更新日: 2023.03.16 定年・退職
退職時は「税金」に要注意!? 退職翌年の負担を見据えて準備しよう!
この記事では、退職後の退職金や保険・年金について解説します。会社を退職する機会はそれほど多くないかもしれませんが、正しい知識を持って臨みましょう。
執筆者:古市守()
退職金にかかる所得税と住民税
退職金には所得税と住民税がかかります。勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると手続きが簡単です。退職金にかかる退職所得は、勤続年数によって控除額が決まるので、計算式を確認しておきましょう。
退職所得=(源泉徴収される前の収入金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額は勤続年数によって決まります。
・勤続年数が20年以下の場合
40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
・勤続年数が20年超の場合の退職所得控除額
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
なお、勤続年数の計算は端数を切り上げます。例えば、19年1ヶ月の場合は20年です。「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと確定申告が必要となるので面倒です。退職時には忘れずに提出しておきましょう。
また、退職した年の住民税の取り扱いは、退職月によって次のとおり異なります。
・1月1日~5月末までに退職した場合
退職金や退職月の給与から天引きされます。ただし、金額的に引き切れない場合は、自分で納付することになります。
・6月1日~12月末までに退職した場合
退職月の住民税は給与から天引きされますが、翌月以降の住民税は自分で納付します。ただし、会社に申請すれば残りすべての住民税を天引きしてくれることがあるので、問い合わせてみましょう。また、次の就職先が決まっていれば、転職先で天引きも可能です。
さらに、退職した翌年には、退職した年の給与所得にかかる住民税が請求されます。再就職していれば給与から天引き可能ですが、無職の場合は自分で納付しなければならないので気をつけましょう。
退職したら国民年金に加入
退職したら、原則60歳までは国民年金に加入しなければなりません。会社を退職して社会保険に加入しない場合は、14日以内に市区町村役場で国民年金への切り替え手続きをしましょう。
もし、退職や失業で国民年金の支払いが難しい場合は、免除申請や猶予制度を利用できます。国民年金への加入や免除などの詳細はお住まいの市区町村役場で教えてくれます。
なお、退職しても国民年金に加入しなくてもよい場合は次のとおりなので、確認しておきましょう。
・すぐに再就職して社会保険に加入する場合
・社会保険に加入している配偶者の扶養に入る場合
・60歳を超えている場合
国民健康保険に加入するか任意継続するか
会社を退職すると、健康保険制度に加入しなければなりません。退職後の選択は次のとおりです。
1.国民健康保険へ加入する
2.退職前の健康保険組合で任意継続を利用する
3.社会保険に加入している家族の扶養に入る
4.再就職先の社会保険へ加入する
国民健康保険料は1年前の所得金額によって計算されるので、保険料が多額になる場合があります。保険料は前年の所得を元に計算されるので、退職後に無職になっても金額には影響しないからです。
しかし、国民健康保険には減免制度があります。収入等の状況によって認められるかどうか変わるので、支払いが難しい場合はお住まいの市区町村役場で相談しましょう。
また、高額な国民健康保険の支払いを避けたい場合には、任意継続を利用する方法があります。退職前の給料が高かった人は任意継続にしたほうが安くなる可能性が高いです。国民健康保険料は市区町村役場で試算してくれるので、任意継続に必要な保険料と比べてみましょう。
任意継続は2年間加入できますが、1年目は任意継続の方が、2年目は国民健康保険に加入した方が保険料が安くなる場合があります。任意継続の2年目が始まる前にも、市区町村の窓口で試算してもらいましょう。
退職後のお金の知識が大切
退職金に対する所得税や住民税は「退職所得の受給に関する申告書」で精算されますが、次の支払いは残ります。
退職翌年の住民税
国民年金
国民健康保険料
住民税の支払資金をためておいたり任意継続に加入したりするなど、退職後に困らないようにあらかじめ準備しておきましょう。
出典
国税庁 退職金と税
日本年金機構 国民年保険料の免除制度・納付猶予制度
全国健康保険協会(協会けんぽ) 退職後の健康保険のご案内(任意継続)
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー