更新日: 2019.09.14 その他老後

高齢者のお金の管理はどうすべき? 高齢者向けの金融サービスについて

執筆者 : 植田英三郎

高齢者のお金の管理はどうすべき? 高齢者向けの金融サービスについて
銀行を中心とする金融機関やその金融サービスは、大きな変革期を迎えているようです。世の中で銀行の存在意義が問われている面もあり、テーマは壮大ですが、今回は高齢者との関わりに絞り込んでみることにします。
 
高齢向けの金融サービスの状況や、今後の金融サービスの変化の中で起きる可能性と、高齢者との関わりについて考えていくことにしましょう。
 
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

金融資産の保有残高と高齢者

日本の金融資産の保有が高齢者に偏っているとの情報は、いろいろな機会に公表されていますが、総務省が平成26年に発表した全国消費実態調査(※1)に基づき計算すると、金融資産の保有者で70歳以上の比率は、人数で25.4%、金額では30.6%という数値が算出されます。
 
平均寿命の高齢化が続いていますので、この比率はさらに高くなることが、見込まれます。また同データに基づき算出しますと、70歳以上が保有する金融資産の中身は、預貯金が66.3%、有価証券18.1%、保険など15.6%となっています。
 
やはり預貯金のウエイトが高いことと、有価証券の比率が、全世代の有価証券保有比率14.6%に対して最も高いことが目立ちます。中でも、有価証券の世代別保有ウエイトの中で、全体の37.9%が70歳以上であることは、今後いろいろと課題になりそうです。
 
みずほ総合研究所の予測(※2)では、2035年には70歳以上が有価証券の50%以上を保有することになるだろうと指摘されています。
 

表は(※1)に基づき筆者が作成
 

老後資金の不足の問題

90歳・100歳の高齢化が現実化する中で、老後資金の不足懸念は大きな話題となりました。本質論を外れた展開に向かったのは、残念ですが、事の重大性が幅広く知られたことは、プラスと思われます。
 
そのような背景の中ですが、昨年出されたみずほ総合研究所のレポート「高齢者と金融」(※2)では「多様な人生に寄りそう金融サービスへ」の項で、次のような考え方が提起されています。原文の7項目を大まかにまとめると、以下の4項目のようになると思われます。
 
(1)自助での老後資金の蓄積の必要性について共通の認識を広める
(2)資産形成にはリスク資産(株式・為替資産)の保有が不可欠であることへの理解と共感を求める
(3)新たな金融商品としての高齢者向けの「信託」や「保険」の必要性を提起する。
(4)リバースモーゲージの有効性と課題

 
現在の状況ではもっともなことと考えられます。
 

高齢者にとっての金融機関

ここまでは、高齢者を取り巻く金融環境についての一端と、金融業界が求める方向について触れてきましたが、利用者の立場で金融機関について考えてみましょう。
 

利用者本位(顧客ファースト)なのか?

銀行の窓口対応や電話応対の現実は、「人がいない」「電話でコールしても相手は人口合成の機械音声」「トラブルを伝えようがない」などで多くの人が、ストレスを感じていると思われます。
 
メガバンク―地方銀行―信用金庫―郵便局と多くの金融機関がありますが、多くの人、とりわけ高齢者が感じる親近感は、郵便局―信用金庫―地方銀行―メガバンクの順ではないでしょうか?
 

どうすれば良い高齢者

それでは、利用者として、これから高齢者はどうすれば良いのでしょうか?
 
・顔の見える銀行はないのか?
兵庫県加古川市に但陽信用金庫という金融機関があります。地域の「よろず相談所」として、この地域で高い評価と知名度を得ている信用金庫です。
 
人と接することのない(顔の見えない)昨今の銀行ですが、ATMやパソコン・スマホ画面での取引はITに強い人には便利です。でも、最低限の顔の見える銀行はないのか、ちょっと探してみるのも一考ではないでしょうか?
 
・自己防衛
顧客の資産管理に役立つよりは、自行の経営が優先しているのは、投資信託保有者の半分以上が含み損を抱えているという金融庁の報告(※3)からも、うかがえます。販売側の姿勢の是正とともに、自分が理解できないものには絶対手を出さないことが必要ではないでしょうか。
 
・口座の集約
給与・年金の振込口座、マンションや各種引き落としのための口座、ゆうちょ銀行口座など、用途に応じた口座が多くある場合、距離的に近いところにある程度まとめる工夫も必要と思われます。
 

まとめ

高齢者の金融資産保有の全体像と、金融界が抱えている課題の一端が垣間見えたかと思います。また、今回は触れませんでしたが、認知症高齢者の金融との関わりも、今後の大きな課題となるでしょう。
 
そんな中で、高齢者が望むであろうことと、最低限自分たちで考える必要のあることを、最後に書きました。人に優しい金融機関がコストの壁を越えて出てきてほしいと願うところです。
 
出典
(※1)総務省 平成26年全国消費実態調査(表69)
(※2)みずほ総合研究所 「高齢社会と金融 ~高齢社会と多様化するニーズに金融機関はどう対応するか~」
(※3)金融庁 「販売会社における比較可能な共通KPIの公表状況 」
 
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP


 

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