更新日: 2019.01.10 介護

介護サービスを利用した時の自己負担が2割・3割の人は、サービスを減らすしかないのか

執筆者 : 新美昌也

介護サービスを利用した時の自己負担が2割・3割の人は、サービスを減らすしかないのか
65歳以上の方が、介護保険サービスを利用した時の自己負担は原則1割ですが、一定の所得がある人の自己負担は2割または3割になります。
 
これらの方は、「サービスを減らすしかない」と諦めなければならないのでしょうか。
 
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

高所得者でも2割、3割の負担は重い

居宅サービスを利用する場合、要介護度に応じた利用限度額が設けられています。1単位10円で計算した場合の利用限度額は、要支援1は5万30円、要支援2は10万4730円、要介護1は16万6920円、要介護2は19万6160円、要介護3は26万9310円、要介護4は30万8060円、要介護5は36万650円となっています。この限度額を超えて利用した場合、超えた分は全額自己負担になります。
 
また、この限度額には、特定福祉用具購入、居宅介護住宅改修費、居宅療養管理指導、施設に入所して利用するサービスは含まれていません。
 
2割負担になる方は、同一世帯に65歳以上の方が1人の場合、年金収入等が280万円以上、2人以上いる場合は合計346万円以上の方です。3割負担になるのは2割負担の方のうち、1人の場合340万円以上、2人以上の場合は合計463万円以上の方です。
 
要介護3の方の場合、自己負担の限度額は1割負担の方であれば2万6931円(年間約32万3千円)ですが、2割負担では5万3862円(年間約64万6千円)、3割負担では8万793円(年間約97万円)となります。
 
収入がある方でも介護にかけられるお金は限られます。3割負担に該当する収入の方でも介護サービスを利用限度額まで利用するのは厳しいのではないでしょうか。そうすると、サービスの利用を控えるしかないのでしょうか。対応策をお伝えします。
 

高額介護(介護予防)サービス費

同一月内に利用した介護サービスの自己負担限度額が高額になり、一定額を超えたときには、申請により、超えた分が後から支給されます。3割負担の方でも要介護度に関わらず、月額4万4400円を超えて自己負担をすることはありません。なお、一度申請をされると、それ以後の申請は不要となります。
 
同じ世帯内に複数のサービス利用者がいる場合には、世帯の合計自己負担額が基準になります。対象となる方には市区町村から、サービス利用月よりおおむね2~3か月後にお知らせがきますので、忘れずに申請しましょう。自ら申請するのが難しい方は、家族が代りに申請しましょう。したがって、家族もこの制度のことを知っておくことが重要です。
 
なお、特養などの施設サービスでの食費・居住費・日常生活費など、介護保険給付対象外のサービスの自己負担は対象外です。市民税世帯非課税の方については、施設サービス等の居住費(滞在費)・食費については負担を軽減する制度があります。
 

高額医療・高額介護(介護予防)合算制度

高齢者は介護費の他、医療費の負担も重くなります。介護保険には「高額介護サービス費」、医療保険には「高額療養費」という費用の負担軽減のしくみがあります。さらに、両者の自己負担を合わせて、毎年8月から翌年7月までの1年間に支払われた額が、一定の限度額を超えた場合には、超えた分を後から支給する高額医療・高額介護(介護予防)合算制度があります。
 
対象となる方には、加入している医療保険の保険者や後期高齢者医療広域連合からお知らせが届く場合があります。忘れずに申請しましょう。ただし、同じ世帯でも、家族がそれぞれ異なる医療保険に加入している場合は合算できませんので注意しましょう。
 
例えば、夫が「後期高齢者医療制度」、妻が「国民健康保険制度」に加入している場合は、医療制度が異なるので、夫婦でも合算できません。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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