更新日: 2019.01.08 定年・退職

退去時に戻ってくる敷金の額に納得できてる?賃貸物件の原状回復、賃借人の負担すべき範囲とは?

執筆者 : 柘植輝

退去時に戻ってくる敷金の額に納得できてる?賃貸物件の原状回復、賃借人の負担すべき範囲とは?
賃貸物件へ入居する際、ほとんどの場合において敷金を求められます。

そして、物件から退去するとき、物件の原状回復に必要な費用が敷金から差し引かれ、残った部分があれば返還されることになります。

原状回復には貸主の負担すべき部分もあれば、借主の負担すべき部分もあり、どちらか一方が全ての費用を負担するわけではありません。

ところが、戻ってきた敷金の額を確認したとき「本当にこれでいいのかな」と悩まれた経験のある人も少なくないでしょう。

そこで、今回は国土交通省住宅局より公表されているガイドラインを基に、原状回復における賃借人の負担範囲について解説していきます。
柘植輝

Text:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

そもそも原状回復とは?

相当に気をつけ、手入れしながら使用していない限り、人の入居した後の物件は入居前に比べ、汚れや損壊が生じているものです。
 
それらを入居前の状態に戻すことを「原状回復」と呼びます。
 
とはいえ、完全に入居前の状態に戻すことまでを原状回復としているわけではありません。
 
では、具体的にどこまでが賃借人の負担するべき「原状回復」となるのか検討していきましょう。
 

建物・設備などの自然な劣化や通常の使用に伴う消耗

あたりまえのことですが、建物や設備は経年と共に自然と劣化していきます。
 
また、建物や設備も物である以上、どんなに丁寧に扱ったとしても、使用に伴う消耗を避けることはできません。
 
にもかかわらず、それらに相当する部分まで原状回復として賃借人に負担させるのは少々理不尽ではないでしょうか。
 
そもそも賃借人は建物や設備を利用する対価として日々家賃を支払っています。
 
とするならば、やはり家賃の中に建物や設備の自然な劣化に対応する費用も含まれていると考えるべきでしょう。
 
ガイドラインにおいても、建物や設備の自然な劣化・消耗については賃借人ではなく、賃貸人の負担すべき範囲だとされています。
 
建物や設備の劣化・通常の消耗の具体例としては次のようなものがあります。
 
・フローリングのワックス
・クロスの変色(日焼けなど自然発生したものに限る)
・画びょうやピンなどによる穴(下地ボードの張り替えが不要な程度のもの)
・鍵の取り換え(紛失や破損の無い場合)
 

賃借人の故意や過失、その他通常の使用を超えたような場合に発生するもの

故意や過失、その他通常の使用から離れたことによって発生する消耗などは先ほどの例と異なり、賃借人の側で負担するべき範囲となります。
 
なぜなら、それらは賃借人の努力において避けることのできる消耗と考えられるからです。
 
また、通常発生するような消耗などであっても、賃借人の管理が不十分であったり、不注意により発生・拡大してしまったような場合も故意や過失に含まれ、賃借人の負担となってしまうので注意が必要です。
 
賃借人の故意や過失、その他通常の用法を超えるなどと判断される場合として次のようなものがあります。
 
・ガスコンロや換気扇の油汚れ・すす
・水回りのカビや水あか
・飲み物などをこぼしたことで発生したシミや汚れ
・タバコなどによるクロスの変色や臭い
・ペットのつけた傷や臭い
 

賃貸借契約の内容に注意

今回ご説明した内容はあくまでもガイドラインに基づくものです。
 
賃貸借契約書においてガイドラインとは異なる定めがあれば、多くの場合その契約書の内容に従って負担の範囲を決定していくこととなります。
 
ただし、場合によっては契約書の内容が不当とされ、賃借人の負担すべき範囲ではないと判断されることもあります。
 
敷金や原状回復について疑問を感じたときは行政書士や国民生活センターなど、専門の窓口まで相談するようにしてください。
 
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー

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