更新日: 2019.01.10 その他

今一度、振り返る。アベノミクス<働き方改革>がもたらすメリット・デメリットとは

執筆者 : 柴沼直美

今一度、振り返る。アベノミクス<働き方改革>がもたらすメリット・デメリットとは
2016年8月に閣議決定した経済対策の目玉ともいえる働き方改革ですが、多様な働き方を可能とするとともに、格差の固定化を是正し、成長と分配の好循環を図ることを主旨として注目されていますが、この取組によって私たちの働く環境はどうなるのでしょうか。
柴沼直美

Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

メリット:結果オーライという成果主義でわかりやすい

働き方改革の主旨としては、いろいろな働き方を可能にすることによって、一億総活躍社会を実現しようとするものです。具体的には長時間労働の抑制、副業解禁、朝型勤務や就労場所を自由に選択できることなどがあります。柔軟な働き方が許容されるということは、「成果を出すならば手段は択ばず」という考え方ともいえます。
 
昔ながらの「一生懸命仕事をした」≠「会社の売上・利益増に貢献した」ではなくなり、短時間だろうが長時間だろうが何らかの「成果」がすべてという考えに近くなります。
 
評価基準についても、成果がベースになり、定性的な勤務態度というスケールは基本的に考慮されません。これまでのように、「とりあえず会社にいて時間を過ごせば事足りる」敢闘賞的な働き方になじんできた人にとっては抵抗があるかもしれません。
従来の評価基準ではスキルの高い人や効率的に成果を上げてきた人にしてみれば納得できない状態だったと思いますが、そのような人には働きやすい状態になったと言えるでしょう。
 

デメリット1:成果はどうしても短期的な時間軸になりがち、長期熟成は難しい

結果がすべてということは、どうしても定量的な評価基準にシフトします。企業収益は、短期的な取り組みによって収益を生み出すものありますが、長期的な熟成期間を必要とするもののほうが、寧ろ将来的な企業収益を押し上げる力は大きいものです。
 
これに対して今回の働き方改革が先走ってしまうと、目先の結果を積み上げることになり、成果が見えるようになるまでに何年もかかるというものについては後回しになるでしょう。そのあたりのバランスが非常に難しくなると思われます。
 

デメリット2:コンプライアンスの遵守

「成果重視主義」でノマド的な働き方が普及するにつれて、コンプライアンスの問題が浮上します。社員を四六時中監視することはできませんから、業務と非業務を厳格に分けることも難しいでしょう。何かトラブルが発生したときに、これは業務内で起こしたことなのか、あるいは非業務なのかの判断に迷うケースも多く発生しそうです。
 
例えば、自宅で会社の業務に関わる受発注処理を行っていた時に、たまたま子どもがケガをした。気が動転した従業員が受発注の数字の桁を間違えて発注してしまう、などという、日常的な些細なことと大きなミスが隣り合わせになります。
 
またそれを阻止するための規制を設けても、最終的には個々人の裁量に任されるので、規制が形骸化することは十分に考えられます。
 

結局は従業員の意識の高さが決めて

企業収益は、数字で表されるものですが、その裏側には収益を積み上げていく従業員のさまざまな取り組み、そしてその土台となるのは従業員の意識です。
 
定量的な判断基準が適用されることになろう働き方改革ですが、前提となる従業員の意識付けという最も数字割り切れない部分をいかに整備するかが成否のカギとなるでしょう。
 
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表

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