更新日: 2020.02.29 教育ローン
今さら聞けない! 奨学金と教育ローンの違い
日本国憲法第26条とは「全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する」であり、教育基本法第4条第3項とは「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない」です。
子どもの教育費は保護者が負担しますが、年々教育費が上昇し、家計に大きくのしかかっています。急に家計がひっ迫することもあり、どこの家庭も教育費を十分用意できるわけではありません。そのような場合には、金融機関で教育ローンの融資を受けることもあるでしょう。
ところで、「教育ローン」と日本学生支援機構の「貸与型の奨学金」、どちらも借りるものですがどう違うのでしょうか。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士
終活カウンセラー
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
貸与型の奨学金は学生本人が借りる
日本学生支援機構の奨学金には、給付型と貸与型があります。
昭和18年に無利子の貸与型奨学金に始まり、貸付希望者に対応するために有利子の貸与型も加わり、平成29年度からは返還不要な給付型奨学金が開始され、令和2年からは返還不要の給付型が拡充され、「住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯」等の要件を満たす人すべてが対象になりました。
貸与型奨学金には利息の付かない第一種、利息が付く第二種がありますが、採用になるにはそれぞれ世帯収入に制限があります。学生に有利になるほど、収入の条件は厳しくなります。奨学金が、経済的理由で修学が困難な者に対しての制度だからです。
奨学金は、学生本人が借りるものです。本人が申込手続きをし、本人が返済します。
収入のない学生が借り入れることで、勉学に励み、収入を得るようになってから返還します。利息の付く第二種を借り入れても、在学中は利息が付きませんし、利率も低いものです。
子どもの教育費は保護者が負担しますが、急に家計がひっ迫することもあり、どこの家庭も教育費を十分用意できるわけではありません。また、子どもが進学を希望しても、親御さんにそのつもりがない場合もあります。
親が学費を出せなくても、子どもに学業の支援するのが奨学金です。進学前でも進学後でも、申込みは本人が在学する学校を通じて行います。
教育ローンは収入のある保護者等が借りる
一方、教育ローンは、子どものための教育資金が不足するときに保護者が借り入れするものです。保護者や本人に一定以上の収入があると、奨学金を借りることはできません。
奨学金は収入がない学生が借りますが、教育ローンは一定以上の収入がないと借りられません。金融機関に申込みをすると、借入金を返済していけるかどうか審査があります。住宅や車などの、他のローンの返済額との合計で見ます。よって、必ず借りられるわけではありません。
生活を支えている保護者が借ります。保護者が資金を用意し、親が返済します。ただし、本人に収入がある場合は本人でも借りることができます。金融機関の教育ローンは奨学金と違い、無利息なものはなく利息を支払います。
金融機関とのお付き合いの状況により、店頭表示金利3.9%前後から、いろいろな条件で優遇を受けられる場合は1.6~1.9%なることもあります。
国の教育ローン・ろうきんの入学時必要資金融資
ところで、国にも教育ローンがあります。日本政策金融公庫の国の教育ローンです。国のローンでも返済できる収入が必要です。借り主は保護者です。
ただし、金融機関のローンのように返せれば良いのではなく、所得の上限があります。借りられる金額にも上限があります。扶養する子どもの人数によって違います。
固定金利1.66%(2020年1月現在)ですが、家庭の状況に応じて、そこからさらに金利、返済期間、保証料が優遇されます。
日本学生支援機構の奨学金との併用も可能です。
入学までに、入学金と前期分の授業料を準備する必要がありますが、日本学生支援機構の入学時特別増額貸与奨学金を予約した場合でも、増額奨学金の交付は入学後です。
教育ローンをつなぎにしますが、もし増額奨学金の予約者が国の教育ローンを受けられない場合は、ろうきんの入学時必要資金融資を利用できます。
増額奨学金が交付されたら、ろうきんが奨学金振込口座から引き落とし返済に充てます。この場合は、貸与型奨学金を利用する学生本人が借り主です。金利が1.71%(令和元年9月30日現在)のため、国の教育ローンのほうが金利は低いです。
日本政策金融公庫の国の教育ローンは、一年中いつでも受け付けていますが、合格が決まってから融資が開始となります。あらかじめ申込みをしておくことができ、もし使わない場合はキャンセルもできます。必要な場合は早めに手続きされると良いですね。
(参照、引用)
文部科学省「奨学金事業の充実」
ろうきん「入学時必要資金融資のご案内」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者