更新日: 2019.01.11 定年・退職
ミドルのあなたの給与が下がるのは、実は遠い時代の話ではない~「役職定年」という不思議の崖
しかしもうひとつ。ミドル世代に切実なのは、「生活費の補てん」ではないでしょうか?
「自分は大企業に勤めていて、まだまだ定年まだ時間があるし、定年自体も60歳から65歳に延長されそうだ」と言われるかもしれません。しかし、「役職定年」がそんなに遠くないということを意識した方がいいのではないでしょうか? つまり、ある日突然給与が下がるのです。
Text:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。
ほぼ半数の企業では「役職定年」あり
厚生労働省の調べによると(※1)、役職者の定年制(停職制)についての制度が「あり」とする企業が47.7%とのことです。つまり、約半分の会社で役職定年制度があるわけです。役職定年制度が「あり」とする104社についてみると、「規定がある」(78.8%)、「慣行による運用がある(規定がない)」(21.2%)となっています。これは平成21年と少し古いデータですが信頼できそうなので取り上げます。
役職定年になった人はその後どうなるのでしょうか? 上記の調査では「定年年齢まで在勤」 (制度のある104社の91.3%)がほとんどで、すぐクビになるわけではありません。「在籍出向」14.4%、「関連企業への移籍出向(退職の場合も含む)」同15.4%となっています。元の会社にいられなくなる場合も少なくないのです。
では、「定年年齢まで在勤」 (95社)の場合給与はどうなっているのでしょう? ここは大事なところなので引用します。
『「役職に関連する手当額を減額」48社(集計95社の50.5%)と最も多く、次いで「別の賃金体系に移行し、基本給を減額」28社(同29.5%)などとなっており、「役職在任時の賃金水準を維持」する企業は15社(同15.8%)となっている(複数回答)』(※1)
つまり、約8割の会社は役職定年とともに給与を減額するのですね。
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50代前半で「役職定年」になり給与減額も?
それではどんな具合に減額されるのでしょうか? これも少し古いデータですが、人事院の「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」(平成19年)から“課長級の役職定年年齢別、年収水準別企業数割合”を見てみます。
・役職定年年齢 50歳未満 「下がる」(100%)
・同 50歳 「下がる」(93.1%)
・同 51歳 「下がる」(100%)
・同 52歳 「下がる」(73.3%)
・同 53歳 「下がる」(84.9%)
・同 54歳 「下がる」(95.1%)
・同 55歳 「下がる」(91.5%)
つまり50代前半(下手をすると40代)で役職定年を命ぜられ、実際に収入が下がった割合がこんなにあるのです。
「どれだけ下がるのか?」の公的資料はなかなか見当たりませんが、報道や、筆者が幹事をしているシニア世代の勉強会では、「役職定年で給与は3割下がる」という声が多いようです。仮に50万円だった給与は35万円になるのでしょうか。しかも、50代というと、子どもの教育費や親の介護など、いろいろ物入りなことが多い世代です。
ミドル、シニア世代こそ副業で月々の生活費の補てんを
定年後も見据えて、「生活費の補てん」として副業を検討してはいかがでしょう? 副業で来るべき「役職定年」での収入減を、少しでも緩和したいものです。
副業といっても、配達に汗を流したり、お店で料理を運んだりするだけが副業ではありません(もちろんそういう仕事もたくさん引き合いはあるはずです)。
自分の会社員としての経験や知識・知見を時間単位で販売する(要は短時間コンサルティング)副業や、ITや財務、法務などの知見を生かしたライティングなどいろいろな副業がネット経由で募集されています。空き家や空き駐車場などはシェアリングサービスで人に貸し出して副収入にできます。それらを合計して、月5万円程度稼ぐことを目指したいものです。
そして、副業の中で稼げそうなもの、自分に向いたものがあれば、定年後の仕事として計画しておくといいのではないでしょうか。
※1 厚生労働省「平成21年賃金事情等総合調査(退職金、年金及び定年制事情調査)」
※2 人事院「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」
Text:藤木 俊明(ふじき としあき)
副業評論家