更新日: 2019.06.13 介護

介護離職をする前に!知っておきたい2つのこと

執筆者 : 中田真

介護離職をする前に!知っておきたい2つのこと
遠く離れた実家で一人暮らしをする親が、転んでけがをして入院。その後、退院することはできましたが、入浴や食事の準備など、日常生活に手助けが必要な状態に。
 
仕事の都合上、そうそう実家に戻ることはできないし、親は住み慣れた住宅や地域を離れたくないと言う。しかたがないから、親の介護をするために仕事を辞めて実家に帰る。そんな選択をする人が少なくありません。
 
仕事を辞めるということは、人生でも大きな選択ですし、その後の再就職はハードルが高いのが現状です。親の介護が必要になったからといって離職する前に、知っておきたい2つのことについて、ご紹介します。
 
中田真

執筆者:中田真(なかだ まこと)

CFP(R)認定者、終活アドバイザー

中田FP事務所 代表

NPO法人ら・し・さ 正会員
株式会社ユーキャン ファイナンシャルプランナー(FP)講座 講師

給与明細は「手取り額しか見ない」普通のサラリーマンだったが、お金の知識のなさに漠然とした不安を感じたことから、CFP(R)資格を取得。
現在、終活・介護・高齢期の生活資金の準備や使い方のテーマを中心に、個別相談、セミナー講師、執筆などで活動中。
https://nakada-fp.com/

介護休業・介護休暇

最初に知っておきたいのは「介護休業」と「介護休暇」の制度についてです。いずれも育児・介護休業法で認められている制度で、家族の介護をするために会社を休むことができるのは同じですが、適用ルールなどに違いがあります。
 
「介護休業」とは、「労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するためにする休業」、と定義され、次のような条件があります。
 
1、介護休業期間:対象家族1人につき「通算93日」まで
2、介護休業回数:対象家族1人につき「3回」まで
3、介護休業対象外の労働者:以下のいずれかに該当する労働者
 
※介護休業をすることができないこととする労使協定がある場合
・入社1年未満
・申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下
 
一方の「介護休暇」については、「要介護状態にある対象家族の介護・その他の世話を行う労働者は、介護・その他の世話を行うために、休暇が取得できる」、と定義されています。
 
「その他の世話」とは、対象家族の通院などの付き添い、対象家族が介護サービスの適用を受けるために必要な手続きの代行、その他の対象家族に必要な世話のことです。
 
1、介護休暇日数:一年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで
2、介護休暇単位:1日又は半日(所定労働時間の2分の1)
3、介護休暇対象外の労働者:入社6ヵ月未満
 
※介護休暇を取得することができないこととする労使協定がある場合
・入社6ヶ月未満
・1週間の所定労働日数が2日以下
・半日単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者
 
また、介護休業・介護休暇に共通する項目もあります。
 
1.要介護状態(常時介護を必要とする状態):以下のいずれかに該当する状態
・要介護2以上
・厚生労働省の判定基準に該当
2.対象となる家族の範囲:配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
3.対象外の労働者:以下のいずれかに該当する労働者
・日雇い
・1週間の所定労働日数が2日以下
 

地域包括支援センター

次に知っておきたいのは、「地域包括支援センター」です。地域包括支援センターは、自治体などにより高齢者のサポートをするための施設として設置されています。
 
介護が始まってから行くところだと思い込んでいる人も多いですが、要支援の人や介護認定されていない人の自立支援など、介護予防という目的でも利用できます。また、公的介護保険サービスを利用したい人の相談や申請のサポートなども行っており、相談は無料です。
 
ご興味がある方は、親の住んでいる住所地を管轄する地域包括支援センターに、一度行ってみることをおすすめします。もし親が遠くに住んでいる場合は、帰省のタイミングで少し覗いてみる、なかなか帰省できないのであれば、気になることを電話で聞いてみるだけでも安心できます。
 

介護離職は最終手段

介護離職から経済的に困窮してしまい、精神的に追い詰められた結果、介護うつや介護離婚につながるケースもあります。介護のことは自分や家族だけで悩むのではなく、専門家の手も借りながら考えることが非常に重要です。
 
介護に対する制度やサービスを事前に知っているだけでも、「介護離職」を回避できるかもしれません。
 
執筆者:中田真(なかだ まこと)
CFP(R)認定者、終活アドバイザー
 

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