更新日: 2019.01.11 定年・退職

「定年後のお金」に学ぶ (1) “おひとりさま”のお金の準備のやり方・注意点

「定年後のお金」に学ぶ (1) “おひとりさま”のお金の準備のやり方・注意点
晩婚化が進み、生涯独身の人も増えています。国勢調査によると、一番多い世帯は単身世帯で、全体の35%を占めているというデータが出ています。予想通り高齢者の単身世帯も多いのですが、標準とされてきた4人家族の世帯も減りつつあります。
 
ただ、お金の話を語る時は、今でも標準世帯が中心で、これでは“おひとりさま”はイメージがしづらく、不安が募るのではないでしょうか。 ここでは、“おひとりさま”のお金の準備について、具体的に考察してみたいと思います。
 
宮﨑真紀子

Text:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

「老後に必要な資金は3000万円」のインパクトの大きさ

一般的なモデル世帯とされてきたのは、夫婦+子ども2人の4人家族。その後、子どもは独立します。老後に受け取る年金の説明などは、「会社員だった夫と専業主婦の妻」が想定されているケースがほとんどです。
 
先日、Sさん(独身女性 46歳)から「老後資金は3000万円必要と聞きました。これまで、あまり貯金をしていません。友人から『このままだと、老後破産するよ』って言われました。どうしたら良いですか?」という相談を受けました。彼女にとっては3000万円という数字が強烈な印象だったようです。
 
3000万円は、夫婦2人で老後に必要な資金を算出したものです。内容を知るために、計算の内訳をみてみます。
 
まず1年間の収支を計算します。
 
(22.1-34.9)×12か月≒-154万円厚生労働省による標準的な年金額 22.1万円(月額)生命保険文化センターによる ゆとりある老後の生活費 34.9万円(月額)
 
人生85年として、65歳から85歳までの20年間で計算すると154×20=3080万円
(この試算はあくまで一例です。老後資金を算出する方法は複数あります)
 

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「目標代替率」で試算してみる

「そんなの、人それぞれ違うでしょう」という意見もあり、3000万円には賛否があります。上記と同様の方法で“おひとりさま”の老後資金を計算することも一案ですが、今回は別の計算方法で試算したいと思います。
 
「人それぞれの『お金の使い方』」と聞くと、私は過去にご相談にいらした方を思い出します。いずれも現役時代収入が比較的多かった方で、残念ながら老後資金が準備できていませんでした。
 
リタイア後は年金に頼る生活になりました。お給料>年金ですので、老後の蓄えが少ないのなら支出の見直しが必要です。これが上手く出来ず、毎月の収支は赤字がかさみました。最終的にはカードローンに頼る生活になった残念な例です。
 
このように長年の「お金の使い方」は習慣化していますので、簡単には変えられないのです。
 
これを鑑みて、このテーマを詳しく掘り下げている「定年後のお金(野尻哲史 著)」を参考に、ここに登場する「目標代替率」という考え方を取り入れて試算してみます。
 
「目標代替率」は退職直前の年収を前提に、老後の生活資金はその何パーセントになるかという分析です。収入に応じた生活は習慣化していますので、より実際に近い試算ができるはずです。平均値では約68%ですが、より詳細な数値で試算します。
 
Sさんの退職直前の年収を360万円だと仮定し、本書の目標代替率のデータ74%を引用します。これに先の期間20年で計算してみます。
 
360万円×74%×20年=5,328万円Sさんの受取る年金を年額160万円と仮定すると160万円×20年間=3,200万円
 
5,328-3,200=2,128万円 この金額が不足する金額になります。
 
結果、65歳の時点で不足金額2,128万円を準備することが、当面の目標といえそうです。ただし、注意すべき点が2つあります。
 
(1) 今回は85歳までの20年間の試算です。「人生100年」が流行語になるくらい、寿命は延びています。老後資金を上積みするだけでなく、できるだけ長く働くなどの解決策も視野に入れる必要があります。
 
(2) 将来、年金の支給年齢が引き上げられる可能性があります。
 
Sさんの場合は、65歳まで15年以上の期間があります。この期間に生活を見直し、貯蓄を増やす努力に切り替えることは可能です。老後の必要額を知ることで、老後資金の準備を始める気持ちが固まったようでした。
 
*参考文献:野尻哲史 著『定年後のお金』(講談社+α新書)
 
Text:宮﨑 真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士

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