更新日: 2020.03.13 住宅ローン
長期金利が上昇局面に。変動? 固定? いま考える住宅ローンの選び方
大手銀行の一部は、11月も10年固定型の金利(最優遇金利)を引き上げました。7月末に日銀が金融政策の変更を発表してから、長期固定型の住宅ローン金利はじわじわと上昇しています。また、フラット35の最低金利も9月から3ヶ月連続で上昇しています。※1
それに対して、変動型は2016年以降、最低金利が続いており、ここへきて変動型と固定型の金利差が広がってきました。
これから住宅を購入するにあたっては変動型、固定型、どちらの住宅ローンを選んだほうがよいのでしょうか。いま一度、考え方を整理してみましょう。
執筆者:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上顧客の相続対策や不動産活用を担当。
現在はFP、不動産コンサルタントとして相談、実行支援、講師、執筆等を行っている。平成30年度日本FP協会広報センタースタッフ、メダリストクラブFP技能士受験講座講師、NPO法人ら・し・さ理事、埼玉県定期借地借家権推進機構理事
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目次
変動と固定、どちらを選ぶ人が多い?
住宅金融支援機構の調査によると、2017年度下半期に住宅ローンを借りた人のうち、56.5%が変動型を選択しました。それに対して、固定期間選択型が30.1%、全期間固定型は13.3%でした。
特に全期間固定型は2015年3月~6月期には38.0%の人が選択していましたので、3分の1近くまで減少したことになります。※2
最近では、変動型と固定型の金利差は広がってきているので、今後さらに変動型を選択する人の割合が増えることも予想されます。
住宅ローンの選択に当たって、「金利が低いこと」を決め手と回答した人は69.7%と圧倒的な多数でした。やはり返済額が抑えられることが変動型の最も大きな魅力のようです。
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変動型と固定型の返済額の差は「安心料」?
固定型と変動型の住宅ローン3000万円を、30年返済で借り入れた場合の毎月返済額を見てみましょう。
11月のそれぞれの金利で比べてみると、
変動金利(金利0.625% 三菱UFJ銀行の場合)…9万1411円
固定金利(金利1.45% 住宅金融支援機構の公表によるフラット35の最低金利)…10万2817円
諸費用の違いもあるので単純に比較はできませんが、変動金利のほうが、返済額が毎月1万1406円安くなります。
しかし、変動型は半年ごとに金利の見直しがあるため、金利上昇の不安が残ります。反面、固定型は返済期間中ずっと返済額が変わらないという安心感があります。
当初は変動型のほうが金利が低くても、30年という長い期間には、短期金利が上昇する場面はあると予測されます。そうなると、どこかの時点で変動型の返済額が固定型を超えることも十分に考えられるのです。
ここで、借入れ当初の返済額の差である1万1406円は「安心料である」という考え方があります。固定型の返済額でも生活上問題がない人なら、安心料を払うことにより今後の金利上昇におびえることなく、安心して生活を送ることができます。
あとは、この安心料を高いと感じるか安いと感じるかで、固定金利、変動金利の選択が分かれるのではないでしょうか。
ところが、前述したように、この安心料がこのところ以前より高くなってきています。上記の例の場合、安心料は1年で13万6872円もの額になります。そんなに高い安心料を支払うくらいなら、将来金利が上がる可能性があっても、いま、返済額が低い変動型を選びたいという人が現在は増えていると考えます。
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住宅ローンの完済年数は意外に短い
変動金利型、固定金利型を選択するに当たって参考になる興味深い調査結果があります。
それは、住宅購入時に住宅ローンを借入れしたあと、多くの人が繰上げ返済をして、結果的に当初の借入時よりも短い年数で住宅ローンを完済していることです。
住宅金融支援機構の2016年度のデータでは、住宅ローンを借りた人の当初の返済期間は平均25.4年ですが、平均14.4年で完済しています。これは、繰上げ返済などで平均11年も返済期間を短縮していることになります。
しかも全体の約70%の人が15年以内に完済しているのです。※3
つまり、繰上げ返済が可能なくらいゆとりのある返済計画を立て、実際に繰上げ返済を実行していくことができれば、金利上昇に過度におびえることもなくなります。
その場合は、高い安心料を払って固定型を選択するよりも、返済額の低い変動型を選択したほうが、メリットがあったということになります。
変動型と固定型の選び方は?
ライフサイクルの中で繰上げ返済可能で、結果的に返済期間を短縮できる見込みがあるのであれば変動型、とにかく安心を買いたいという場合は固定型、という選択になるのではないでしょうか。
変動型、固定型、どちらかが必ず正しい選択肢ということはありません。
借入れの際は、各々がさまざまなリスクを検討し、ライフプラン全体の中で上手に返済計画を立てながら選択しましょう。
※1 住宅金融支援機構【フラット35】借入金利の推移
※2 住宅金融支援機構「2017年度民間住宅ローン利用者の実態調査」2018年6月
※3 住宅金融支援機構「2016年度民間住宅ローンの貸出動向調査」2017年2月
Text:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント
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