更新日: 2023.03.12 定年・退職

【退職金を受け取った翌年の税金】事前にできる対策は? 後からでも減らせる方法はある?

【退職金を受け取った翌年の税金】事前にできる対策は? 後からでも減らせる方法はある?
「退職金を受け取った翌年の税金が高くなる」といったことを耳にされたことはあるでしょうか。それを聞いて、不安になった方もいらっしゃると思います。
 
退職金には、税制上有利になる仕組みがあります。この仕組みを知らない場合、あるいは必要な手続きをしなかった場合、高額な税金が請求されることになります。
 
本記事では、退職金に係る税金と必要な手続き(=事前にできる対策)や、税金を納め過ぎてしまった場合の対処法(=後からでも減らせる方法)について解説します。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

退職金に係る税金

退職金には、「所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ)」「住民税」が課税されます。退職金に課税される所得税、住民税の金額は、以下のように計算します。
 
・所得税=(課税退職所得金額×税率-控除額)×1.021
・住民税=課税退職所得金額×10%

 
「課税退職所得金額」は、以下のように計算します。
 
・課税退職所得金額 =(退職手当額-退職所得控除額)× 1/2
 
なお、「退職所得控除額」は、以下の計算式によって算出します。
 
・勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数
・勤続年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

※勤続年数に1年未満の端数があるときは、1年として計算
 
このように、税金計算の基礎となる課税所得金額が小さくなることから、退職金は税制上優遇されているといえます。例えば、勤続35年で退職手当額が2500万円の場合、所得税、住民税は、以下のように計算します。

(1)課税退職所得金額の計算
課税退職所得金額=(2500万円-1850万円)× 1/2 =325万円
※退職所得控除額=800万円+70万円×(35年-20年)=1850万円
 
(2)所得税の計算
所得税=(325万円×10%-9万7500円)×1.021=23万2277円
 
(3)住民税の計算
住民税=325万円×10%=32万5000円

 

必要な手続き

前項のように税制優遇を受けるためには、退職金の支払いを受けるときまでに、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者(勤務先)に提出しておかなければなりません。この手続きをしておかないと、退職金の収入金額から一律20.42%の所得税が源泉徴収されます。
 
前述の(2)所得税の計算で算出した所得税額は、23万2277円でした。これは、申告書を提出した場合の所得税額です。一方、申告書を提出しなかった場合、所得税額は510万5000円(=2500万円×20.42%)となります。両者を比較すると、その差は487万2723円にもなります。
 
住民税については、勤務先が地方自治体に対し、「特別徴収納入書・申告書(自治体により名称が異なる場合があります)」を提出する必要があります。この申告書を提出すると、住民税は退職金から源泉徴収され、その年に納付されます。
 
申告書が提出されなかった場合、退職金に係る住民税は、翌年の住民税の計算に反映されます。このとき、その所得は退職所得ではなく給与所得として計算されているため、高額な住民税を課されることになります。
 

税金を納め過ぎてしまった場合の対処法

前項のような手続きをしなかったために所得税や住民税を納め過ぎてしまった場合、申告をすることにより還付を受けることができます。
 
所得税の場合、確定申告をすることにより、税金が還付されます。この手続きを「還付申告」といいます。確定申告は、通常、2月16日~3月15日に行う必要がありますが、還付申告については、2月15日以前でも行うことができます。
 
住民税の場合、自治体に対し還付請求を行うことで、税金の還付を受けられます。還付請求をする際に提出する用紙の名称は、自治体により異なりますので、詳しくは各自治体のホームページなどでご確認いただくとよいでしょう。
 

まとめ

退職金に係る税金は、所得税と住民税です。退職金には、税制上有利になる仕組みがあり、この仕組みを利用することで、納付する所得税や住民税を低く抑えることができます。
 
この仕組みを利用するためには、以下の手続きが必要になります。この手続きを怠ると、税金を納め過ぎてしまうことになります。

・所得税:「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出する
・住民税:「特別徴収納入書・申告書」を地方自治体に対し提出するよう、勤務先に促す

なお、税金を納め過ぎてしまった場合は、以下の手続きを行うことによって、税金の還付を受けることができます。

・所得税:確定申告(還付申告)
・住民税:還付請求

退職金には、慰労の意味もありますが、老後資金としての役割もあります。支払うべき税金が抑えられる仕組みがあるのも、このためです。高額な税金を請求されて慌てる前に、事前に必要な情報を集め、退職金を受け取る準備をしておきたいものです。
 

出典

金融広報中央委員会 知るぽると 8.退職金や年金にかかる税金
国税庁 退職金と税
国税庁 [手続名]退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)
人事院 1 退職手当制度の概要
国税庁 確定申告をすれば税金が戻る方
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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