更新日: 2019.01.10 定年・退職

定年後の働き方は自分で決める 定年を迎えるにあたって考えるべきこと(2)

執筆者 : 川上壮太

定年後の働き方は自分で決める 定年を迎えるにあたって考えるべきこと(2)
年金の受給開始年齢は年々引き上げられています。
 
今年(2018年)60歳を迎える男性は63歳から、今年4月2日以降に60歳を迎える女性は61歳から、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができるようになります。
 
しかし、多くの会社(81%)は60歳定年制をとっており、定年後無職になると、年金受給までの間、給与も年金も入らない期間ができてしまうことになります。
 
そこで国は、高年齢者雇用安定法により65歳未満定年制の会社に、社員が65歳になるまでの間、1.定年の廃止、2.定年年齢の引き上げ、3.継続雇用制度の導入、のいずれかの対策をとるよう定めています。
 
このため、定年制の会社の96%は継続雇用制度を導入しており、そのうちの81%の会社において、定年を向かえた社員の70%以上が継続雇用を希望しているという調査結果がでています(高年齢者の雇用に関する調査2016年:労働政策研究・研修機構資料より)。
 
川上壮太

Text:川上壮太(かわかみ そうた)

CFP認定者、DCプランナー

京都大学工学部修士卒。精密機械メーカー勤務の後、FP事務所サニーサイド・ファイナンシャルプラニングを開設。日本FP協会電話相談員等を経験するとともに、多数のFP相談に対応してきた。生命保険募集人・証券外務員の資格を取得し、金融関係業務の実情にも詳しい。現在は神奈川県を中心に、主に子育て世代のライフプラン作りの相談に応じている。
http://www.sunnysidefp.jp/

継続雇用制度の利点と欠点

社員にとって、雇用の確保はありがたいことですが、給与水準については、定年前と同等の水準を維持することは難しくなっています。
 
60 歳直前の給与水準を 100 とした場合、60歳以降の給与水準は、従業員数100人未満の企業では76、1000人以上の企業では65という調査結果があります。
 
一方、継続雇用されることの利点としては、給与水準は下がっても、これまでの社会保障が持続することがあります。
 
1.厚生年金保険料の負担が続く替わりに、将来の公的年金額が積み増される
2.健康保険料の負担は会社と折半で済む
(一般的に国民健康保険の自己負担より軽く、保障内容は手厚い)
3.雇用保険・労災保険の適用が続く
 
会社員でいる間は、あまり気にしない社会保障かもしれませんが、会社を辞めると自費による支払いは重く、保障も限られるようになってしまいます。
 
このように、年金受給までの間、社員の雇用を助けるための継続雇用制度ですが、会社と社員の間には、意識の差があるようです。
 
日本経済団体連合会の2016年の報告書によれば、企業が継続雇用の社員に期待するのは、次のような点です。
 
・経験等を活かした専門能力の発揮(50%)
・ノウハウ等を伝えることによる後進の指導(38%)
 
一方、社員にとっては、次のような問題を感じることがあるようです。
 
・再雇用後の処遇の低下・役割の変化等でモチベーションが低下(53%)
 
定年後の働き方まで会社に頼ることが良いか、一度、考えてみることも必要です。

自営業として会社と契約する働き方

とはいえ、ほかの会社に転職したら、会社員としての課題が解消するわけでもなく、独立して働くのも大変です。
 
企業の方針や、業務の内容によりますが、定年後もそれまでの専門を活かした仕事を、再雇用ではなく契約により自営業として続ける選択肢もあります。
 
企業にとっては、社会保険の負担がいらなくなるという利点があります。社員でない形をとることで、若い世代社員との間で、上司・部下の関係であった感覚を断ち切ることも、目的となりえます。
 
個人にとっては、再雇用の給与額と同等の報酬が支払われれば、手取り額が増える(厚生年金・健康保険の保険料の天引きがなくなるなど)可能性があります
(実際は、国民健康保険料を自分で払わなければならないこと、年金額は増えなくなるなど、金銭的には、むしろ多少不利になることもありえます)。
 
それまで会社に任せていた手続きを自分でやらないといけないこと、確定申告のために必要な情報の整理など、手間のかかることも発生します。
 
しかし65 歳以降については、希望者全員が働くことができる会社は、現状ではわずか10%です。基準に該当した者のみ働くことができる会社は56%、65歳以降は働くことができない会社は30%というのが実態です。
 
会社に依存して働くのではなく、自営業となることで仕事の幅を広げ、どこでも活躍できる力を身につけることで、働ける間は自分のやりたい仕事を続けるのも、1つの選択肢です。
 
そのために、まずはこれまでの会社と契約を結んで仕事を行い、その間に自立して働く道を探し、意欲を持って働ける間は何歳まででも働き続ける。
 
会社から、継続雇用の勧めを受ける際には、契約による雇用が可能かについても、相談してみてはいかがでしょうか。
 

まとめ

健康な老後が長くなっている中、会社に頼ってきた生き方から早く抜け出すことが、ますます重要になってきたと思います。
 
定年後、自営業として働くことは、自分のやりたいことを見つけ、長く続けられる自分の役割を持つために、良い機会を与えてくれるのではないかと考えます。
 
Text:川上 壮太(かわかみ そうた)
サニーサイド・ファイナンシャルプラニング代表
NPO法人くらしの経済サポートセンター代表理事
NPO法人企業・団体支援日本FP協議会理事
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、DCプランナー

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