更新日: 2019.01.10 セカンドライフ

あなたは70歳まで働きたいですか?60歳で仕事を辞めたら家計がどうなるかシミュレーションしてみた

執筆者 : 木田美智子

あなたは70歳まで働きたいですか?60歳で仕事を辞めたら家計がどうなるかシミュレーションしてみた
未来投資会議の中で、「70歳までの雇用の促進」について議論され話題になりました。
 
現在すでに65歳以上の方が27.7%を占め、平均寿命も年々長くなり、人生100年時代がやってくると言われるようになってきました。
 
そして、亡くなる方の人数より、生まれてくる赤ちゃんの人数が少ないので、人口が減っていきます。
 
老後に頼りにしている年金は、働く世代の給与から引かれた掛金が、今の年金受給者の支給に回っていく賦課方式となっているのはご存じでしたか?
 
人口減少と長寿の時代を思い浮かべてみるとやはり、経済的なことも早くから考え行動する時期がきているのではないでしょうか。
 
さまざまな議論がなされていますが、あなたは70歳まで働きたいですか? 
 
老後は、多様な選択ができるように変化していくことが考えられます。
 
働き方でどんな影響が家計にあるのでしょう。平均的なご家庭を参考にシミュレーションしてみました。
 
今から心の準備と未来資金の準備が必要かもしれません。ご一緒に考えてみませんか。
 
木田美智子

Text:木田美智子(きだ みちこ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
確定拠出年金相談ねっと認定FP、DCアドバイザー、証券外務員内部管理責任者、相続士、金融知力インストラクター、FP未来への扉(幹事)、SANWA DCサポート代表。

60歳で仕事を辞めたとき収入はゼロに

会社員の康夫さん(52歳)は仕事を辞めたあと、自由な時間を楽しみたいと考えています。
 
妻にもその話はしていますが、収入面の不安は残ります。
 
夫の意志は固く、再雇用の道があっても退職したいと考えています。
 
読者の皆さんの中にも、そう考えて計画を立てていらっしゃる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 
60歳で仕事を辞めた時、今の制度では年金を受け取れるのが65歳からとなります。
 
60歳から65歳の間は不動産収入や配当金など他の収入がない場合には支出のみになります。
 
使い方は人それぞれ異なりますが、基準がわかると考えやすくなりますので、ここでは生命保険文化センターの2人以上世帯の生活費で支出を計算してみます。
 
働く2人以上世帯の平均生活費は31万円です。
 
60歳から69歳までは29万円、70歳代からは26万円となっています。
 
60歳から29万円で5年間生活すると1740万円の支出となります。
 
そのほかにもお子様が学生の場合には教育費もかかりますし、趣味に係る費用もプラスされます。
 
ご家庭により費用は異なりますので、ご自身のご家庭の費用で加算してみていただくと具体的になります。
 
65歳まで毎月20万円の給与収入があった場合では、不足金額は月に9万円となり、5年間では540万円のマイナスです。
 
年金のない時期に働かないということは、貯蓄残高を大きく減らすことがおわかりいただけるでしょう。
 
仕事をしないことを選びたいなら、30代、40代のころからこの資金準備を始めておく必要があります。
 
1740万円を貯めるには、毎月7万2500円を積立て20年間掛かります。14万5000円なら10年間で準備が必要です。
 
これは生活費の部分だけなので、60歳で仕事を辞めるための資金準備ができてこそ、自由に趣味を楽しむことができるのではないでしょうか?
 

65歳からの5年間を働いたら、家計にゆとりが!

働く時間を減らして毎月15万円で5年間働いた場合で考えてみましょう。
 
その時には年金支給も始まります。
 
15万円なら厚労省のモデルケースで考えると、毎月年金が23万円(会社員の夫と専業主婦の妻のケース)ありますから、毎月9万円のプラスになり、5年間では540万円プラスになる計算です。趣味を楽しむための資金にもなりそうです。
 
さらに、健康のために75歳まで5年間続けて、毎月15万円で仕事を続けてみたらどうでしょうか? 
 
その時の生活費の平均は26万円に対して12万円のプラスとなり5年間では、720万円のプラスになっている計算です。
 
心のゆとりと経済のゆとりが生まれます。社会とのかかわりが、脳を活性化させいつまでも若々しくしてくれる効果も期待できます。
 

厚生年金に加入して働いたら、一生涯の定期収入の増加に!

さらに年金のことを考えてみましょう。
 
厚生労働省のモデルでは、夫が会社員、妻が専業主婦となっています。
 
厚生年金に加入していた方は、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金が受けられます。
 
生年月日によって支給開始年齢が65歳へ引き上げされています。
 
男性と公務員は昭和36年4月2日以後生まれの人、公務員でない女性は、昭和41年4月2日以降生まれの人は65歳からとなります。
 
これは、現在のルールです。
 
将来的には、支給開始年齢の改正も検討されていますから、働き方を変えていくということも必要になってくるかもしれません。
 
60歳からでも厚生年金に加入して働いた場合、どれくらい年金額が増えるのかを簡易計算してみます。
 
60歳から月20万円で5年間働いた場合で、年金を年間約6万5000円増やすことができます。
 
65歳から70歳まで5年間を月15万円で働いた場合、年間約5万円の年金を増やすことができます。
 
60歳から70歳まで合計すると10万5000円の年金を、働いて収入を得たことによって、一生涯受け取れるものができることになるのです。
 
30年間受け取ったら315万円にもなりますから、一生涯受け取れる安心感につながるのではないでしょうか?
 
経済面のことだけお伝えしてきましたが、生きがいと健康の面でも、人との関わりが、あなたを元気にし、生き生きと長寿を楽しむことにつながるのではないかと感じます。
 
60歳からは体力もだんだん落ちていきます。
 
現役で頑張っている今をずっと続けるのは難しいと考える方もいらっしゃるでしょう。
 
無理をしないで、楽しみながら続けることができたらよいですね。
 
ご夫婦で働いたり、転職してやってみたかった事を実現したりと、これからは、様々な選択ができそうです。
 
今から、あなたの未来の姿を思い描いてみてはいかがでしょうか。
 
Text:木田美智子(きだ みちこ)
CFP(R)認定者