思います。
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことです。平成28年の健康寿命と平均寿命の間には、男性で約9年、女性で約12年の差があります。もし、この開差を縮めることができれば、不安に駆られた貯金や、社会保障負担増による国民皆保険制度破綻リスクを抑えることができます。
そのため、官民挙げて先導的な取り組みが試行されています。特に「運動」、「食事」、「社会参加」の3つを連携させることで、科学的データに基づく高い延伸効果を示せるようになりました。例えば平成29年国土交通省公表ガイドラインでは、「歩行による医療費抑制効果」として1日一歩当たり最大0.061円になることが紹介されています。
ここで、注目すべきはスマホ、活動量計、体組計などを連携させたIoT技術の活用です。今後、このような技術の活用はますます普及することが予想されます。
1.健康増進型生命保険
- 疾病リスク自体を低減させるために、歩行やスポーツジム利用、人間ドック・検診受診率向上を図り、保険料自体を変動させる民間保険。主な商品は以下の通りです。
・東京海上日動あんしん生命保険「あるく保険」
・住友生命保険「Vitality」
・アフラック「健康応援医療保険」
・第一生命「ジャスト」
2.健康ポイント事業
- 国民の3割がジム通いやジョギングに励む、健康志向層です。残り7割の無関心層に焦点を当て、まずはインセンティブにより活動参加を促し、科学的に効果を実感してもらった後に自発的継続に繋げることを意図した自治体による歩行奨励事業。
2015年頃から全国の都道府県で実施されているため、居住地市町村HPで確認されることをおすすめします。
参考資料
※1 平成30年1月17日内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部
※2 内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」
Text:村田 良一