更新日: 2020.03.09 住宅ローン
住宅ローンの繰り上げ返済は「無理のない金額で」当たり前だけど計算するのは意外と難しい?返済のためのお金の振り分け方やタイミングについて改めて考えよう。
FPとして、ご相談に応じていると、「住宅ローンの繰り上げ返済に回すお金はいくらぐらい?」という課題に直面します。
結論をいうと、「毎月、お金がいくら余るか」を割り出してから、「生活に無理のない金額」を繰り上げ返済にあてていきましょうとなります。「当たり前のこと」と思われるかもしれませんが、結構、これが難しいんですよね。
なぜ、難しいのか? 繰り上げ返済にあてるお金の振り分け方や、タイミングなどについてお話ししていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
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家計に必要な口座は3つ
皆さんは、銀行の口座をいくつ持っていますか?ご家庭によって異なりますが、ご相談者さんとの面談を通じて感じたのは、おおよそ5~7つほど持っているご家庭が多いということです。
この数だけみても、家計を管理するスタンスとしては、意識してお金を振り分けていないということが分かります。銀行の口座は、3つぐらいあれば十分です。
1つは「生活のための入出金口座」。
これは、お給料の入金や生活費の支払い、急な入り用で使うお金のための口座です。
2つめは「貯蓄用の口座」です。
定期預金や積立貯蓄など、少し長い期間お金を貯めるための口座です。
この中には、お子さんの教育・進学資金や老後の生活資金はもちろん、リフォーム・リノベーションのためのお金、自動車の買いかえのためのお金、さらに介護資金を入れます。
そして、3つめは「資産形成のための口座」です。
これは、リスクをとってもいいお金を入れておく口座ですが、別のいい方をすると、使い道のない、本当に余っているお金のための口座です。
この口座から証券会社などで証券口座を開設し、運用していきます。
このようにみていくと、3つあれば足りるんですね。それでは、繰り上げ返済のためのお金は、3つの口座のうち、どこに入れたらいいでしょうか。
答えは、2つめの「貯蓄用の口座」です。ここにお金を貯めこむことで、繰り上げ返済を行っていきます。
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お金の優先順位と口座選び
さて、家計簿をつけて、毎月お金がいくら余るかが、おおよそ把握できたとします。
次にやることは、生活に無理のないように資金を振り分けることです。
ここで重要なのは、お金に優先順位をつけることです。実際のご相談では、この点を整理していきます。子育て世帯の場合、お子さんの教育資金や進学資金についてどのように準備しているかをまず確認します。
次に、退職金や年金を含め、老後に関連する収入と貯蓄がどのように準備されていくかをみていきます。そのうえで、リフォーム・リノベーション費用や自動車の買いかえなどの費用、介護資金、そして繰り上げ返済金のバランスを整えていきます。
そして、「貯蓄用の口座」を選び直します。
今のような低金利のもとでは、ただ単に銀行にお金を預けていても、お金はなかなか貯まりません。例えば、都銀なら2018年9月時点で、普通預金の金利は年0.001%です。これは100万円預けた場合、1年間で10円しか増えないことを意味しています。
これではしょうがないので、「貯蓄用の口座」を選び直す作業をします。この口座選びでは、目的のあるお金のため安全性を重視する必要があり、積極的にリスクをとることはなかなか難しくなります。そこで、どこの銀行の、どの金融商品を選ぶかという話になります。
ここまで決めたら、あとは、ひたすら「貯蓄用の口座」にお金を入れ込むだけです。そして、さらにお金が余るなら「資産形成のための口座」にお金を振り分け、証券会社などを通じて運用するようにしましょう。
繰り上げ返済のタイミングは家計にあわせて
口座の振り分けが終わったら、次は、繰り上げ返済のタイミングです。
最近では、「毎月の返済にあわせて、余裕があるときに繰り上げ返済もできます」といった返済プランもありますが、これまでお話ししてきたように、ポイントは無理のない返済にあります。
前回の記事でもお伝えした物価と住宅ローンの関係性も含めて考えると、今のようにデフレ下にある場合は、なるべくまとまった金額を返せるようにするほうが、家計全体でみた資産効果は上がります。タイミングを考える際は、前提として家計簿をしっかりとつけ、それをもとに毎年のキャッシュフロー表と照らしあわせながら、いつ返済するかを決める必要があります。
これは、ご家庭の家計状況にあわせて繰り上げ返済していくという意味です。
このように、住宅ローンを組むということは、どのようにお金を返すかを総合的に考えることになるため、そもそも簡単に答えを導くことはできないんですね。
繰り上げ返済も同じように、「毎月、いくらお金が余るか」を把握し、「生活に無理のない金額」を割り出す必要があります。そのうえで口座を使い分け、どの金融機関がより効率的かを突き止め、繰り上げ返済のタイミングを計っていくことになります。
次回は、住宅ローンと退職金の関係についてお伝えしていきます。
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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