更新日: 2023.01.12 その他老後
事前に準備しよう! 老後にかかる医療費・介護費の目安はどれくらい?
本記事では、老後にかかる医療費と介護費の目安をお伝えします。老後を迎える前に、どの程度の費用がかかるのか理解しておきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
老後にかかる医療費の目安
令和4年1月に厚生労働省が発表した「医療保険に関する基礎資料」によると、生涯で必要となる1人当たりの医療費は、令和元年度の推計で2800万円です。
1人当たりの医療費は55~59歳で29万6447円となりますが、60~64歳では37万4938円、65~69歳では47万2421円、70~74歳では60万7400円、75歳以上では93万166円と、年齢とともに高額な医療費がかかってしまいます。
ただし、医療費は69歳までは3割負担、70歳になるとこれまで3割だった医療費が2割へ、75歳になるとさらに2割から1割と、負担額は減少します。
なお、現役並みの所得がある場合、医療費の窓口負担割合は3割です。また、令和4年10月1日から、75歳以上は課税所得が28万円以上で「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯なら200万円以上、複数世帯であれば320万円となる方は、窓口負担の割合が1割から2割に変更となります。
また、同じ厚生労働省の資料から、年齢や収入に応じた1年当たりの個人が負担する医療費の目安は、以下のとおりです。
・65~69歳(2割負担):9万4484円
・65~69歳(3割負担):14万1726円
・70~74歳(2割負担):12万1480円
・70~74歳(3割負担):18万2220円
・75歳以上(1割負担):9万3017円
・75歳以上(2割負担):18万6033円
・75歳以上(3割負担):27万9050円
医療費の自己負担の上限額
医療費の自己負担は1~3割の範囲内で済むとはいえ、手術や入院が必要になると負担額が大きくなってしまいます。
しかし、医療費には、「高額療養費制度」によって1ヶ月ごとの上限額が設けられているため、それを超える医療費を支払う必要はありません。高額療養費とは、同一月に支払った医療費の自己負担額が高額になった際に、一定の金額を超えた分が、後で払い戻される制度のことです。
高額療養費の上限額は、年齢と所得によって決められています。図表1と2は厚生労働省が公表している年収区分別の自己負担上限額です。
【図表1】69歳以下の方の上限額
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
区分ア 年収約1160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 |
25万2600円+(医療費-84万2000)×1% |
区分イ 年収約770万~約1160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 |
16万7400円+(医療費-55万8000円)×1% |
区分ウ 年収約370万~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 |
8万100円+(医療費-26万7000円)×1% |
区分エ ~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 (報酬月額27万円未満の方) |
5万7600円 |
区分オ 住民税非課税者 |
3万5400円 |
注)ひとつの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1000円以上であることが必要)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。
出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
【図表2】70歳以上の方の上限額
適用区分 | 自己負担限度額 | ||
---|---|---|---|
外来(個人ごと) | |||
現役並み | 年収約1160万円~ 標報83万円以上/課税所得690万円以上 |
25万2600円+(医療費-84万2000円)×1% | |
年収約770万円~約1160万円 標報53万円以上/課税所得380万円以上 |
16万7400円+(医療費-55万8000円)×1% | ||
年収約370万円~約770万円 標報28万円以上/課税所得145万円以上 |
8万100円+(医療費-26万7000円)×1% | ||
一般 | 年収156万~約370万円 標報26万円以下 課税所得145万円未満等 |
1万8000円 (年14万4000円) |
5万7600円 |
住民税非課税等 | Ⅱ 住民税非課税世帯 | 8000円 | 2万4600円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) |
1万5000円 |
注)ひとつの医療機関等での自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。
出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
例を挙げると、70歳未満で標準報酬月額26万円以下の所得区分エに当たる方が、100万円の医療費がかかった場合は、3割である30万円が本来支払う自己負担額です。しかし、高額療養費制度による支給が受けられるため、実際に負担する医療費は、1ヶ月当たり5万7600円で済むことになります。
ただし、入院した際に差額ベッド代が発生した場合は、高額療養費制度の適用外となります。また、大きな病気やけがをしたときなどに、保険適用外の治療費や手術代がかかることがある場合も考えておかなくてはなりません。
老後の医療費を想定するときは、それぞれの健康状態やどのような医療を受けたいかによって考えていく必要があります。
介護費の限度額
介護保険で在宅サービスを利用する場合の自己負担は、介護サービスにかかった費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)となります。図表3は居宅サービスを利用する場合の1ヶ月当たりの利用限度額です。
【図表3】
要支援1 | 5万320円 |
要支援2 | 10万5310円 |
要介護1 | 16万7650円 |
要介護2 | 19万7050円 |
要介護3 | 27万480円 |
要介護4 | 30万9380円 |
要介護5 | 36万2170円 |
出典:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料」
介護保険施設を利用する場合は、費用の負担のほかに、居住費や食費、日常生活費の負担も必要です。さらに、個室や相部屋など住環境の違いで自己負担額が変わります。
介護保険の自己負担の上限額
介護保険にも医療費と同じように、1ヶ月ごとの自己負担上限額を定めた「高額介護サービス費」制度があります。以下が介護費の負担上限額となっており、超えた分は払い戻しされます。
・市町村民課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満の方:4万4400円(世帯)
・所得の低い方や生活保護を受給している方(非課税世帯):2万4600円(世帯)、1万5000円(個人)
詳しくは、厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料」でご確認ください。
医療保険と介護保険を合算した自己負担額にも上限がある
医療費と介護費、それぞれに費用の上限額があることをお伝えしてきましたが、医療費と介護費を合わせた額が高額になった場合も、一定額が払い戻しされる「高額医療・高額介護合算療養費制度」が用意されています。
図表4は、医療保険と介護保険を合算した1年間における自己負担限度額です。
【図表4】
後期高齢者医療制度 +介護保険 |
被用者保険または国保+介護保険 (70~74歳がいる世帯※1) | 被用者保険または国保+介護保険 (70歳未満がいる世帯※2) | ||
---|---|---|---|---|
現役並み所得者 (上位所得者) | 67万円 | 67万円 | 126万円 | |
一般 | 56万円 | 62万円 | 67万円 | |
低所得者 | Ⅱ | 31万円 | 31万円 | 34万円 |
Ⅰ | 19万円 | 19万円 |
(※1、2) 対象となる世帯に、70~74歳と70歳未満が混在する場合には、(1)まずは70~74歳に係る自己負担の合算額に、(※1)の区分の自己負担限度額が適用された後、(2)なお残る負担額 と70歳未満の者に係る自己負担の合算額とを合算した額に、(※2)の区分の自己負担限度額が適用される
出典:厚生労働省「介護保険制度の見直しについて」
一般的な所得の医療費+介護費の1年間の負担額は、70歳未満がいる世帯で67万円、70~74歳がいる世帯で62万円、75歳以上の後期高齢者となると56万円で収まります。
老後にかかる医療費・介護費の目安を把握しておこう
老後にかかる医療費・介護費の目安は、医療費が300万~400万円程度、介護費は250万円程度です。大きな病気やけがをしたり、充実した介護サービスを受けたりしたい場合は、さらに多くの医療費や介護費がかかってしまいます。
医療費や介護には、自己負担上限額が設定されていますが、70歳以降は多くの医療費や介護費用が必要です。早い段階から定年後の医療費と介護費について考えて、それを含めた老後の資金を貯めておくとよいでしょう。
出典
厚生労働省 医療保険に関する基礎資料~令和元年度の医療費等の状況~
厚生労働省 後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)
厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
厚生労働省 介護保険制度の見直しについて
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー