更新日: 2019.01.10 介護

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症? 介護の主な原因でもある認知症。その重症化予防に役立つ保険とは

2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症? 介護の主な原因でもある認知症。その重症化予防に役立つ保険とは
団塊の世代が75歳になる2025年を見据えて介護財政を破綻させないため、ここ数年、給付の制限や保険料の値上げ、65歳以上で所得の多い方の利用者負担を増やすなど改正が相次いでいます。
 
このような公的介護保険サービスの縮小化や利用者負担の増大を背景に、予防を重視した新たな認知症保険、民間介護保険が登場してきています。
 
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

介護保険の実施状況

厚生労働省「平成28年度介護保険事業状況報告年報)」によると、平成28年度末現在、第1号被保険者(65歳以上)のいる世帯は2,426万世帯で、第1号被保険者数は3,440万人となっています。
 
要介護(要支援)認定者数は632万人となっています。うち、第1号被保険者(65歳以上)は619万人(男性189万人、女性429万人)、第2号被保険者(40歳~64歳)は13万人(男性7万人、女性6万人)となっています。
 
認定者を要介護(要支援)状態区分別にみると、要支援1:89万人(14.1%)、要支援2:87万人(13.7%)、要介護1:126万人(19.9%)、要介護2:110万人(17.4%)、要介護3:83万人(13.2%)、要介護4:76万人(12.1%)、要介護5:60万人(9.5%)となっています。
 
サービス受給者数(1か月平均)は560万人となっています。うち、居宅サービスは391万人、地域密着型サービスは77万人、施設サービスは92万人となっています。
 
給付費(利用者負担を除いた額)は9兆2,290億円となっています。なお、給付費には、高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費を含みます。
 
介護保険がスタートした平成12年度と比較すると、第1号被保険者数は「約1.5倍」に、要介護(要支援)認定者数は「約2.5倍」に、サービス受給者数は「約3倍」に増加しています。サービス受給者数では居宅サービスの受給者数の増加が著しくなっています。
 
保険会社にとって魅力的なマーケットです。
 

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MCI(軽度認知障害)を保障する認知症保険

厚生労働省によると団塊の世代が75歳になる2025年には、認知症の方は730万人になると予測されています。これは、65歳以上の約5人に1人が認知症になる計算になります。介護が必要となった主な原因の第1位が認知症であり、要介護者の24.8%を占めます(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」)。
 
この調査で、認知症が初めて第1位になりました。認知症徘徊の列車事故訴訟で家族に損害賠償責任を認めた名古屋地裁、一部責任を認めた名古屋高裁の判決は社会問題になりました(最高裁では損害賠償責任否定)。
 
このように、認知症が社会問題として認識されてきており、損保では新型「個人賠償特約」など、生保では認知症の方の介護にかかる経済的負担を軽減するため、2016年から太陽生命や朝日生命などが認知症に特化した保険を発売しています。
 
2018年10月からは、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命が、認知症になる前のMCI(軽度認知障害)を保障する健康応援型商品「リンククロス笑顔を守る認知症保険」を発売しました。ポイントを説明します。
 
MCI(軽度認知障害)は健常者と認知症の中間、つまり、多少の物忘れはあるものの、日常生活にはほとんど支障のない状態をいいます。MCI(軽度認知障害)の段階で適切な予防対策を行うことにより、回復したり、認知症を遅らせたりすることができます。この点に着目してこの認知症保険は開発されました。
 
保険の加入者には、MCI(軽度認知障害)を早期に気づいてもらうために「認知症サポートSOMPO笑顔倶楽部」が提供する「認知機能低下の予兆を把握するチェックサービス」などを、インターネットを通じて利用できるように工夫されています。
 
この認知症保険の基本プランは、主契約が「払込期間中無解約返戻金限定告知骨折治療保険」、特約が「限定告知認知症一時金特約」となっています。主契約は骨折の治療や不慮の事故等による死亡を保障します。特約はMCI(軽度認知障害)や認知症を一時金で保障します。
 
例えば、「認知症一時金(基準一時金額)」が500万円の場合、軽度認知障害一時金は500万円×5%の25万円になります。その後、認知症と診断確定された場合、認知症一時金は500万円−25万円=475万円となります。つまり、軽度認知障害一時金は認知症一時金(基準一時金額)の前払いということになります。
 
当該特約の保障開始は、主契約の責任開始日からその日を含めて181日です。また、申込み時には「ご家族連絡先登録制度」の登録と「指定代理請求特約」の付加が必須となっています。
 

認知症予防保険

太陽生命は2018年10月から認知症の予防、早期治療に対応した保障内容の「ひまわり認知症予防保険」を発売しました。ポイントを説明します。
 
この保険は、契約の1年後から2年ごとに「予防給付金」を受け取れますので、有料の認知症予防サービスなどに利用できます。同社が紹介する認知症予防サービスは、少量の血液でMCIのリスクを判定する「MCIスクリーニング検査」があります。ドイツ発祥の運動療法「クアオルト健康ウォーキング」の体験ツアーにも参加できます。
 
その他、認知症予防アプリの利用や認知症関連施設の紹介を受けることができます。
 
また、認知症と診断された場合には、最高100万円の認知症診断保険金を受け取ることができます。さらに、所定の状態が180日継続した場合に最高300万円を受け取れる保障を付加することも可能です。なお、契約後1年間は、保険金額が50%削減されます(災害死亡保険金を除く)。
 

要支援2から保障する介護保険

朝日生命は、2018年10月から公的介護保険制度の要支援2以上と認定されたときに一時金を支払う「要支援保険」(5年ごと利差配当付軽度介護定期保険・5年ごと利差配当付軽度介護終身保険(低解約返戻金型))を発売しました。ポイントを説明します。
 
要介護度は要支援1・2、要介護1~5の7区分あり、要支援2は2番目に軽い要介護度になります。要支援2は「日常生活の一部について支援が必要だが、適切な予防サービスの利用によって要介護状態にいたらず、改善できる可能性が高い状態」といえます。
 
「要支援保険」では、公的介護保険制度の要支援2以上で軽度介護保険金が支払われます。軽度介護保険金と同額の死亡保険金・高度障害保険金も保障されています。ただし、軽度介護保険金、死亡保険金、高度障害保険金のいずれかが支払われた場合、契約は消滅します。不慮の事故による身体障害状態のとき、以後の保険料の払い込みが免除されます。
 
高齢化の進展により要支援・要介護認定者や認知症の人数は、今後も増加が予想されます。
「リンククロス笑顔を守る認知症保険」「ひまわり認知症予防保険」「要支援保険」は認知症や要介護の重症化予防に積極的に取り組んでもらうことをコンセプトにした商品といえます。
 
なお、ご案内した商品を推奨するものではありませんのでご留意ください。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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