更新日: 2019.01.10 その他
職場でセクハラ・パワハラの対応。証拠の集め方、損害賠償は?
昨今では女性から男性へのセクハラ・パワハラも耳にします。訴えるほどの激しい暴言、暴行はないにしても、上司や同僚、さらには部下からの言動に心当たりのある人もいるのではないでしょうか。
今回は職場でのセクハラ・パワハラの内容、その証拠集め、損害賠償などを調べました。
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士
開成高校卒、東京大学法学部卒。弁護士登録後、大手渉外法律事務所、外資系法律事務所での勤務を経て独立。現在は弁護士16名を擁する東京桜橋法律事務所の所長として、多数の企業や個人の法務顧問として活動。どんな相談に対しても「わからない」とは言わないことをスタンスに、日々クライアントのために奮闘中。
【東京桜橋法律事務所】
目次
男性からの相談件数は女性の10分の1以下
内閣府男女共同参画局「都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場における、セクシュアル・ハラスメントの相談件数」によりますと、26年度の相談件数の総数は11,289件。
その内、女性労働者等からの相談は6,725件と最も多い割合を占めました。事業主からの相談は1848件、その他は2098件、男性労働者からの相談は618件でした。
平成19年のピーク(相談総件数15,799件)を境に徐々に減少してきてはいますが、それ以前の件数と比較しても、さほど変化はありません。
女性からの相談件数に対して、男性からの相談件数は10分の1以下です。
実際に女性がセクハラの被害者のなることの方が多いのかもしれませんが、男性が被害者になった場合、声を上げづらい風潮がまだまだあるのかもしれません。
参考URL:http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-14.html
セクハラ・パワハラの内容と基準。貶める発言3回以上はアウト
パワハラの内容として最も多いのは「精神的な攻撃」です。
それ以降は「過大な要求」、「人間関係からの切り離し」、「個の侵害」、「過少な要求」、「暴行・傷害」、「その他」の順番となりました。
「精神的な攻撃」とは、みんなの前で大声で叱責されたり、人格を否定されるようなことを言われたりすること。
「過大な要求」は終業間際に過大な仕事を毎回押し付ける。休日出勤しても終わらない量、1人では無理な量の業務を強要されるなどです。
セクハラの基準として、お尻や胸を直接触るのは当然アウト。パワハラの基準として、同じ相手に、同じような貶める発言を3回以上言うのはアウトです。
内容は様々ですが、相手が嫌な顔をしているのに同じことを繰り返しすることはセクハラ・パワハラになります。
レコーダーと日誌の記録、両方がおすすめ
セクハラ・パワハラの証拠集めで最も効果的なのが、暴言や差別的発言などをレコーダーで録音しておくことです。
最近ではポケットに入るサイズで非常にクリアな音声を録音できるICレコーダーが販売されています。
中にはボールペン型で、一目見ただけではICレコーダーと分からないものもあります。数千円で購入することができるので、必要に迫られた時は使ってみましょう。
また、日誌に記録しておくことも有効です。その際は、日時や場所、その時の状況、言われた言葉やされたことなどを、出来るだけ詳細に記しておきましょう。
内容がレコーダーの録音内容と一致していれば大きな証拠になります。示談金はセクハラ・パワハラの内容によって異なりますが、高額なもので100万円以上のケースもあります。
企業のセクハラ・パワハラ予防はまだまだ不十分
取り組みの内容として最も多いのが「管理職を対象にパワハラについての講演や研修を実施した」(64.0%)で、次に「就業規則などの社内規程に盛り込んだ」(57.1%)、さらに「ポスター・リーフレット等啓発資料を配布または提示した」(40.7%)、「一般社員を対象にパワハラについての講習や研修会を実施した」(38.0%)・・・と続きました。
従業員が1000人以上の企業ではパワハラの予防・解決に「積極的に取り組んでいる」または「取り組んでいる」とする比率が50%を超えている一方で、従業員が99人以下の企業では7.9%、100~299人の企業でも19.1%と大きな差が見られます。
まだまだ企業全体でのパワハラやセクハラへの予防は不十分と言えます。
参考URL:平成 24 年度 厚生労働省委託事業 職場のパワーハラスメントに関する
実態調査報告書:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002qx6t-att/2r9852000002qx99.pdf
セクハラ・パワハラの告発は難しい。自分が加害者にならないことも大事
職場でパワハラ・セクハラに遭ったとしても、リスクが大きくなかなか声を上げられない人が多くいます。
社内での自分の立ち位置、昇進に支障が出るかもしれない、職場の空気を考えて、自分さえ我慢すれば・・・となりがちです。
しかし、体を壊しては元も子もありません。「我慢して仕事を続ける」「仕事を辞める」「相手に意見する」などの中に、「告発する(内部通報する)」という選択肢もあることを覚えておいてください。
状況が改善することもありますし、自分自身が後悔しない選択になるかもしれません。
何も悪くない被害者にリスクが生まれることは、納得がいかないことです。今後、企業でのセクハラ・パワハラの予防の強化、そして苦しんでいる人が声を上げやすい仕組みが出来ることを望みます。
また、パワハラ・セクハラに遭った時の対策を考えることも大事ですが、自分自身が知らず知らずのうちに加害者になることもあります。
悪気なく言った言葉が相手を傷つけることもあります。日ごろから自分の言動を客観的に振り返り、発言や行動に責任を持つことが大事です。
著:ファイナンシャル フィールド 編集部
監修:東京桜橋法律事務所 豊田賢治 弁護士