「借りるだけ借りて、残ったお金は資産運用をしたほうがいいとアドバイスされました」
「でも外貨預金ぐらいしかしたことがなくて不安」こんなご相談を受けました。
確かに、マイナス金利で住宅ローンは未曽有の低金利。35年固定でも1%程度で借りられることが多いのは事実です。
借りるだけ借りて手元のお金は資産運用するという考え方の、メリットデメリットについて考えます。
執筆者:塚越菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
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目次
1000万円を頭金にせずに資産運用する提案をされて
ご相談者様は、2500万円の住宅購入費用のうち1000万円を頭金として払い、残りをローンにするつもりだったとのことです。
しかしそれで話を進めていたところ、頭金を入れるのをやめて、なるべく長く・なるべく多く借りることを提案され、どうしたらいいか悩んでいました。
ご相談者様ご自身は、ローンが多いこと自体になんとなくの不安を感じており、頭金を入れてローンを少なくしておく方が安心だと考えていたので余計に混乱してしまったようです。
住宅ローンをたくさん借りておくという考え方のメリットデメリットは以下のようなものがあります。
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住宅ローン控除を最大限使うため
住宅取得資金を一定要件で借り入れると「住宅借入金等特別控除」という、いわゆる住宅ローン控除を使うことができます。
簡単にいうと、住宅ローンの年末の借入残高の1%を所得税(一部住民税)から差し引いてもらえるという制度です。
例えば、年末の借入残高が3000万円なら30万円税額から引いてもらえるといった計算です。
頭金を入れてしまうと当然借入残高は少なくなりますから、住宅ローン控除の額も少なくなってしまいますね。
この観点から、住宅ローンをたくさん借りておくメリットは「住宅ローン控除の額が多く使える」ということです。
それに対してデメリットは、そもそも控除してもらえる税金があるかを把握しないと無駄になる可能性があるということです。
住宅ローン控除は、自分が払う税金から差し引いてもらえるというものです。
住宅ローン控除が仮に25万円あっても、所得税が10万円でしたら10万円が上限です。
一部住民税からも引いてもらえることになってはいますが、全額ではないので借りたら借りただけお得とは、一概には言えないことを確認しておきたいところです。
保険代わりにするため
住宅ローンを借りると、一部金融機関を除いて「団体信用生命保険」に加入することになります。
特約などのオプションを付けない限り、保険料はローンの利息の中に含まれていて、借りた人に万が一のこと(死亡・高度障害)があった場合には、ローンの残債は保険から支払われるというものです。
そういう意味では、住宅ローンの残高が生命保険のような役割を果たすことができるのがメリットといえるでしょう。
しかし、それによってすでに加入している保険の見直しをして保険料が節約できるかもしれません。
デメリットとしては、住宅ローンだけがなくなればそれだけでいいとは言えないので、注意が必要ということです。
住宅ローンが終わる見込みの年齢や家族の状況、すでに加入している保険の内容と照らし合わせて、あえて多く借りて保険代わりにする必要があるかはしっかり検討しましょう。
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手元に残したお金を資産運用するため
昨今の住宅ローンの利率は非常に低くなっています。
変動だと0.5%を切るような契約も見かけますね。
普通預金や定期預金でその利率相当を増やすのは容易ではありませんが、基本的な知識を得てから適切な投資行動を行えば資産運用で0.5%のリターンを得るのはさほど難しいことではありません。
住宅ローン以外ではこれほど低金利で借り入れすることはできませんから、安く借りておいて元手を借入利息以上の成績で運用できる可能性が高いというのはメリットといえるでしょう。
これに対して「資産運用は元本保証されない」「そもそも資産運用をする力がない」場合はこのやり方はデメリットとなります。
住宅ローンの低金利を上回る資産運用は難しいことではないと書きましたが、それも絶対ではありません。
経済の未来のことは誰にもわからないからです。
同様に、資産運用して利息以上に増やしてしまえばいいと言われたところで、運用未経験者が手元に残した1000万円を簡単に資産運用はできないかもしれません。
自分がどの程度のことができるかによっては、資産運用ありきの借り入れはメリットといえなくなってしまう可能性もあります。
金額的なお得だけではなく、納得や安心・自分の実力も考えたうえで
この低金利時代、借りられるだけ固定で借りて手元のお金は資産運用で増やすというのは、金銭的には合理的だと思います。
私自身は似たような考え方で、あえて住宅ローンを繰り上げ返済をせずに資産運用に回して増やしつつ、タイミングを計っています。
ですがそれは、資産運用をする基本的な知識があり、自分で色々な計算することで不安感を取り除くことができるからです。
いろいろな制度を理解した上で、自分で計算することが難しい場合は、金銭的なお得だけを目的にたくさん借りることを選択してしまうと、ずっと不安感を抱くことになってしまうかもしれません。
お得かもしれないけど不安な思いをし続けるよりは、自分が納得できる範囲で選び取っていただくほうが、ストレスなくお金と付き合っていけるかもしれませんね。
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者
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