更新日: 2023.02.28 その他老後

「老後資金計画」を考えています。「想定寿命」は何歳とすべきでしょうか?

「老後資金計画」を考えています。「想定寿命」は何歳とすべきでしょうか?
リタイアメントプランニング(老後資金計画)において重要な前提の一つに、自分(と配偶者)の寿命を何歳とするか、つまり何歳までの計画を立てるかといった「想定寿命の設定」があります。
 
想定寿命を短めに設定してしまうと、想定以上に長生きした場合、老後資金が足りなくなってしまうかもしれません。そのような事態を避けるためには想定寿命をどのくらいの長さに設定すれば安心なのでしょうか。
 
本記事では、最新の統計による寿命に関する各種指標を確認し、老後資金計画における想定寿命の考え方について解説します。

執筆者:二角貴博()

寿命に関するさまざまな指標

寿命に関してはさまざまな指標があります。それぞれの特徴を理解することで、老後資金計画における想定寿命の参考となる指標がわかります。
 

平均余命

厚生労働省は、人口・死亡数・出生数を基に「簡易生命表の概況」を毎年作成・公表しています。この簡易生命表で公表される平均余命とは、「ある年齢の人が、平均してあと何年生きられるかの期待値」のことです。
 
平均余命は、男女別・各年齢の人口と死亡数を基に計算されることから、男女別・各年齢の死亡状況(逆にいえば生存状況)を分析するうえで不可欠な指標です。2021年の平均余命をいくつか紹介しましょう。
 

●0歳の平均余命は男性81.47年、女性87.57年
●40歳の平均余命は男性42.40年(40歳の人の推定寿命は約82歳)、女性48.24年(同約88歳)
●50歳の平均余命は男性32.93年(約83歳)、女性38.61年(約89歳)
●60歳の平均余命は男性24.02年(約84歳)、女性29.28年(約89歳)
●90歳の平均余命は男性4.38年(約94歳)、女性5.74年(約96歳)
●105歳以上の平均余命は男性1.25年(約106歳)、女性1.64年(約107歳)

 

平均寿命

平均寿命とは「0歳の平均余命」のことです。つまり「生まれたばかりの赤ちゃんが、平均してあと何年生きられるかの期待値」です。平均寿命はすべての年齢の死亡状況を集約した値であるため、保健福祉水準を総合的に示す指標として広く活用されています。
 

●男性の平均寿命(0歳男性の平均余命)は81.47年
●女性の平均寿命(0歳女性の平均余命)は87.57年

 

健康寿命

健康寿命という指標もあります。これは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。平均寿命から「日常生活に制限のある期間の平均」を引いて計算され、3年ごとに公表されます。2021年12月に公表された2019年値が最新です。
 

●男性の健康寿命は72.68年
 (2019年の平均寿命81.41年-日常生活に制限のある期間の平均8.73年)
●女性の健康寿命は75.38年
 (2019年の平均寿命87.45年-日常生活に制限のある期間の平均12.06年)

 

特定の年齢まで生存する人の割合

簡易生命表の概況には「生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移」も記載されます。これを見ると、
 

●男性の3割弱、女性の半数は90歳まで生きている
●男性の1割、女性の3割弱は95歳まで生きている

 
ことが読み取れます。すでに女性は「ほぼ人生100年時代」といってよいのかもしれません。
 

寿命中位数

簡易生命表の概況には「寿命中位数と平均寿命の年次推移」も記載されます。寿命中位数とは「出生者のうち半数が生存すると期待される年数」のことです。これを見ると、
 

●男性は平均寿命81.47年に対し、寿命中位数84.39年
●女性は平均寿命87.57年に対し、寿命中位数90.42年

 
であり、男性の半数は約84歳まで、女性の半数は約90歳まで生きていることが読み取れます。
 

何歳で亡くなる人が最も多い?(最頻値)

簡易生命表において死亡数が最も多い年齢が「死亡年齢の最頻値」です。何歳で亡くなる人が最も多いのかを見るときに用いられます。
 

●男性の最頻値は88歳(ちなみに2位は89歳、3位は87歳)
●女性の最頻値は93歳(2位は94歳、3位は92歳)

 

老後資金計画における想定寿命の考え方

老後資金計画における想定寿命に向いているかどうかの視点から各指標をみると、以下のとおりです。
 

●平均寿命(男性81歳、女性88歳)は若い年齢で亡くなる人の影響を受けるため想定寿命とするには短すぎ、向いていません。
 
●平均余命は加齢に応じて変化する(推定寿命が延びていく)ため、こちらもあまり向いていません。
 
●寿命中位数(男性84歳、女性90歳)は参考の一つになります。ただし、自分が「寿命中位数よりも長生きする側」に入る可能性を考慮し、数年足して想定寿命とするべきでしょう。
 
●死亡年齢の最頻値(男性88歳、女性93歳)は、「何歳で亡くなる人が最も多いのか」を表しているため参考になります。とはいえ、こちらも数年足しておくべきでしょう(「数年」足すと、男性は90歳台となり、女性はほぼ100歳になります)。

 
いずれの指標においても日本人の寿命は長期にわたり延びる傾向です。今後もさらに延びていくと予想するのであれば、各種の最新統計は参考にとどめ、区切りよく「100歳」と想定する考え方もあります。
 

まとめ

平均余命、平均寿命、健康寿命、特定の年齢まで生存する人の割合、寿命中位数、死亡年齢の最頻値について確認しました。老後資金計画における想定寿命としては、「死亡年齢の最頻値に数年足す」か、区切りよく「100歳」とするか、自分が納得できるほうでよいのではないでしょうか。
 

出典

厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況

厚生労働省 健康寿命の令和元年値について

 
執筆者:福嶋淳裕
CMA、CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー

0
役に立った
役に立った
0
学びがある
学びがある
0
面白い
面白い
PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集