しかし、まだまだ一部には根強い人気があるようです。1000万円の貯蓄で海外でのシルバーライフ、というのはどんなイメージでしょうか。
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
海外でのシルバーライフはかなり厳しい
結論からいってしまうと、夢をぶち壊してしまいそうですが、海外でのシルバーライフは、相当の余裕資金がない限り選択肢にあげるべきではない、というのが筆者の考えです。
理由は3つ。1つ目は言葉の問題、2つ目は社会保険の問題、そして3つ目はお金のやりくりの問題です。
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体調について詳細に説明できるコミュニケーションスキル
1つ目の問題としては、コミュニケーションスキルの問題です。加齢とともに、どんなに頑強な人であっても、健康に対する不安材料が顕在化してきます。
腹痛、腰痛、頭痛など、自分の体調について細かく現地の言葉で説明できるのであれば問題ありませんが、語学ができる人であっても、微妙な言い回しを現地の医療関係者に説明することは、かなり難しいと思います。
また、現地の医師や看護師から説明されても、それを理解するのにまたワンクッション(翻訳)が必要になります。自分やパートナーが同様の状態になったときを想定しても大丈夫、という人でない限りお勧めはできません。
医療機関にかかったときの費用について
かつてマルチタレント・国会議員としても活躍した故大橋巨泉氏が、世界のさまざまな国に滞在していた、という話を知る人も多いと思います。
経済的にはまったく問題のなかったと思われる人ですが、晩年を日本で過ごしたことから想像すると、海外ではシニア世代になってからありがたみが発揮される日本の老人保健制度、介護保険制度ほどの心強いサポートは期待できません。
住民票を日本に残しておけば、海外での疾病に関しても請求は可能ですが、海外転出届を出してしまうと脱退扱いになります。医療費について基本的に自助努力となれば、長期滞在とは違い老後の移住はかなりのリスクを伴うといえます。
収入に上乗せすることは不可能
例えば、日本で賃貸収入があるなど収入が定期的にある場合を除いて、海外に移住してしまえば、収入の上乗せを期待することはできません。
そうなれば、純粋に今までの貯蓄と年金収入だけでやりくりしていかなければならないため、「取り崩し」の時間を引き延ばすという方法も選択できなくなります。
これらを考えあわせると、海外に移住しての老後生活は現実的ではないと結論付けざるを得ないでしょう。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表