更新日: 2020.06.04 その他

メンタルヘルスが家計に与える影響とは? メンタルヘルスを守る処方箋

メンタルヘルスが家計に与える影響とは? メンタルヘルスを守る処方箋
5月といえば、ゴールデンウイーク後によく話題になる「五月病」。進学や就職、転居などで新しい環境が始まり、たまったストレスがゴールデンウイーク後に「やる気がでない」「眠れない」などの症状として現れ、ひどくなるとうつ病を発症することもあります。
 
しかし、新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)に世界中の人々が苦しむ現在、単なる「五月病」として片づけることのできない、非常に大きなメンタルヘルスの危機が世界中に訪れています。そして、その危機は、世界の経済から人々の家計にまで、大きな影響を与える可能性があります。
 
本記事では、メンタルヘルスの悪化で起こるうつ病を取り上げ、自身のメンタルヘルスを守るポイントと、家計に与える影響について、やさしく解説します。
酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

うつ病はなぜ起こる?

うつ病の原因は、その人の性格傾向や遺伝的要因、身体的疾患などが複合的に関わって発症するといわれていますが、その中で特に大きなきっかけになりやすいのは、大切な人との離別や死別、仕事や健康などの喪失、人間関係のトラブルなどの「環境要因」です(※1)。  
 
今回の新型コロナウイルス蔓延によって、私たちを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。例えば、筆者の周りでは、普段外回りの多い仕事をしている方が、自宅勤務となっている場合が多くあります。
 
その中には、家族と過ごす時間が増えてうれしいと感じている人もいれば、自宅勤務がはかどらず苦労したり、家族との時間が増えて、逆にストレスを感じたりする人もいます。
 
そうしたストレスが、すぐにうつ病につながることは少ないと思われますが、ストレスが長期間蓄積し、そこに新たな人間関係等の問題が発生すると、うつ病のリスクがより高まる可能性があります。
 
そこで、発症する前にストレスへの対策をしっかり講じることが、現在の新型コロナウイルス蔓延のもと、今まで以上に大切になってきます。

うつ病を予防するには

それでは、どのようなストレス対策を採れば良いのでしょうか?ここでは、世界保健機関(WHO)が公表している対処法をご紹介します(※2)。
 

うつ病が、家計に与える影響とは

次に、うつ病が個人の家計に与える影響について見ていきましょう。
 
うつ病などの精神疾患にかかると、個人の家計が圧迫されることがさまざまな調査で分かっています。
 
例えば、イギリスのチャリティ団体であるMoney and Mental Health Organizationが5500人に調査した結果によれば、メンタルヘルスの悪化が、休職や失業などの直接的な要因だけでなく、パートナーとの人間関係の悪化や、お金に関する判断力の低下などにより、貯蓄の減少や借金の増加、住環境の悪化や破産などにつながるとしています(※3)。
 


 
また、同団体の調査では、もともとお金に関する問題を抱えている人ほど、借金による絶え間ないプレッシャーや、健康維持に必要な支出の困難から、メンタルヘルスを悪化させやすいと報告しています。
 
これらの調査結果からは、現在の新型コロナウイルス蔓延下では、メンタルヘルスの悪化が家計の悪化につながり、家計の悪化がさらなるメンタルヘルスの悪化につながるという、負の連鎖が起こりかねない危険性を示唆しています。
 
さらに、メンタルヘルスの悪化で、給付金の申請手続きが難しかったり、援助を求めること自体を「負担」に感じたりする方が、今後も大勢増えることが考えられます。そうした方々へのよりきめ細かな配慮が、政府を始め、筆者を含むお客さまの家計に関わる業務に就く者への今後の課題です。 

それでもうつ病にかかってしまったら

しかし、どんなに気をつけてもうつ病を完全に防ぐことが難しいのも事実です。 そこで、いざ自身のうつ病を疑ったときは、ご自身の心身と「お金」を守る方法を筆者から提案したいと思います。
 
それは、「ストレスの原因となっているものを特定すること」「そこから離れることができるかを、信頼できる人に相談すること」(※4)そして、「大きな決断は、できるだけ先延ばしにすること」(※5)の3つです。 
 
例えば、ストレスの原因が勤務先での仕事や人間関係ではないか、と思ったら、信頼できる上司や、他部署の同僚、家族などに相談してみましょう。その上で、医師の診察を受け、治療と休養を優先しながら、継続的な収入をできるだけ減らさない方法を、信頼できる方と一緒に比較検討してみましょう。
 
うつ病のもとでは、元気なときにできる冷静な判断が非常に難しくなります。 それは、筆者もさまざまな経験から実感しています。収入の大きな減少を伴う退職などの決断は、できれば治療の効果が表れ、医師からも治癒の診断を受けてから、あらためて考えるようにしてください。 
 
(出典および注釈)
(※1)厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・サポートサイト」
(※2)WHO「Coping with stress during the 2019-nCoV outbreak」
(※3)Money and Mental Health Policy Institute「Money on Your Mind」P.15
(※4)患者数:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト うつ病 治療法」
(※5)埼玉県立精神保健福祉センター「うつ病と死にたい気持ちについて」P.8
 
執筆者:酒井 乙
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。


 

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