更新日: 2019.01.10 セカンドライフ
2025年問題とは国民の20%が75歳以上の超高齢化社会!そのための老後資金を効率的に貯めるには?
筆者の両親は団塊世代(1947~49年)なので、2025年くらいに75歳以上(後期高齢者)となります。
実はこの800万人いるといわれている団塊世代が、全員75歳くらいになる頃が2025年。国民の5人に1人が75歳以上という、超高齢化社会に突入する「2025年問題」です。
医療・介護・福祉の整備が急がれると同時に、社会保障費の増大が懸念されています。
厚生労働省の資料によれば、社会保障給付費は120兆円(2017年度予算ベース)ですが、これが2025年には150兆円にもなるといわれています。
たった8年で25%アップ! すぐには信じがたいことですが、どうやらこれが現実のようです。
現役世代には老後不安・年金不安がつきまとうなか、2025年問題をどのように考えていったら良いのでしょうか。老後資金に絞って考えてみたいと思います。
Text:野原亮(のはら りょう)
確定拠出年金相談ねっと認定FP
確定拠出年金創造機構代表
https://wiselife.biz/fp/rnohara/
現東証1部上場の証券会社に入社後、個人営業・株式ディーラーとして従事。口座残高が当初20万円のお客様が2,000万円になったことも。その後、営業マーケティング会社に転職。生涯担当顧客は1,000名超。 2016年に確定拠出年金専門のファイナンシャルプランナーとして開業。法人への企業型確定拠出年金制度の導入を中心に、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)制度の普及にも努めている。生活に密着したお金の話は「人生有限、貯蓄無限」と考え、公的年金や資産運用のアドバイスも。2017年、DVD「一人社長・夫婦経営の社長のための確定拠出年金」を出版
(https://www.amazon.co.jp/dp/B073JFYMQV)
社会保障はどこからお金を出しているの?
この表は社会保障費の使い道とその財源を表しています。
社会保障はほぼ、我々の社会保険料と税金で賄われていることがわかると思います。この支出である給付が10年足らずで25%も増えてしまったとしたら、保険料や税金も同様にあげていかないと厳しいのが現状です。
年金を増やしたいと思えば、共にきちんと払うことで年金制度や自分の年金そのものを支えることにつながりますが、中小企業の従業員からしたら老後が不安なこともあり、税金や社会保険料はできることならなるべく払いたくないのが本音でしょう。
このように考えると、過去に上げそこなった消費税率についても、いずれ増税されることは仕方なさそうです。急増する社会保障費に充てようとしていたのが消費税ですから。
マイナンバー制度も定着し、またサラリーマンが多い現状では、この構造的問題は家計にダイレクトに影響を与えてきますが、何か有効な対策はないのでしょうか?
その給料の1万円は手取りいくらになるか?
例えば、年収500万円(月収約42万円)の人が、毎月1万円を将来のために積立てるとしましょう。その1万円は丸々積立てできるわけではありません。
実際の計算とは異なりますが、わかりやすい目安のイメージとして給与と手取りの関係を表してみました。
支給された1万円は手元に届く前に税金や社会保険料が引かれ、6500円程度になってしまいます。1万円をきっちり積立てたいなら、実は1万5384円の給与が必要になるわけです。
そこでこの仕組みを逆手にとり、より効率的に老後資金を貯めていく方法があります。それが企業型確定拠出年金です。
中小企業の従業員にとっての企業型確定拠出年金
自営業や中小企業の従業員にとって、大企業の福利厚生制度や退職金はとても魅力的に感じるかと思います。税金や社会保険料は払いたくても払えない、あるいはなるべく払いたくない。
福利厚生制度や退職金制度が充実していない中小企業の従業員にとっては、会社が優先して検討してほしいものの1つに、大企業並みの福利厚生制度に近づける、企業型確定拠出年金があがってくるでしょう。
掛金は全額所得控除、運用益は非課税、受取時にも税制優遇ありという企業型確定拠出年金は、最長65歳まで掛金拠出が可能です。
コスト削減しつつ老後の資産形成をするとしたら、最長60歳までしか拠出できない個人型確定拠出年金iDeCoよりも有効な手段となります。
数年前、とある500名規模の中小企業人事部の知人経由で、役員へ企業型確定拠出年金についての、有志による勉強会の提案をあげてもらったことがありました。
残念ながら、出向者や取引金融機関の意向などもあって、その話はまったく進展しませんでした。
ところが最近では、筆者の周辺でも人材定着や人材確保のための福利厚生の一環として、あるいは退職金として、企業型確定拠出年金を導入し、その掛金の一部を会社が負担する中小企業が増えてきています。
退職金制度のない中小企業にとっては、従業員に退職金を準備してあげられますし、従業員は自己責任で退職金を確保することができます。
またこの制度、会社側・従業員ともにコスト削減が可能ということもあり徐々に浸透してきているのです。
幸い数年前とは違い、個人型確定拠出年金iDeCoやつみたてNISAなど、自助努力を必要とする積立制度が普及しだしています。
中小事業主掛金納付制度も施行され、従業員の側からも、このような有効な制度についての研修や導入を、会社側に提案してみる機会が増えつつあります。
福利厚生は経営者が従業員に与えるモノ、というイメージが強いですが、これからの福利厚生は従業員自ら勝ち取れる制度となることも考えられます。
確定拠出年金には、生活スキルとしてのお金の知識がふんだんに盛り込まれていますので、その研修だけでも立派な金融教育となり得ます。
中小企業においてとても面白い金融研修が行われ、それが中小企業やその従業員の発展・成長につながることを期待しています。
Text:野原 亮(のはら りょう)
確定拠出年金相談ねっと認定FP、確定拠出年金創造機構代表